A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

突然段ボール/T.美川/非常階段@秋葉原Club Goodman 2014.4.27(sun)

2014年04月29日 00時15分15秒 | 素晴らしき変態音楽


CLUBGOODMAN 18th ANNIVERSARY
<突然段ボール/T.美川/非常階段「超センシティブ、不備、T.美川ソロ 発売記念ライブ!!」>

出演:突然ダンボール / 非常階段 / T.美川俊治(非常階段/インキャパシタンツ)

2年半ぶりの突段のニューアルバム「超センシティブ」と突段がアルケミーに唯一残したアルバム「不備」の再発、そして、非常階段のT.美川のソロ・アルバム『Bloody, innocent and Strategic』の3枚のアルバムの発売を祝うトリプル・レコ発!出演はもちろん、突然段ボール、T.美川、非常階段の3組。日本アンダーグラウンドロック界の突端をご堪能下さい!!



突然段ボールと非常階段の共演は2013年9月15日蔦木栄一&林直人没後10周年+ボックス&新作リリース記念イベント以来7か月ぶり。前回はそれぞれのボカロ共演ユニットも出演した賑やかなイベントだったが、今回もトリプル・レコ発というわっほいお祭り!アキバ異能ロックの夜となった。

●T.美川

(写真の撮影・掲載については出演者の許可を得ています。以下同)

まさかアイドルにハマることになるとは・・・と本人が思っているかどうかはわからないが、美川の35年に亘るノイズ生活の中で女性絡みの話題が浮上するのはたぶん初めて。これもツイッターが生んだ奇跡のロマンスのひとつに間違いない。果たしてアイドルとの出会いが制作意欲の源になったのか、たまたま制作中だった作品をアイドルに結び付けたのかは不明だが(おそらく後者)、実質的なソロ作のインキャパシタンツ『REPO』(1989)以来、国内では25年ぶりのソロ・アルバムがアイドル「BiS」とリンクしたことは、世界のエクストリームミュージックヒストリーに於いて特筆すべき「事件」と言ってよかろう。異性関係は発禁ポルノや残虐ヌードや倒錯エロスしか有り得なかった極端音楽表現者が、異端とはいえ「KAWAii!!」「萌え」系女子と野合が可能だという事実は、全世界の地下音楽・前衛音楽・騒音芸術家に大きな希望と勇気を与えるに違いない。それはさておき、美川のソロ演奏をきちんと聴く機会は決して多くない。マル非やインキャパやセッションとは異質の「わたしだけ」の電子雑音の実演は、アンプから放射される容赦ないカオス音響の音圧と共に、美川俊治という生命体の内なる情念の炎の一端を聴き手の眼前に曝け出すストリップティーズのようであった。

 

 

★BiSに捧げる“劇薬”全6曲――T.美川(インキャパシタンツ / 非常階段)、ソロ・アルバムの衝撃を体感せよ⇒コチラ

非常階段


美川が「単一生命体」としての「ノイズ」を提示したのに対し、集団即興によるノイズ演奏を35年間追求する非常階段の演奏は、4個の「自我」が喧々諤々正面衝突融合乖離切磋琢磨し、限りない想像の翼を広げ聴き手の意識を拡大する。過日「題名のない音楽会」にて大友良英を作った楽曲として公開されたウッドストック音楽祭でのジミ・ヘンドリックスの「アメリカ国歌」演奏に於ける、演じ手の表現欲求が最大限に高まった絶頂の瞬間に、全ての音楽語法を放棄し、電気増幅された音響が循環し自発的に震動する金属弦の共鳴に任せて再生装置を痛めつける痙攣パート(俗にフィードバックと呼ばれる)だけをリピートする演奏が30分以上に亘って繰り広げられた。メロディーやリズムやハーモニーの柵から解放された歓びを謳歌する大音響に名前を与えるとすれば、大文字ゴシック体で『ROCK』と記すのが相応しい。「シンガーを支える3人が生み出す重厚で力強いサウンド――あれがブリティッシュ・ロックの醍醐味なんだ。そしてそれは俺たちが誰より得意とするものだ」とロジャー・ダルトリーがウィルコ・ジョンソンに話したことが世紀のロケンロー共演の発端だったという(『レコード・コレクターズ』2014年4月号)が、「ブリティッシュ・ロック」を「ノイズ」と置き換えれば、そのまま非常階段の本質を突く金言となる。JUNKOは非常階段のセンターを張る”シンガー=ヴォーカリスト”に他ならない。

 


突然段ボール


とことん「ノイズ」に拘る強い意志と国内外へ向けての弛まざる情報発信により、世界の極端音楽界の頂点に君臨する非常階段に比べ、結成37周年を迎えた突然段ボールは極めて不可解な存在だと言える。1977年蔦木兄弟により埼玉県で結成されて以来、PASSレコードよりニューウェイヴ・バンドとしてデビュー、「イカ天」出演によりバンド・ブームに参画、フレッド・フリス、ロル・コックスヒルといった個性派外国人ミュージシャンと共演して前衛性をアピール、「サボテン」「たま」「おにんこ」「PANICSMILE」など曲者揃いのバンドと契りを結び、兄弟二人から十数人までバンド形態を変幻させるなど、突段をひとつのキーワードで括ることは不可能。特定のジャンルやスタイルに属さなければ認められることのない日本の音楽界で40年近く活動し定期的に作品を発表し続ける。活動拠点は一貫して埼玉。世界の辺境音楽界七不思議の筆頭と言えるかもしれない。一曲目の「そのままでいいよ」(『不備』収録)に続き、もはや通算何作目か分からない(数えても意味がない)新作『超センシティブ』全曲演奏は、やはり「突段的」という以外言葉では説明不可能な特異体質ワールドが全開。ベース脱退をシンセベースで補填しテクノ色が増したことで、余計に脱臼ビート感が強まり、「この世に無い物質」(『不備』)「奇天烈世界」「ミラクル・ワールド」(『超センシティブ』)という曲名通りの”名は体を表す”有言実存バンドであることを証明した。




 

●突然階段


観客の期待に応えて突然段ボールと非常階段の合体ユニットによるダブル・アンコール。JOJO広重と蔦木俊二は35年来の付き合いだが、一緒に演奏するのは初めてだという。日本地下音楽の最古参二組の初邂逅は「お帰りなさい」「所在無し」「ホワイトマン」の三曲。異種の音楽の衝突や軋轢をクローズアップしてきた階段ユニットだが、突段の楽曲は意外にシンプル且つ言葉のエモ指数が低いので、マル非ふたりのノイズ演奏が風通し良く吹き抜ける。対立せず、かといって混ざり合うわけでもなく、ごく当たり前のように二者が”ただそのまま存在する”だけの極めて自然な風景。両者の飄々とした笑顔に晴れ晴れとしたムードに包まれてアキバの夜は更けていった。

ホワイトマンも
イエローマンも
ブラックマンも
そのままでいいよ

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【続々・GWだョ!女子バン集... | トップ | 【えいたそ文化論】その参『... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

素晴らしき変態音楽」カテゴリの最新記事