A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

『都市通信』と79年の塩ビ盤〜東京ニュー・ウェイヴ'79/スジバン/シナロケ/パワーポップ/ピストルズ/ツネマツ/ミラーズ/フリクション

2020年02月12日 01時57分39秒 | ロッケンロール万歳!


1980年にリリースされたオムニバスLP『都市通信』が40年経ってCDで再発された。当時高校生だった筆者はこのアルバムの発売告知を音楽誌で見て知っていたが、レコード屋で現物を見た記憶が無い。その理由は、リリース直後にレーベル主宰者が失踪し、少数しか流通しなかったばかりか、予約金を振り込んだ人にレコードが届かない「事件」で知られる訳ありレコードだったからである(詳細は40年経って姿を現した主宰者「海賊艇K」のブログを参照のこと)。しかし、もし当時現物を見つけたとしても限られた小遣いでは買えなかっただろう。当時のメモによれば美れいとシンクロナイズはライヴを観ているが、どんなだったかは覚えていない。再発で初めて耳にしたアルバムの冒頭のシンクロナイズを聴いてとても嬉しくなった。1979年に初めて行ったライヴハウスで観た東京ロッカーズをはじめとする日本のパンクの音そのものなのである。気持ちが強すぎて吐き捨てられる言葉。言葉に追いつこうと前のめりに突進するビート。こんがらがるもどかしさを振り切ろうと足掻く楽器演奏。スピード感や切迫感は異なるが、同じ感情が他の3バンド、美れい、NON BAND、螺旋にも共有されている。リリースは80年だが、溢れ出る精神は79年の東京特有の香りがする。その香りを全身に浴びた高校2年の筆者の記憶を縁取る数枚のレコードをターンテーブルに乗せてみた。
1979年の【回想録】非常階段結成35周年記念ライヴ@初台The DOORS 2014.8.29(fri)

●スージィー&ザ・バンシィーズ『香港庭園/天の叫び』

Polydor ‎– DPQ6115 / 1978

79年3月に10日間ほどのヨーロッパ旅行で訪れたロンドンで購入したレコードの中に Siouxsie And The Bansheesのデビュー・アルバム『Scream』があった。しかしイギリス盤にはシングル曲『Hong Kong Garden』が収録されていない(日本盤には収録)。82年に大学で結成したバンドでカヴァーするために買ったシングル盤。日本独自のジャケットは愛読していたパンク雑誌『ZOO』で連載していた漫画家・森田じみぃのイラスト。後にポジパン女王として日本のガールズバンドにも多大な影響を与えるスージー・スーのオーラ全開。B面『Voices』のギターだけをバックに歌うナンバーはNICOの生まれ変わりのようだ。

Siouxsie And The Banshees - Hong Kong Garden (Official Video)



●鮎川誠/シーナ・ロケット『涙のハイウェイ/恋はノーノーノー』

Elbon ‎– BON-1014 / 1979

ラジオで聴いて痺れたシーナ・ロケットのデビュー・シングル。パンクというよりロックンロールだが、鮎川誠のリズム主体のギターとシーナのポップなヴォーカルが新鮮だった。ところが同年秋にリリースされた2ndアルバム『真空パック』がいきなりテクノになっていて失望した。プロデュースの細野晴臣への恨みは未だ消えていないが、今年1月に観たSheena and The Rokkets feat. Lucyが1stアルバム『#1』と『真空パック』の曲をメインにやっていたので改めて聴き直したら思ったほど悪くなかった。

SHEENA & THE ROKKETS 1979 涙のハイウェイ



●ブラム・チャイコフスキー『ガール・オブ・マイ・ドリームス/カム・バック』

Warner-Pioneer / Radarscope Records ‎– P-482F / Oct 1979

当時吉祥寺の近鉄(今のヨドバシカメラ)前の通りにあった電気屋DACのイベントホールで雑誌『ZOO』(後のDOLL)主催のイベントが開催されていた。アナーキーギグというライヴイベント(スピードやシンクロナイズを観た)の他にレコードコンサートもやっていて、クイズコーナーがありポスターやステッカーや見本盤がもらえた。Bram Tchaikovskyのシングル盤はアーティスト名当てクイズで正解してもらった。『パワーポップの仕掛人』という邦題通りのポップなサウンドが最高だが、あまりヒットしなかった。「仕掛人」で終わってしまった訳だ。

Bram Tchaikovsky - Girl of my Dreams - LIVE!



●Sex Pistols 『The Great Rock 'N' Roll Swindle/Rock Around The Clock』

Virgin ‎– VS 290 / 12 Sep 1979

セックス・ピストルズが解散して1年経った79年初頭にピストルズのドキュメンタリー映画のサントラ盤がリリースされた。映画は日本で公開されなかったが、マネージャーのマルコム・マクラーレンがメンバーに無断で作ったおふざけ映画と言われていた。2枚組サントラLPはオーケストラやディスコまであり支離滅裂で厳しいが、ヴォーカルが次々替わるこのタイトル・ナンバーはピストルズらしいハードパンクで悪くない。後にクレジットカードのジャケットがアメリカン・エクスプレスから著作権侵害で訴えられて発売中止になった。

SEX PISTOLS The Great Rock'n Roll Swindle



●ツネマツマサトシ 『Do You Wanna Be My Dog・g・g!?〜き・を・つ・け・ろ/いいかげん』

Gozira Records ‎– GZ 444 / Jan 1979

たぶん最初に買った自主制作盤。ゴジラレコードの3枚目。78年の最初の2枚、ミラーズ『衝撃X』とミスター・カイト『共犯者』はレコード店で手にしたがある理由で購入しなかった。しかしツネマツマサトシはジャケットが最高にパンクで迷わず購入、勢いだけで突き進む荒削りのサウンドはまさに「これぞ自主制作」!。高校のバンドでやりたいと言ったらヴォーカリストが「歌詞が酷い」と言って却下された。それこそパンクの証であろう。

Tsunematsu Masatoshi ‎– Do You Wanna Be My Dog・g・g!? Vinyl, 7" 1979



●ミラーズ 『Out Of Order/Block Out』

Gozira Records ‎– GZ888 / May 1979

ゴジラレコードの4枚目。このシングルで聴けるコード感無視・切れ味オンリー・三三七拍子のギターはロンドンパンクともNYパンクとも異なる東京パンクの象徴といえるだろう。間違いなくフリクション時代のツネマツに匹敵する個性だと思う。79年にミラーズのライヴを何度か観たが、ヒゴヒロシの突進する歌とドラムを分断しつつ加速させるギターとベースの異物感がスリリングだった。ミラーズ解散後のアンドウとマツモトの足取りが分からないのが残念。

Mirrors ‎– Out Of Order Vinyl, 7"1979



●Friction フリクション 『Crazy Dream/Kagayaki/Big-S』

Pass Records ‎– PASS 1003 / Aug 1979

何と言っても東京ロッカーズ関連の最高傑作はこのEP。筆者は79年8月20日の発売日に吉祥寺ジョージア・ジュニア店で購入した。店員は「ヘッドホンで聴くと最高ですよ」と言っていたが、スピーカーで大音量で聴く方が79年の東京の臨場感が十二分に体験できる。何故かジャケットが大きいのか、理由をメンバーや関係者から聞いたことは無い。想像するに、当初8インチ盤の予定でジャケットを発注したら、なにかの手違いでレコード工場が7インチでプレスしてしまった、という「うっかり説」は如何だろうか? もし8インチ盤が存在しているとしたら、世界中のマニアが血眼になって探しまくるに違いない。

Friction Crazy Dream



1979年7月21日:BOYS BOYS、ミラーズ、マリア023@池袋西武デパートCITY/1979年9月29日:GLANDES(筆者のバンド)@某都立高校 

7インチ
記憶の中に
楔打つ

●Various Artists『東京ニュー・ウェイヴ'79』

Victor ‎– SJX-20122 / 1979

『東京ロッカーズ』とともに日本のパンク・シーンのドキュメントとして貴重なアルバム。ヨーロッパ帰りで「気分だけパンクス」だった筆者に「リアル・パンク」を生きる理由と勇気を与えてくれた1枚。79年6月11日の発売日に購入した。いかにもニューウェイヴ世代のB面の8 1/2とボルシーよりも、70年代日本のロックの暗さと湿気を残すA面のSEX、自殺、PAINの方が好きだった。SEXの『TVイージー』は高校のバンドのヴォーカリストも気に入り無事カヴァーした。川田良、伊藤耕に続き、ドラムのマーチンこと高安正文が去る2月6日に63歳で永眠したという。合掌。

TOKYO NEW WAVE 79



【参考動画】
Rockers documentary Tokyo 1979 / ハイパワー・ロックンロールドキュメンタリーフィルム "ROCKERS"


Japanese Punk New Wave Rare Tracks vol.3 1976-1984
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79年の世代 (haragaki)
2020-02-12 21:16:54
たしかに、ツネマツさんはじゃがたらのアケミさん同様、作詞能力は皆無の人でしたね。
が、まさにその「酷い歌詞」の放つ初期衝動が、フランシス・ベーコン直系の彼の細密な絵画と見事に逆のヴェクトルを描いており、EDPSを聴く者をねじれた陶酔に導いたものでした。ツネマツ氏もまた、高校時代夢中で追いかけたミュージシャンのひとりです。

たしか当時、ていうかむしろ80年代に入ってからだと思いますが、野々村文宏氏が<79年型ナウ>というタームを提示してた記憶があり、私の個人的な感触からいっても、<79年>というのは何かが始まり、同時に何かが終わった分水嶺だったと思います。
具体的にいえば、79年とはYMOのセカンドである『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』が発売された年であり、ファーストまでは<トロピカル三部作>とのインタラクティヴ構造により読み解けた(つまり、特定された地球上の場所ではない、宇宙のエキゾティック・ミュージックとしてYMOを聴くこと)細野晴臣のディスコグラフィーに、ある決定的な切断が齎された記念碑的な年です。

そして、その<切断>により、『#1』と『真空パック』の間に越えがたい深淵が穿たれてしまったわけですが、でも私、『真空パック』嫌いじゃないんですよ。
こないだ、「80年代は無の時代」とかなんとか言ってたことを根本からひっくり返すようで恐縮ですが、だって俺、YMO世代ど真ん中なんだもん(笑)。
とりわけ、「Rocket Factory」は『FMフレッシュウェーブ』のコーナーチェンジのジングルに使用されていたこともあって、愛着があります。

ちなみに、鮎川誠氏本人は『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』を「素晴らしいロックンロールアルバム」と何らの諧謔的な含みもなく絶賛しておられるので、
https://www.youtube.com/watch?v=vQYaaFSWCJg
テクノだのロックだのいった馬鹿げたジャンル分けに固執して自らの耳を貧弱にするより、鮎川さんのような大らかな耳でボーダーを取っ払い、<ロックンロール>の意味を拡大してみたほうがよいのではないかと老婆心ながら思います。
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