A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

進水・浸水・心酔の水圧ポップ~ブライアン・ウィルソン『ノー・ピア・プレッシャー』

2015年04月09日 00時15分15秒 | こんな音楽も聴くんです


中学1年で初めて洋楽ポップスと出会ったとき夢中になったのはジョン・デンバーとビーチ・ボーイズだった。初めて買ったLPレコードは『ジョン・デンバー・ライブ』、2枚目が『ビーチ・ボーイズ・コンサート』、さらに『ビーチ・ボーイズ'69(ライブ・イン・ロンドン)』。何故かライヴ盤が続いた。その後キッスやエアロスミス、ジョニー・ウィンターやジェネシス、さらにパンクロックへと興味は広がったが、中学時代を通してビーチ・ボーイズが大好きで、転校した東京の中学校でついた渾名は「Bach Boy バチボーイ」。ばちへび(つちのこ)が由来だが、Beach Boys好きも揶揄された。

 

「サーフィンU.S.A.」や「ファン・ファン・ファン」のような海だ!太陽だ!女の子だ!と歌うリア充ソング(ジャン&ディーン「サーフ・シティ」は”男子ひとりあたり女子ふたり”と歌われる)ではなく、「アイ・ゲット・アラウンド」や「グッド・バイブレーション」などマイナー調の曲が好きだった。実際にサーフィンが出来るのは末っ子のデニスだけで、長男のブライアンは引きこもりの変わり者、スタジオに砂を敷き詰め椰子の木を植えて、何時間も孤独にダビングを重ねた、という非リア充・コミ障エピソードに惹かれた。愛聴盤は『ペットサウンズ』や『オランダ』。特に金沢に一軒だけの輸入盤店で買った『サーフズ・アップ』は、習いたての英語で哲学的な歌詞を翻訳しながら、幻想的なコーラスの森の中で迷子になる気がした。

   

しかし中学卒業祝いでエレキギターを手に入れると、ギター中心のパンクやブルースに取り憑かれ、楽器よりも歌メインのビーチ・ボーイズを聴くことは少なくなった。「海岸少年達」は80年代以降も来日したり、新作をリリースしたり、『スマイル』の海賊盤がCDリリースされたりした。精神を病んでいたブライアン・ウィルソンも完全復活し、ソロ・アルバムを定期的にリリースし、サイケデリックな世界観を持つ『スマイル』の再現ライヴも開催された。しかし敢てそれを追うことはなかった。リアリティを感じることも無かった、避けていた訳ではないが。



だから通算11作目のソロ・アルバムをふと耳にして、40年前の自分に戻るというより、初めて出会う夢の世界の出来事のような気がしたのである。どっぷりノスタルジアに浸ることも可能だろうが、それよりもっと普遍的なエンターテインメントの形、例えば開園33周年の浦安のテーマパークのように、いつ訪れても楽しめる安心印の快適さを堪能する方が面白い。マイナスからのNo.1を成し遂げた72歳のエンターテイナーに心からの感謝と敬意を表したい。



ジャケットを
見るとこいつを
思い出す
⇩⇩⇩



ピア・プレッシャー
【peer pressure】職場などでの、同僚からの圧力。
【pier】 埠頭。
コメント (1)
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