A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

プロト・パンクの潔さ~ドクター・フィールグッドとパブ・ロック特集

2012年07月28日 00時49分44秒 | ロッケンロール万歳!


遅まきながらドクター・フィールグッドの3CD+DVDセット「All Through The City (with Wilko 1974-1977)」を購入し、久々にウィルコのカミソリ・ギターとリー・ブリローのワイルドな歌声に痺れている。昨年4月にジュリアン・テンプル監督の「ドクター・フィールグッド~オイル・シティ・コンフィデンシャル~」というドキュメンタリー映画を観て、関係者のインタビュー中心の映画で正直肩透かしだったのだが、このアンソロジーBOXではウィルコ在籍時の4作のアルバム「ダウン・バイ・ザ・ジェティー」(1975.1)、「不正療法 」(1975.10)、「殺人病棟」(1976.9)、「スニーキン・サスピション」(1977.5)と未発表デモ&ライヴ音源、そして1975年のテレビ出演やライヴ映像を集めたDVD+未発表写真満載のブックレットでたっぷりソリッドなロケンローの世界に浸ることが出来る。当時はとにかくウィルコのギターに注目が集まったものだが、こうして通して聴くとドクターズが60'sブリティッシュ・ビート/R&Bをダイレクトに継承し優れた音楽性を開花させたバンドだったことが実感できる。

1970年代半ばロックは一大ビジネスとなり大規模なスタジアム・コンサートが次々と開催されロック・ミュージシャンは雲の上の存在というスターダムが形成されていた。それを草の根から改革し、ロックを再び隣のあんちゃん的存在に引き戻したのがドクターズを始めとする"パブ・ロック"だった。その名の通り街のパブで演奏し、ライヴ終了後はお客に交じって酒を飲み交わすという身近なロック・ミュージシャン。その音楽性は古き良きロケンローとソウル。誰でも知ってる曲に観客が踊りだすこともしばしばだった。このシーンからより若い世代のパンクが生まれた訳だ。

折しも10月にウィルコ・ジョンソンダックス・デラックスそれぞれの来日も決まり、パブ・ロックの香り立つ季節を待ち望みつつ、代表バンドを紹介しよう。

まずはドクターズ。とにかくカッコいい演奏には惚れ込むばかりだ。



10月に来日を果たすダックス・デラックスは1972年シーン・タイラ(vo,g)マーティン・ベルモント(vo,g)を中心に4人で結成、74年RCAからデビュー。翌75年キーボードが加入しパブ・ロックの名作『タクシー・トゥ・ザ・ターミナル・ゾーン』を発表し、同年解散。その後メンバーはモーターズ、ルーマーなどでそれぞれ活動。



ダックスと共に来日するブリンズリー・シュウォーツ(g)が在籍したブリンズリー・シュウォーツはニック・ロウ(vo,b)を擁するパブ・ロック・グループ。クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングやザ・バンドを思い起こさせるアメリカのルーツ・ロックを展開した。



ウィルコに多大な影響を与えたミック・グリーン(g)が在籍したジョニー・キッド&ザ・パイレーツは1960年代から活動する老舗バンド。リーダーのジョニー・キッドは1966年に交通事故で亡くなってしまうが、1977年にバンドは復活、80年代まで活動を続けた。ザ・フーがカヴァーした「シェイキン・オール・オーヴァー」のオリジナルでも知られる。



チリ・ウィリ&ザ・レッド・ホット・ペパーズは60年代からサヴォイ・ブラウン~マイティ・ベイビーで活躍したマーティン・ストーン(vo,g)が結成したパブ・ロック・バンド。後にレジデンツと活動を共にするギタリスト、フィル・"スネークフィンガー"・リスマンが在籍し、アメリカン・ルーツ・ロック色の強いカントリー/ボードヴィル・サウンドを聴かせる。



パンク~ニューウェイヴ時代が到来するとそれまで知る人ぞ知る存在だったパブ・ロックの名手達が注目を浴びメジャー・シーンで活動するようになる。70年代初期にキルバーン&ザ・ハイローズでデビューしたイアン・デューリーはザ・ブロックヘッズを率いて「Sex & Drugs & Rock & Roll」をヒットさせ、英国ロック界の首領として人気を集めた。



デューリー同様、ソウルフルなロック魂を歌い上げるグレアム・パーカーもザ・ルーモアと共に「怒れる若者」の象徴として人気を博す。彼の成功が続くエルヴィス・コステロやジョー・ジャクソンの世界的ブレイクのきっかけとなったことは間違いない。



デビュー当時はパンク・バンドとして紹介されることが多かったエディ&ザ・ホットロッズはアルバムの邦題こそ「十代の爆走 」というパンキッシュなものだったが、サウンドはブリティッシュ・ビートの伝統に根ざした正統派ロケンロー。初期メンバーには先日来日予定だったのが過去の犯罪歴の為にビザが下りず中止になったルー・ルイス(vo,harmonica)も在籍していた。



インメイツは1979年デビューという遅れてきたパブ・ロック・バンドだったが、60'sアメリカン・ガレージ・パンクのスタンデルズの名曲「ダーティ・ウォーター」をカヴァーし、80年代のガレージ・リバイバルの元祖的存在となった。当時東京FMで「ライヴ・フロム・ザ・ボトムライン」という15分番組があり、ニューヨークのライヴハウス、ボトムラインのステージをオンエアしていたのだが、エアチェックしたインメイツのライヴはワイルドなロケンローの塊で今でも大切な宝物である。



ここで紹介した以外にもデイヴ・エドモンズ、ニック・ロウ、エルヴィス・コステロなどパブ・ロックから世界的スターに躍り出たアーティストも多い。パブ・ロックの歴史的詳細は「パブ・ロック・ガイド」というサイトを参照のこと。

パブで聴く
ロッケンロールに
酔い痴れて

日本にもシーナ&ザ・ロケッツ、ルースターズ、The ピーズ、ザ・クロマニヨンズ(ヒロト&マーシー)、ミッシェル・ガン・エレファント、THE BAWDIESなどパブ・ロックの影響を受けたロックバンドは多数存在する。




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