A Challenge To Fate

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百鬼夜行の回想録~80'sインディーズ特集 第4回「ニューウェイヴ・ギャル編」

2012年07月09日 01時51分43秒 | ガールズ・アーティストの華麗な世界


1970年代後半のパンク・ムーヴメントは女性ロッカーの台頭の時代でもあった。ニューヨークからはパティ・スミスやブロンディーやプラズマティックスが、ロンドンからはスージー・スーやレインコーツやスリッツが男性中心のロック・シーンに風穴を開け女性ならではのしなやかかつ残酷な感性でシーンを席巻した。その影響で日本のインディーズ・シーンにも様々なガールズ・バンド/アーティストが登場した。

小学生の頃からアイドル好きだったので海の向こうから登場したランナウェイズやゴーゴーズ、バングルスなどのギャルバンには目がなかった私が、ニューウェイヴの女性アーティストを愛聴したのは当然である。

最初に観たパンク系ギャルバンは1980年3月にPASS RECORDSから突然段ボール、PHEWと同時に7インチ・シングルでデビューしたBOYS BOYSだったと思う。池袋のSTUDIO 2000でミラーズと対バンで観た。後にゼルダを結成する小嶋さちほ嬢がベースで参加していた女性4人組で、弾けるジャングル・ビートに金切り声のヴォーカルが勢いよくてカッコ良かった。シングル1枚で解散してしまったのが残念。未発表音源の発掘を強く望む。



小嶋さちほ嬢が発行していたミニコミ「チェンジ2000」のメンバー募集を通じて結成されたのがゼルダ。1981年のソノシートを買った。後にメジャー・デビューし人気バンドとなるが、初期はかなり尖がったパンク・ロックを奏でていた。歌詞カードのデザインが印象的で自分の宅録カセットの解説カードに盗用した。メジャー・デビュー作はリザードのモモヨ氏のプロデュース。

ZELDA/密林伝説


オート・モッドのジュネ氏がその前にやっていたマリア023のベーシストのノンさんが結成した女性一人、男性二人によるユニットがノン・バンド。ベース、ヴァイオリン/クラリネット、ドラムというギターレスの編成で天真爛漫なノンさんの歌が印象的だった。当時ぎゃていの女性オーナーのギギさんがいつも「ノンちゃんバンド」と親しみを込めて呼んでいたのを思い出す。当時は25cm LPを一枚リリースしただけだがライヴは精力的にやっていた。解散後ノンさんは実家の弘前で主婦業をしていたが、2000年に音楽活動を再開、オリジナル・ノン・バンドの復活やいろんなアーティストとの共演を行う。灰野さんと共演した時に「灰野君、灰野君」と呼んでいたのが新鮮だった。今年、最新ライヴ盤「NON BAND LIVEN' 2009-2012」をリリースした。

NON BAND - DUNCAN DANCIN'


女性のパワーと情念を凝縮したバンドが水玉消防団。天鼓嬢とカムラ嬢のツイン・ヴォーカルを武器にテクニック以前にとにかく自己表現することを目的とした彼女達はその名も"筋肉美女レコード"から「乙女の祈りはダッ!ダッ!ダッ!」と「満天に赤い花びら」の2枚のアルバムをリリース。奇抜な化粧で目を見開き睨みつけるジャケットはちょっと怖いが所謂ロックの概念をぶち壊す自由度に満ちたサウンドは今聴いても新鮮。天鼓嬢とカムラ嬢のデュオ・ユニット、ハネムーンズではヴォイス・パフォーマンスに特化した実験的なサウンドを展開。天鼓嬢は1990~2000年代もヴォイス・パフォーマーとして活動、フレッド・フリス、ジョン・ゾーン、大友良英などと共演している。

Mizutama Shobodan - Travel Pack Vacuum


1980年に結成されたゲルニカは大正浪漫あふれるノスタルジックで近未来的なサウンドに乗せた強烈な個性の戸川純ちゃんの歌手デビューとなったが、純ちゃんに追随する"不思議ちゃん"キャラの女性アーティストが続々登場した。アリス・セイラー嬢率いるアマリリスやきどりっこ、泯比沙子&クリナメンなど。その路線で印象に残っているのは1984年頃渋谷屋根裏で対バンしたパパイアパラノイアである。派手な着物姿でバカテクの迫力ある演奏をするのには驚いた。すぐ注目されキャプテン・レコード経由でメジャー・デビューしアイドル的な人気を博した。

パパイヤ パラノイア / 好きよ!!キャプテンGIG


アイドルと言えば川喜多美子嬢率いるD-DAYも忘れがたい。ひらひらのリボンの付いた衣装で幻想的な歌を聴かせる彼女に胸ときめかせたパンク/ニューウェイヴ少年は多かった。ヒステリック・ギャルか不可思議少女揃いのインディーズ界において美子嬢のような清純で乙女チックな存在は悪く言えば場違い、良く言えば掃き溜めに鶴の感があった。当時のスタジオ音源とレア音源を集めた2枚組集大成CD「crossed fingers」が入手できる。



1981年に結成された当初は関西NO WAVEの次世代バンドとしてサブカル系メディアでもてはやされた少年ナイフは1980年代後半に海外でリリースされ、1990年代にソニック・ユースやニルヴァーナのフェイヴァリット・バンドとして世界で一番有名な日本のロック・バンドになった。現在でもデビュー当時の初期衝動とアマチュア精神を継承している希有な存在である。



女性版突然段ボールとして話題になったのがサボテンである。当時雑誌の紹介には「サティをロックにした音楽」「4拍子や3拍子といった決まったリズムから外れたテンポ感」と紹介されており興味を持って買ったのが「いつもある」という7インチ・シングルだった。そのヘタウマな世界が気に入りLP「SABOTEN」も購入したが、ジャケットが底割れしていて凹んだ覚えがある。バンドはその後も続き10年に1作という超マイペースな活動をしている。2002年の3rd「つづく夢」から10年経つが新作はリリースされるだろうか?



当時買ったソノシートの中でも全くもって謎なのがアケボノイズというバンドである。暫く前まで、戸川純ちゃんがゲスト参加した大阪ののいずんづりとゴッチャになっていた。安っぽい歌謡ロック風のサウンドに乗せて電波系女性ヴォーカルが奔放に歌う。YouTubeにソノシートの音源が上がっているのだが、その正体に触れたサイトは見つからなかった。



ここで紹介するのはかなり異色だが、工藤冬里さんと大村礼子さんのユニットNOISEの唯一のアルバム「天皇」は衝撃的だった。荘厳なオルガンのクラスターの上に礼子さんの天使の歌声が舞う、パンク/ニューウェイヴの早急さの対極にある幻想的な白昼夢の世界に底知れぬ狂気の閃きを感じ、灰野さんの「わたしだけ?」に匹敵する精神世界の地獄巡りを体験できる。その後ふたりはパートナーとしてマヘル・シャラル・ハシュ・バズでも一緒に活動するが、礼子さん名義でリリースされた数作のアルバムはいずれも儚さと強靭さの同居した唯一無二の世界を作っている。



女性には
とても勝てない
男たち

ギャルバン好きは未だに私の中の基本中の基本である。

★読者限定特別付録:ゲルニカの1982年のライヴ音源がココで聴けます。

★映画「ドキュメント灰野敬二」を観ようと思っている男性の方、本日月曜日はシアターN渋谷はメンズデーで1000円で観られるのでお得ですよ!

劇場限定でサウンドトラックCDを販売中。
本作品のためだけにレコーディングされた全3曲、計50分!!
灰野敬二入門にぴったりな内容です。
■アルバムタイトル
A document film of Keiji HAINO (品番:PURPLE TRAP 002)
■曲目
1.おまえ/不失者
2.暗号/不失者
3.ここ/灰野敬二
定価1500円(税込)
コメント (7)
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