大好きなミュージシャンに三木トリローさんがいる。
昭和30年前半、ラジオや草創期のテレビから彼のメロディが聴こえない日はなかった。彼のCMソングなどがおそらくボクのゆりかごのBGMだったのだろう。彼の「♪~赤ちゃんの時からカネボウ毛糸~」なんて聴くだけで、子供の頃の箪笥の匂いとかが甦ってくるもの。
彼も戦後、ミッキートリオなるジャズコンボで基地回りをしていた関係からか、どこかアメリカナイズされた、明るくて軽快で洒落た音楽を作った。榎本健一歌う「ピンポンパン」や「無茶坊弁慶」「チョンボマンボ」中村メイ子歌う「田舎のバス」ザ・ピーナッツ歌う「ポカンポカンポカン」などは名作だと思う。
NHKのラジオ「日曜娯楽版」での作劇法がのちに、直系である永六輔、中村八大らによるTVバラエティ「夢で会いましょう」につながる。我々放送に関わる人間の源流にいる巨人でもあるのだ。トリロー工房という音楽制作プロダクションをいち早く作り、CMソングなどの量産体勢に入った。ここは梁山泊的な様相を呈し、弟三木鮎郎、キノトール、永六輔や五木寛之、野坂昭如、いずみたくなどもいたはずだ。お金に厳しかったとか、弟子が作ったのに師匠の名前で出たとか、陰口もあるけども、そりゃ仕方ないんぢゃないか。とにかく垢抜けた昔風東京のインテリげんちゃんって感じがするんだなぁ。
さてさて、我々Western Swing弾きとすればですな、米国中西部のJump Bluesというジャンルも極めて関係が深い音楽として心安くさせて頂いている。そんなJumpの大立者Louis Jordanのレコードコレクターズの記事に、湯浅学という評論家が、ルイの「Choo Choo Boogie」と三木トリローの「僕は特急の機関士で」との奇妙な符合のことを書いていた。なかなか鋭いぜよ~湯浅氏!なるほど、こりゃJumpである。
いや、もっとJumpに出来るッ!
この歌、東海道を東京から大阪まで行く特急が舞台・・・
僕は特急の機関士で 可愛い娘が駅ごとに
いるけど3分停車では キッスの暇さえありませぬ
東京・京都・大阪 Wu~~ポッポ
僕はこの歌こそ日本初のTrain Song(鉄道唱歌ってのはあったが)だと思うのだが、これはいつかやるしかないと睨んでいるところだ。
♪知らない間に兵隊で、知らない間に戦争で
知らない間に負けちゃて、知らない間に終わってた
これは呆れた驚いた何が何だか判らない
これが自由というものか、とかくこの世はヘンテコりん
この歌、いろんなバージョンがあるんですよね。私の持っている「トリロー全集」には、柳家金語楼も歌ってます。もっと評価されてもいいと思うんですがね。
勘違いならスイマセン。
僕も何故かエノケン全集なるもの持ってまして(ダイナのカヴァーとか大好きです)、確かそれに前出の「これが自由というものか」が入ってたような。
久しぶりに聞きたくなりました。
持って来てたかな?実家かな?
映画では山本嘉次郎監督ですね。
嘉次郎門下の黒澤明が撮った「虎の尾を踏む男達」のエノケンの軽快なこと。
ラストで六方踏んで、一目散にフレームアウトしていくとこなんざ、舌を巻いたもんだ。
エノケンさんのことに関しては、また稿を改めなければ…ね