久しぶりの外歩き、堤防に咲く彼岸花に目を細めて見入る老母。
老母にや 季節知らしむ 彼岸花
「彼岸花がきれいだね。風も気持ちいい。」
「部屋にいて外に出ないから、季節が変わったのもわからないと思うけど、もう秋なんだよ、おばあちゃん」
「そうなんだね、もうお彼岸なんだ」
「お彼岸には、墓参りに行っておばあちゃんの分も拝んで来るからね」
「そうだね、頼んだよ」
彼岸花が見頃となっている堤防に老母を連れ出して、爽やかな風に吹かれながら交わした短い会話の一端である。
久しぶりに外歩きに出て、堤防を真っ赤に染めている彼岸花を見て、老母は何を思ったことだろう。
きっと、お墓に詣でて先祖の前に頭を垂れたかったに違いない、そんなように思えた次第である。