toboketaG の春夏秋冬 

雑文、雑感、懐古話そして少しだけ自己主張。
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066-240616図書館は好奇心を満たす宝庫

2012年06月16日 | 小説・映画・など

読後感をまとめていたら、いささか重い内容になってしまった。 たかが昭和17年生まれで終戦時3歳だった者が生意気にと思われそうだが、書いてしまったので、エイヤッと公開をクリック。

 

船戸与一作「満州国演義」第1巻から第6巻までを読んでいる。 何でこの本にひきつけられるのか?  この時代の空気を吸った方々が未だご存命中であり、 歴史が私と繋がっているということ。 織豊時代や幕末明治維新を舞台にした小説も面白いが、今を生きている我々とは時間的な空間がある点で大きく異なる。

P5302232

もう10年も前になるが、公私共にお世話になったA藤氏、仕事でお逢いした中尾町のY島氏、日高町のK沢氏等に当時の話を聞いた。 各氏ともこの本に書かれた時代に、高崎歩兵15連隊から満州(今で言う中国東北部)や北支(北京、天津がある中国北部)に派遣され、激しい戦闘を経験されている。

過酷な戦闘の場面は各氏共、詳しい内容については触れたがらなかったが、会話の雰囲気で映画ではない実際の戦闘の様子は伝わってきた。

P6032261 旧高崎第15連隊の記念碑

今でこそ中国は世界の大国に変貌したが、この当時の中国の内情は悲惨なものであった。 また当時の日本もシビリアン・コントロールが効かず、軍部が政治を牛耳り、治安維持法のもとで、自由に物も言えない暗い時代だった。

満州国は建国の理想にもかかわらず日本の傀儡政権であった。中国の主権が及ばない地方であり、本来は日本を中心に漢族、満族、蒙古族、そして朝鮮族の各民族がいわゆる五族協和、王道楽土の旗印の下に、独立した国家を形成するという崇高な計画であった。 この計画が目的どおりに進めば、欧米列強に侵食されていたアジアの開放に繋がるはずであった。

が、日本主導の国家運営に対し他の四族の抵抗は、民族の独立への飽くなき願望と結びつき、各所で亀裂、摩擦を生じせしめ終戦まで対立は続いた。 終戦前後の突然のソ連軍侵攻で、その犠牲は新たな天地を目指して渡満した多くの満蒙開拓団の人々に集中した。

なぜに無謀な太平洋戦争に繋がる日中戦争に突入してしまったのかを批判することは簡単だが、あの時代、満州は日本の生命線であり、なんとしても日本の領土にすべきと関東軍の活躍を国民大多数は支持し、新聞も同調した。

満州事変勃発の報は国民を熱狂させ、局地戦での勝利の報のたびに、ちょうちん行列、花電車で祝い狂った。 日本は強し、いけいけどんどん・・・・

P4301878 わしには難しいことはわからんにゃ 極楽の境地じゃ

それから10年後の真珠湾攻撃の第一報 「本八日未明、帝国陸海軍は米英と戦争状態になれり・・・」 との大本営陸海軍部発表に喝采を叫ぶ国民が大多数だったという。 東条英機大将以外の誰が指導者になってもこの国民の熱気を抑えることは不可能だったのではないか。 しかし開戦は避けられなくとも、戦争の終結はあそこまで破壊される前にその機会はあったと思う。

勝っていれば、もっとやれやれとの世論が沸きあがり、負け戦での停戦には、犠牲になった多くの兵士にどう顔向けするのかとの軍部の反発が起こり、どの道破滅まで行くしかなかったのだろう。

そして敗戦、 明治維新以降、外国との戦いに負け知らずとのぼせていた国民は頭から冷水をかけられ、目を覚まされた。  8月15日の降伏、 昭和天皇は日本史上もっとも重い決断をした。 あの決断は天皇がすべきものでなく (形式的にはともかく) 時の政治の指導者がなすべきであった。 原爆投下の惨状はあったとはいえ、ともかく本土決戦が避けられ、沖縄戦の悲劇を繰り返さないで終わったことはせめてもの救いであった。

報道管制のもとに、真実を知らされなかった面もあるが、単一民族日本人の悲しいかなDNAかも知れない。

ひるがえって現代、会社の方針に疑問を抱き、「この流れに無条件に乗っていていいのか? どこかおかしいぞ・・・」 と言い切るのは勇気のいることである。 既に歴史の一部となりつつあるが、あのバブルの時代に疑問を感じ、異を唱える勇者はその流れの中では異端者と見られた。 職を賭す覚悟がなければ意見できない雰囲気であったという。 時流に乗って経営するということと、時流に踊らされているということとは違う。 国も企業もそして個人(私も含めて)も失敗しないと気がつかない。

P5132025 秋間の高台からの妙義山

戦後60年以上経過した現在も、世界的規模の戦争にはならないといえ、民族紛争はユーゴスラビア、イラク、アフガニスタン、イスラエルとパレスチナそして今シリア、各地で戦闘が止むことがない。 民族自決、宗教観の対立は今後も絶えることなく続くのだろう。 特に国内の宗教間対立が戦争にまで発展してしまうのは、何でもあがめてしまう大多数の日本人にはなかなか理解できない。

歴史は繰り返す。

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