ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ノーカントリー』

2008-02-08 12:09:05 | 新作映画
(原題:No Country for Old Men)

----これって、アカデミー賞の本命と言われている映画でしょ?
確か最多8部門ノミネートで、
他の映画賞でもゾクゾク受賞。
「うん。2月5日現在で
作品賞23冠。
助演男優賞25冠。監督賞21冠。
各映画賞計96部門受賞。まさに快挙だね」

-----監督はコーエン兄弟だっけ。
「そう。
今回はふたりで監督を務めている。
コーエンという名が日本で初めて表に出てきたのは、
80年代に、アメリカのインディーズ映画が注目された頃。
でも彼らはジム・ジャームッシュら
他のオフビートな作家たちと違って
デビュー作『ブラッド・シンプル』の頃から、
すでに植えるメイドの映画の雰囲気を持っていた。
2作目『赤ちゃん泥棒』なんてジェットコースター・コメディ・ロードムービー(笑)。
この『ノーカントリー』は『ブラッド・シンプル』と同じく、
テキサスで撮影されていて、
やはり犯罪をモチーフにしている」

-----コーエン兄弟の犯罪映画といえば
『ファーゴ』が有名だよね。
「あ~、あれは傑作だったね。
借金返済のための偽装誘拐という、
つまんない犯罪がとんでもない惨劇へと発展していく。
この映画も似たところがあって、
たまたま見つけたお金をネコババしたために、
冷酷な殺人者(ハビエル・バルデム)に
地獄の果てまで追われる男(ジョシュ・ブローリン)の
追跡と逃亡の物語。
そこにその事件を追う保安官(トミー・リー・ジョーンズ)や
また別の追っ手(ウッディ・ハレルソン)が絡んでくる」

-----ふうん。
ところでその助演賞を総ナメにしているのはだれニャの?
「ハビエル・バルデム。
このキャラはとにかく強烈。
自分の決めたルールに忠実で、
他の人の話を聞く耳は一切持たない。
自分が少しでも気に入らないとすぐに殺してしまう。
ただ、コインの裏表の賭けでそれを決めるときもあるけど…。
殺人に使う空気銃も
酸素ボンベを改良したようなもの。
他にも、殺人犬の川泳ぎなど
見どころ満載。
でも、これはあまり前情報を入れない方がいいかもね」

-----コーエン兄弟らしさって言うのは、どんなとこ?
「まずは、そのキャラ設定だろうね。
世の中には、自分の想像もできない
とてつもない“怪物”がいるということ。
これは『ファーゴ』もそうだ。
その“怪物”との遭遇により、
人生はとんでもない方向へと転がり始め、
そうなると、もう
後戻りはできなくなる。
それと、暗闇を生かした撮影。
『ブラッド・シンプル』のクライマックスの銃撃を
思い起こさせるシーンにゾクゾク。
あっ、これも詳しくは言わない方がいいな」

----ということは、えいも大絶賛?
「いやあ。
そこが微妙でね。
この映画、彼ら初の原作もの。
原作のコーマック・マッカーシーはピューリッツァー受賞に輝く純文学者。
彼には“国境三部作”の一本で
『すべての美しい馬』(マット・デイモン主演)という映画化作品もある。
あの映画は、馬を愛する少年のメキシコへの旅立ちを描きながら、
そこに失われゆく西部への哀惜が描かれていた」

----そういえば、あったね。
「よく覚えてたね。
本作『ノーカントリー』も、やはりメキシコへの越境が描かれる。
主人公は、トミー・リー・ジョーンズの形を取っていて、
続発する過激犯罪、その異常性が自分の理解を超えることへの
彼の嘆きからスタートする。
いわゆる、犯罪とそれを引き起こす崩壊した人間性だね。
それは、ある意味、分かるところもあるんだけど、
やはりアメリカをよく知る者でないと
完全には理解できないのではないかと、
そう思うわけだ。
テキサスの大荒野を背景としているのも
もちろん意味あってのことだと思うし…」

----でも、それってやはりアメリカ人には受けそうだニャあ。


        (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「みんなこの映画、怖いと言うニャ」もう寝る


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27 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
緊張感ありました (april_foop)
2008-02-10 19:41:39
シガーのキャラクターはインパクト満点でしたね。

面白かったのにハマりきれなかったのは、えいさんのおっしゃる通りその背景にあるものなのかもしれませんね。
ボクは原題の意味することを考えてたんですけど、いまいちしっくりとは落ちてきませんでした。

日本人にはなかなか理解できない部分なのかもしれません。
返信する
■april_foopさん (えい)
2008-02-10 21:31:01
こんばんは。

ぼくも、この原題についてはとても気になりました。
これは、邦題で省略しない方がよかったのではないかと…。
観ながら『ファーゴ』を思い出していましたが、
あの映画はまだラストに“ぬくもり”がありました。
でも、こちらにあるのは“嘆き”。
スゴい映画だとは思いますが、
あの終わり方は、あまり好きではありませんでした。
返信する
Unknown (mig)
2008-02-28 22:56:16
えいさん☆

こんばんは。
アメリカの評論家たちにウケそうな映画でしたね~。
ラストにはちょっと拍子抜けでした

でも観てるときはやっぱりすごい緊迫感で
魅入ってしまったので楽しめたクチです(笑)
とにかくハビエルがやっぱり素晴らしいですね。
返信する
■migさん (えい)
2008-02-29 16:50:09
こんにちは。

あのラスト、漫然と観ていたら
全部おじゃんになってしまいますよね。
(なんか、大時代的な言い回し←自分)。
あの終わり方、
アメリカの人たちには分かるのかもしれませんが、
ぼくには実感として感じられなかったです。

そういういみでも『ファーゴ』の方がとっつきやすかったです。

ハビエルは、カメレオン俳優という言葉が似合う役者になりましたね。
返信する
バルデム! (kazupon)
2008-03-04 22:16:48
migさん

珍しく試写で観てきました。
いやーあまり予備知識なく見たからか面白かった
です。なんか「ターミネーター」みたいな
映画だと思ってしまった(笑)
そうそうこれってオスカー取るのはあまり
似合ってないですよね。グラインドハウスに
混ざってそうな映画だと思いますよ!
バルデムはやはりすごくて、これから彼を
使いたい!ってプロデューサーや監督が
すごく多いんじゃないかなぁと思います。
返信する
すいません! (kazupon)
2008-03-04 22:20:21
えいさん、
すいません!migさんのところへ書いたコメント
になってしまってます。失礼しました。;;
問題アリなら削除してくださいね。
あぁまた「ファーゴ」だったら苦手だなぁと
思ったんですけど、ちょっと違うタイプなので
ほっとしました^^
本当に失礼しました!

返信する
■kazuponさん (えい)
2008-03-05 09:52:12
こんにちは。

『ターミネーター』とは言い得て妙ですね。
『ファーゴ』よりアクション面が強調されているだけに、
(しかもオスカー受賞!)
日本でも人気が出そうですね。

migさんへのコメント、
もし問題なければこのまま掲載させてください。
グラインドハウスの件など、
興味深いコメントでしたので…。
返信する
ありがとうございます (kazupon)
2008-03-05 21:05:18
えいさん
ではお言葉に甘えまして・・ホント失礼いたしました。オオボケです!;;
ウチの方にコメントいただいた、田舎町のコイン
裏表の場面、ほんと日常が脅かされる恐怖が
一瞬にして襲ってくるのかお?って秀逸な
場面でしたね。
返信する
こんばんは (ノラネコ)
2008-03-15 00:52:57
こりゃ凄い映画でした。
コーエン兄弟は「ブラッド・シンプル」以来大好きな作家ですが、彼らのベストじゃないでしょうか。
原作は読んでないですが、「すべての美しい馬」は世評は低かったですが、結構好きな作品です。
私と原作者との相性がいいのかも知れませんが、テーマ性といい、サスペンス映画としての展開といい、実に見事な作品でした。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2008-03-15 10:16:03
こんにちは。

ノラネコさんのところで、
コメント制限に引っかかったみたいなので、
こちらにお返事をまとめてさせてください。


ノラネコさんが示されたメタファーの数々。
興味深く拝読させていただきました。

>アメリカの抱える様々なドラマチックなひずみが噴出したルーツといえる時期

これは、まさに
この映画を読み解くキーワードですね。
なぜ、80年代という
あまりオモシロいとも思えない時代に、
しかもその時代を特徴づける
ニューヨークなどではなく
このような南西部を舞台にしたかが
見えてきました。

そういえば殺し屋のファッションも、
あの時代の若者文化の特徴の一つですね。
あ、サム・ライミ『シンプルプラン』との比較も
オモシロかったです。
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