ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『敵こそ、わが友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生』

2008-06-16 15:30:41 | 新作映画
(原題:Mon Meilleur Ennemi)

----へぇ~っ。これドキュメンタリーだ。
最近続くね。
「そうだね。
ドキュメンタリーは
あまりぼくの得意な分野じゃないんだけど、
ときどき、とんでもなく魅せられてしまう作品が現れる。
これもその一つだね」

----ビジュアルからすると、
ナチス絡みの話のようだけど…。
「うん。このクラウス・バルビーというのは、
フランス、レジスタンスの英雄と謳われた
ジャン・ムーランを逮捕・拷問し、
さまざまな戦争犯罪で罪に問われながらも、
なぜかなかなか捕まらなかった男なんだ」

----ふうん。そういえば
戦後ずいぶんとたってから、
突然、元ナチスの大物が捕まったりしたよね。
「そうだね。
このバルビーの場合は、
大戦後、ドイツとかつての敵国であったアメリカが、
冷戦を勝ち抜くために彼を利用したということのようだ」

----ん。どういうこと?
「第二次世界大戦後、
アメリカの最大の敵は共産主義。
そのボス、ソ連のことをよく知っているのが元ナチス。
つまり諜報活動のためというわけだ」

----でも、そんなこと許されるの?
だってフランスにとっては、
それこそ憎んでも憎みきれない相手ニャんでしょ。
「うん。そこで
このことがフランスに察知されたとたん、
アメリカはバルビーを秘密裏に南米へ逃亡させる。
しかもその裏にはバチカン右派の神父たちが
深く関わっていたというのだから驚きだ。
さて、1964年、ボリビアにクーデターが起こり、
軍事独裁政権が誕生。
そこでもバルビーは関わりを魅せる。
そう、かつて残虐な拷問刑を実行した者として
彼は殺戮の手腕を発揮。
その“知識”と“技術”で民主化弾圧に加担するんだ」

----また、同じことやっちゃうんだ?
「そうなんだ。
この映画は、
人はそう簡単には変わるものではないということを改めて
観る者に教えてくれる。
このバルビーというのは、
映画『オデッサ・ファイル』にも描かれた“ナチスの残党集め”の中心人物。
戦時中には、34名の子供たちを強制移送したというから、
まさに筋金入りだったわけだね」

----ニャるほど。
ナチス時代、
戦後のアメリカの協力者、
そしてボリビアでの暗躍。
それで“3つの人生”ということニャんだね。
「しかも彼は
あのチェ・ゲバラ逮捕にも深く関わっている。
これは監督も映画製作中に初めて知ったことらしいけどね」

----その監督はだれニャの?
『ラストキング・オブ・スコットランド』では劇映画も手がけたケヴィン・マクドナルド。
彼はアメリカ政府が80年d内にタリバン政権や
サダム・フセインに援助していたことなどを例に挙げ、
『戦勝国の指導者たちは
今日の世界を築き上げるためにファシズムを利用し続けた』と言っている」

----そういえば、 『ハンティング・パーティ』でも
似たようなことを感じさせられたニャあ。
人間は変ニャ。


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「小説以上にスリリングなのニャ」ご不満


※戦後の世界構造の一端が分かる度

人気blogランキングもよろしく

☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)index orange
猫ニュー



最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TB致しました (樹衣子)
2008-07-31 21:59:17
えいさまへ

こんばんは。
えいさまの人気ブログで、もしかしたらTB一番のりかもしれないと思うと、ちょっと嬉しかったです。

フォーンさまへ
>人間は変ニャ

人間って、とってもとっても複雑で変です。だから映画もおもしろいんだと思いますよ。でも、こういう映画を観ると、人間心理の恐ろしさと、もっと大きな国という組織の怖さも実感します。ロシアやアメリカなんぞ、殆ど帝国ですにゃあ。
返信する
■樹衣子さん (えい)
2008-08-01 22:06:40
こんばんは。

人気ブログなんて言われると、悪い気はしないです。
というか、嬉しいです。
↑根が単純。

そう、人間は複雑。だから映画もオモシロくなる。
この映画がドキュメンタリーにも関わらず、
ぼくが惹き付けられたのは、
世にも珍しい、一般人には想像もつかない
人物が主人公だったからかもしれません。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。