ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『妻の貌(かお)』

2009-07-09 21:33:47 | 映画
-----この映画って、もう先週から始まってニャい。
「うん。気づいたらすでにやっていて、
これはヤバい…と」

----これ「つまのかお」って読むんだよね。
以前、ウェブで調べてみたら、
怪しいところばかり出てきてすぐ閉じちゃったけど、
ほんとうはどういう映画ニャの?
「広島在住・82歳になる川本昭人という監督が撮ったドキュメンタリー」
----う~ん。知らない名前だニャあ。
「その昔、『小型映画』という
8ミリを撮る人たちにとってはバイブルみたいな本があったんだけど、
これは、その8ミリ(小型映画)を
1958年の長男誕生を機に初めて手にして以来、
50年にわたって撮り貯めた<家族の肖像>を長編にしたものなんだ。
それまで短編しか撮ったことのない彼に
長編を勧めたのは新藤兼人監督らしい」

----つまり監督の「私生活」を撮ったということだよね。
そんな普通の個人の生活なんて
あまりオモシロくはなさそうだけど…。
「果たして本当にそうかな。
じゃあ、次のシーンはどうだろう。
1997年、42歳の長男から歯の治療を受ける『妻の貌』。
川本監督はこの映像に、
長男の中学合格発表を喜ぶ30年前の『妻の貌』をカットインするんだ」

----うわあ、ちょっとそれは、
ニャんと言っていいのか…。
「こういう、
一見不可能に思えることができるのも、
50年間、ずっとカメラを離さず、
日常の一環として取り入れた川本監督なればこそ。
実は、監督の奥さんである“妻”は広島での被爆者。
これまでにもそのことををテーマに撮ってきているだけあって、
映画の奥には戦争と平和、
一瞬にして人の運命を変えてしまった原爆への怒りといったものが
込められている。
ところがこの映画、こういう言い方は不謹慎かもしれないけど、
監督は妻を撮っているうちにそうなったのか、
それとも、もとよりそうだったのか、
映画のオモシロさに引きずられている気がする。
たとえば、猫の中でも一番ひょうきんなアメショーが、
意図的に前の方にで~んと寝転がっていて、
背後で進行しているシリアスな話と対をなす。
もしかして、映画的な理由でアメショーを飼ったのではないかと、
ぼくには思えたほど。
これについては監督に聞いてみたいくらいだよ」

----え~っ。考えすぎじゃニャいの?
それってドキュメンタリーの演出ってことでしょ?
「でも、監督の奥さんは、あるとき監督に対してこうも言うんだ。
『あなたは私を素材にして…仕事の肥やしにしているだけ…』。
もしかしたら、
きわめて自然に思えた彼女の立ち居振る舞いの中に多少は演技もあったのじゃないか?
なんとも奇妙な感慨を抱いた作品だったね」


フォーンの一言「半世紀も家族を撮る。これも一つの愛情表現だニャ」ぱっちり


※これぞ「カメラ=万年筆」(アレクサンドル・アストリュック)だ度


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