ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『僕がいない場所』

2007-08-03 22:41:04 | 新作映画
----これってポーランド映画ニャんだよね 。
最近、あまりなかったよね。
「そうだね。アンジェイ・ワイダの作品以外は
あまり日本では公開されなかったからね。
それこそ60年代初頭には、
ムンクだのカワレロウィッチだの
世界に名を馳せた監督が何人もいたけど…」

----うわあ、ニャんだか
映画の歴史をお勉強しているみたい。
「そう言えばベルイマン、
そしてアントニオーニも逝去。
なんだか沈みこんでしまうな」

----ちょ、ちょっと、話がそれてる。
でもこのビジュアルも
トリュフォーの『大人は判ってくれない』を思い出すよね。
もしかしてお話も似ているの?
「うん。主人公は国立孤児院に預けられている少年クンデル。
彼はその反抗的態度で周りを手こずらせ
友だちもできない。
一人孤独なクンデルは意を決して孤児院を抜け出して母親の元へ。
ところが母親は男を作っていて、
彼がいないと生きていけないと言う。
そこでクンデルは一人で生きていくことを決意。
町外れの川べりに打ち捨てられた艀に住み着き、
集めた空き缶やくず鉄を売って生活していくが…」

---ひどい母親だね。
でもこんな親って日本にもいそう。
最近、虐待とか増えてきているし…。
「そうだね。日本でこそ
もっとこういう映画が作られるべきだ---」

---あれっ。是枝監督の『誰も知らない』は?
「うん。それはそうだけど、
現代の逼迫した状況から考えたらやはり数は少ない」

---だよね。でも、あれだけの作品が出た後だと、
他の監督はアプローチしにくくなるんじゃニャい?
「う~ん。どうだろう。
でもこの映画では、
クンデルが出会う少女にスポットを当てることで
映画にふくらみを持たせていたね。
映像としても
赤ちゃん時代の幸せな記憶を取り入れているなど、
見どころは多かったな」

---少女って??
「艀の近くに一軒の豪邸があるんだ。
それこそ誰もがうらやむような裕福な家庭だけど、
そこに住む一人の少女は
美しく賢い姉に対する劣等感や
自分は誰にも愛されないという気持ちを
アルコールで紛らわせているんだね」

---えっ、子供なのにお酒飲んじゃうの?
「うん。
その年齢からすると普通ありえない。
これはちょっとショックだったね。
しかも彼女の姉というのがいつも窓から艀を覗いているんだけど、
その見下したような目線が観る者をも突き刺す。
最後には無邪気な意地悪という言葉では片付けられない
少女期特有の残酷な企みによって
クンデルを絶望の底へと追いやってしまうんだ。
この姉とクンデルの間を隔てているのは
豪邸の一枚の壁-----。
貧富の格差をこのような形で見せられるのは辛いね」

---ふうむ。
ところで、なぜ艀ニャの?
「思うに、これは脱出願望だね。
このおんぼろ舟で“ここではないどこかへ”旅立つ。
日活アクション映画のスピリットを思い出したね」


 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そんな怖いのダメだニャあ」もう寝る

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