ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ダラス・バイヤーズ・クラブ』

2014-01-30 00:34:37 | 新作映画

(原題:Dallas Buyers Clube)


----おおっ、こっちから来たか…。
これは確か今話題のマシュー・マコノヒー
「そうだね。
マコノヒーなんて、
『評決のとき』で売り出した最初の頃はともかく、
その後は『サラマンダー』のような怪作に出たりして…。
まさか、ここまで伸びてくるとは思わなかった。
去年だけでも『リンカーン弁護士』『ペーパーボーイ 真夏の引力』と、
その演技の幅は実に広い」

----確かに。
で、今回の彼の役どころは?
「なんとHIVウィルス感染者。
この映画の舞台となった80年代は、
まだ、世間にはHIVへの正しい知識がなく、
HIV、そしてAIDZという言葉に
だれもが恐怖と偏見を抱いていた時代。
この映画の主人公ロン(マシュー・マコノヒー)もそんなひとり。
ロック・ハドソンのAIDZ公表を受けて、
彼はホモだと決めつけてしまう。
ところが、そのロン自身がHIVに感染。
男との性交渉など身に覚えのあるはずもない彼は、
マイクロフィルムでこの病気について徹底的に調べ始める。
そしてと未承認の薬AZTを闇で入手。
ところがこの薬の副作用は凄まじく
ロンはあわや命を落としてしまいそうになる。
九死に一生を得た彼は、
その対抗薬を求めてメキシコへ。
さらにはそこで手に入れた薬を国内に持ち込み、
ゲイ・コミュニティに繋がっているレイヨンをパートナーに、
他の患者たちにさばき始めるが…」

----ふむ。
そのパートナーを演じるのが
ジャレッド・レトってワケだニャ。
あれっ、どこにも出てないよ?
「いやいや。
ほら、このグラムロック風メイクの…」

----えっ、これ女性じゃニャいの?。
「驚きでしょ。
ぼくも
前もってプレスに目を通してなければおそらく気づかなかったと思う。
まったくホモっけのないロンと、
ジャレッド・レト演じるトランスジェンダーのレイヨン」

----ちょっと『真夜中のカーボーイ』を思い出すニャ。
「さすがフォーン。
いい例えだ。(笑)
さて、ロンとレイヨンはこの“事業”を拡大。
二本を始め世界中へ仕入れルートを広げていく。
やがてそれは、
会費を募り、必要な薬を無料で配る“ダラス・バイヤーズ・クラブ”へと発展。
だが、そこにAZTの投薬を推奨し始めた医師と製薬会社、
さらには政府が立ちはだかる…というお話だ」

----へぇ~っ。
これ事実ニャんだよね。
スゴイ人がいたものだニャあ。
それで良心の呵責とかはないの?
「うん。
根底にあるのは“生きたい”というそれだけの気持ち。
ところが、そのあたりまえのことを追っているのに、
薬を飲む権利を国が侵害する。
これは、考えさせられる話だったね。
日本でも、丸山ワクチンという未認可医薬品が話題になったことがある。
ガンに効くということでね。
だけど、国はその効果は実証されていないという。
この映画では、
アメリカでは未認可の薬が海外では認可されているというのがポイント。
手を伸ばせば、
すぐそこに自分の命が助かるという“希望”がありながら、
国はそれを許さない。
そう、この映画は“生きる権利のための戦い”を描いた映画。
それを監督のジャン=マルク・ヴァレは、
当時の世相、風潮を織り込むことで、
ユーモアと共に見せていく」

----ユーモアって?
「レイヨンは自分の憧れ、マーク・ボランのポスターを壁に貼りまくり。
ところがロンはそれをボーイ・ジョージと勘違い。
そんな調子で、
ロック・ハドソンについても
『北北西に進路を取れ』の出演者と思い込んでいる。
こういった、ちょっとした“遊び”が、
命の問題を扱ったこの映画を、
あまりヘビーなものへと傾かないようにしている。
そこが『フィラデルフィア』などとの違いだね」

----あの映画も、
トム・ハンクスの演技が話題になったよね。
「そうだね。
このマシュー・マコノヒーも十分にその可能性はあると思う。
ちょっと言い方は悪いけど、
レイ・ミランド『失われた週末』以来、
アカデミー会員は、昔からアルコール中毒やドラッグ中毒など、
障碍を抱えた者を演じた俳優には称賛を惜しまない。
クリフ・ロバートソン『まごころを君に』、
ニコラス・ケイジ『リービング・ラスベガス』、
ジェフリー・ラッシュ『シャイン』、
ジェイミー・フォックス『Ray/レイ』
などもそうだ。
そこに『レイジング・ブル』のデ・ニーロを思わせる21kgの減量
今回のオスカー・ノミネート作全部を観ているワケじゃないから何とも言えないけど、
彼は主演男優賞にもっとも近いところにいるのではないかな。
ただ、作品賞としてはどうだろう?
アメリカ社会そのものとの徹底抗戦を描いているからね。
これがもし受賞したら
ぼくもちょっとアカデミーを観直すかもね」



フォーンの一言「薬に自己責任という言葉はないのかニャ」身を乗り出す

※個人的なことだけど、ロンが日本にまで足を伸ばして手に入れようとしたインターフェロンというのは
25歳の時、ぼくの命を救ってくれた薬。
アメリカに生まれていたら、とっくにこの世を去っていたかもだ度}

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4 コメント

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こんばんは (ノラネコ)
2014-03-07 20:53:17
これアメリカに限った話ではなく、更に言えば薬に限った話でもない訳ですよね。
国民を統制したい国家の意思と、個人の自由という大きな対立と葛藤があるから、非常に普遍的な問いを含んだ物語になっていたと思います。
オスカーダブル受賞は納得でした。
返信する
インターフェロン (とらねこ)
2014-03-09 10:23:28
なんと、インターフェロンとの繋がり。
そんなことがおありだったのですね…詳しく聞きたいような。
 マコノヒーとジャレッド・レトの2人が、それぞれ20kgの減量という身体改造をしておきながら、彼らの演技に過度な熱演や大げさな気迫などなく、極めて自然な姿での演技。静かに胸を打たれました。
返信する
■ノラネコさん (えい)
2014-03-15 14:30:15

そうなんですよね。
これは、薬だけの問題じゃない。

>国民を統制したい国家の意思と、個人の自由という大きな対立と葛藤

このテーマを持つ映画を
アカデミー作品賞にノミネートさせてくるハリウッドの深さ…。
もしかして、
ぼくはハリウッドを少し見くびりすぎていたのかも…。

返信する
■とらねこさん (えい)
2014-03-15 14:31:28
こんにちは。

はい、インターフェロンとは深いつながりが…。
昔は、無茶をやっておりました。
その話をつまみに、
また飲みましょう。
返信する

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