ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『42 世界を変えた男』

2013-10-31 21:59:25 | 新作映画
(原題:42 The Jackie Robinson Story )



----この映画、
観る前はあまり気乗りじゃなかったのに、
帰ってきたらまるで別人になったみたいに大プッシュしていたよね。
「うん。
キービジュアルでは
黒人の大リーガー選手が一歩前に。
その後ろで背広姿の白人が
なにやら不思議な笑顔で観ている。
この<画>で触手が伸びる人ってあまりいないんじゃないかな」

----ニャるほど。
ところで『42』というのが背番号ということは分るんだけど、
『世界を変えた男』というのはどういう意味?
「そうだね。
それを説明するためには、
まずこの映画の舞台となる、
人種差別が激しかった1940年代のアメリカについて触れなくてはならない。
バスもトイレも、その利用に白人と黒人が分けられる中、
ブルックリン・ドジャースのGMブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)は、
リーグ、大衆、そして自軍選手たちからの猛烈な反対を押し切り、
黒人選手を起用することを決める。
そして多くのリストの中から選ばれたのが、
この映画の主人公であるジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)。
そして彼の成功がきっかけとなって、
世界は、黒人にその門戸を開くようになっていく」

----でも、いくら才能があっても
すぐにメジャーというわけにはいかないよね。
「もちろん。
彼はまずマイナーから出発し、
実力を周囲に認めさせながらメジャーへの階段を上っていく。
しかしどのステージでもジャッキー・ロビンソンを待つのは厳しい試練。
『出ていけ!』の大合唱などは、まだ生やさしい方で、
ときには家族もろとも命の危険にさらされることも…」

----試練…。
あっ、だから
ツイッターで『42 神の試練を乗り越えた男』って呟いたんだニャ。



「そういうこと。
彼の<敵>は人種偏見に満ちた南部の観客だけではない。
ジャッキー・ロビンソンを煽ることで彼から不適切(?)な言動を引き出し、
ニュースにしようとするマスコミ、
自分の出身地での試合にロビンソンを出させることを嫌がるチームメイト、
そしてときには審判さえをも相手に、彼は戦わなくてはならないんだ。
さて、この映画、冒頭に
ジャッキー・ロビンソンが
黒人差別、偏見には決して屈しない男であるといういくつかのエピソードを織り込む。
そしてこれが以後、映画を支える基調となっていくんだ」

----基調?どういうこと?
「この冒頭で、
ぼくら観客は、
彼が、人間としての誇り、そして不屈の精神を持つ男と知る。
しかしそんな彼が、じっと耐え続ける--」

----耐え続ける?
そんなにヒドイの?
「うん。
ある球団の監督のヤジなど、
あまりのダーティさに
観ているこっちのほうがハラハラドキドキ。
ぼくなんて、自分が彼に代ってその監督を殴りにいきたくなったものね」

----つまり、主人公に完全同化したというワケだニャ。
「そういうこと。
これひとつとっても
この映画の演出がいかに優れているか分かる。
観客でさえカッカきているのに、
しかし、ジャッキーは、じっと耐える…」




----う~ん。
侮辱されたらやり返せという
いまの日本の風潮とは正反対。
「そう、そこがこの映画のキモ。
リッキーは言う『相手の低いレベルに自分を落とすな』。
ロビンソンは妻に言う。
『好かれなくてもいい。敬意もいらない。でも自分には負けたくない』。
ヒドいヤジにも必死に耐えぬいた彼は、
ベンチ裏で自分のバットをへし折る。
しかしそれでも周りにはその怒りを微塵も見せない。
しかし彼はリッキーに言う。
『“やり返す勇気のない”弱虫でいろと?』
リッキーは答える。
『必要なのは――“やり返さない勇気”を持つことだ』
もう、こうやって書いているだけで涙が溢れ出てくる、ここは最高の名シーン。
この映画はきら星のように素晴らしいセリフがいっぱい。
ここには喋りきれないほどにね。
しかも一つひとつのシーンに全くムダがない」

----一う~ん。
どこかひとつだけでも教えてよ。
「そうだね。
じゃあ、一見、本筋とは関係ないように見えるシーンを…。、
列車移動の途中、
ジャッキー・ロビンソンはホームで少年にボールを渡す。
ぼくはこの列車が出てきたとき、
『やはりスゴイな。ハリウッド映画ってのは…。
わざわざこんなシーンひとつのために、
ノスタルジックな風景を再現。
しかも昔の列車まで走らせるんだから…』と感心しながら観ていたんだ。
ところが、このエピソードは、
少年が列車を追いかけ、線路に耳を当てるという
それこそ映画ならではの高揚をもたらすシーンへと繋がっていく。
それだけでも、もう胸いっぱいなのに、
このシーンはその<画>だけではなく、
最後に、あるドラマとして回収される。
いやあ、つくづくムダのない映画だと思ったね」

----監督はだれニャの?
「メル・ギブソン主演の『ペイバック』(これもおススメ)で
監督デビューを果たしたブライアン・ヘルゲランド
でも、やはり脚本家としての方がその名を知られているかな。
『ブラッドワーク』『ミスティック・リバー』では、
あのクリント・イーストウッド監督とも組んでいるしね。
なかでも有名なのが
アカデミー賞脚色賞を受賞(監督のカーティス・ハンソンと共同)した『L.A.コンフィデンシャル』
この映画は、そんな彼のキャリアが一気に開花した作品と言えるだろうね」


                    (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「予告編も素晴らしいのニャ」身を乗り出す

イチローをはじめ大リーグでは一年に一度、全員が「42」のユニフォームを付けるらしい度
コトリ・ロゴこちらのお花屋さんもよろしく。

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