ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『六月燈の三姉妹』

2014-05-15 15:27:38 | 新作映画


----“六月燈”って、ニャんのこと?
「これはね。
鹿児島県を中心に古くから開かれている“夏祭り”のこと。
旧暦の6月(現在は7月頃)に、開催されるんだ」

----その“中心に”って気になるニャ。
他の地方にもあるということなのかニャ?
「そう、宮崎県の都城市でもね。
映画は、この“都城”もうまくエピソードの中にとりいれているんだ。
次女・奈美江(吹石一恵)の夫・徹(津田寛治)が都城市の出身。
微妙に違う言葉、ほどよい距離。
これらが映画の中に上手く活かされているんだ。
さて、物語。
奈美江と徹。
このふたりは東京で暮らしていたんだけど、
嫁姑問題が原因で奈美江は徹に離婚を突きつけ、
鹿児島で和菓子店「とら屋」を経営している実家へ。
徹は、妻を思いとどまらせようとその後を追うが…」

----ニャるほど。
でも、タイトルからすると、
その鹿児島に、あとふたりの姉妹がいるワケだよね?
「うん。出戻りの長女・静江(吉田羊)、
そして結婚直前に婚約破棄した上に不倫中の三女・栄(徳永えり)。
さて、ここでもうふたりの重要な人物を紹介。
三姉妹の母親で「とら屋」の店主、恵子(市毛良枝)、
そして、奈美江・静江の義父で栄の父親・眞平(西田聖志郎)」

----えっ、じゃあ、恵子さんという人はバツ一?
「いやいや、バツ二。
眞平が浮気したことから離婚したんだね。
でも、「とら屋」に眞平は欠かせない、
ということで、いまでも一緒に新作菓子作りに励んでいるんだ。
折しも新作菓子を発表する予定の“六月燈”はすぐそこに…」

----ニャんだか、ややこしいニャあ。
観ていて、こんがらない?
「いや、それはなかったね。
むしろ、この映画は、
一見、複雑なそれぞれの関係性を
映画の“オモシロさ”の中に包み込んでいるところにある。
一例をあげれば、
奈美江を追ってきた徹に対する母・恵子や三女・栄の態度。
本人にはもうその気がないから、きっぱりと諦めるように進言するんだ」

----ええっ!?それって冷たすぎニャい?
「でしょ。
通常のホームドラマから見れば逆。
でも、そこが独自の笑いを呼び、
なぜ彼女らはそんなことを言うんだろう?
この先、徹はどうなるんだろうという
ちょっとしたミステリー的な興味で映画を引っ張っていく。
そしてそこに、家族一丸となって取り組む“六月燈”が絡んでくる…」

----ニャんだか、
昭和の時代のお話みたいだニャあ。
「うん。
ぼくもこの映画を観ていて、
懐かしい気持ちになっていった。
もしかしたら、
地方には、いまもこんな空気が残っているのかもっていう…。
この映画、監督が2月に公開された『東京難民』の記憶も新しい佐々部清。
あの映画では、
東京での若者の地獄めぐりが真に迫って描かれていた。
ところがここには、その翳りもない。
いや、「とら屋」も含み、
商店街自体は大型ショッピングセンターの進出で客足減少、
赤字に苦しんでいる。
そういう意味では、これは確かに現代の話。
でも、その描き方がどこか“昭和の映画”を思い起こさせるんだ。
縁側と畳の「とら屋」は言うまでもなく、
商店街の人たちが夜な夜な集まる居酒屋「京ちゃん」。
そしてこの居酒屋の出し方にもある法則があって、
観ていて心地よいんだ」

----“法則”って?
「それは内緒。(笑)
この映画は、そんな佐々部清監督の映像的“こだわり”が随所に見受けられる。
ぼくが佐々部監督の映画を観るのが楽しみなのは、
映画の題材ごとに、
そのアプローチを変えていくことなんだ。
監督によっては、自分のスタイルを確固として崩さない人もいる。
でも、佐々部監督はそれよりも
目の前の題材を、どのような話法で伝えるのがいちばん効果的かを考えている(と思う)。
これは古今東西、ほんとうに数多くの映画に接してきた中で自然と身についたもの。
日本でそれに近いのは森田芳光監督かな。
この映画、クライマックスの空港での、ある“やさしさ”に思わずホロリ。
さらに続く三女のエピソードの嬉しい結末に温かい気持ちになっているうちに、
映画はアイリスですべてを包み込んでいく。
この手法が、こんなに活かされた映画を観たのも久しぶりだったね」




フォーンの一言「お祭りシーンの写し方が他の映画と違うのも注目ニャ」身を乗り出す

※オムニバス『ゾウを撫でる』も楽しみだ度
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