ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『熱波』

2013-06-10 23:36:49 | 新作映画

----この映画、
モノクロみたいだけど、
昔の映画ニャの?
「いやいや。
これは2012年に作られた
ポルトガル=ドイツ=ブラジル=フランス、
4カ国の合作映画」

----それにしては
メインビジュアルが古めかしく感じるニャあ。
いつの時代のお話?
『楽園の喪失』と称された第一部が現代。
そして『楽園』の第二部が60年前という設定」
----そのふたつに関連性はあるの?
「この映画は、
老いて死を目前にした老婆アウロラの今と
美貌に溢れたその若き日を描いている。
現代のアウロラは気性が荒くギャンブル好き。
周りに迷惑をかけてばかりいる。
そんなある日、病に倒れたアウロラは薄れゆく意識の中で、
ベントゥーラという男に会いたいと言う。
最期の願いを託された隣人のピラールは、
その男を探そうとする。
かくして見つかったベントゥーラ。
その口から語られる記憶とは…」

----ニャるほど。
それがポイントということだ。
ドラマチックな展開になりそうだニャ。
「う~ん。
実を言うと、
それほどのことでもない。
いわゆる≪不倫>のドラマ。
舞台がアフリカに移ることもあって、
『イングリッシュ・ペイシェント』
思い出さないでもなかったけど、
あのような雄大な自然が出てくるわけでもないしね…」

----それにしては
ベルリン国際映画祭でのW受賞など、 ,
世界的評価も高いようだけど…?
「それは、
語り口によるものじゃないかな。
いまも話した通り、この映画は、
ある女性の惰性で生きているような老後の日々、
そして情熱に満ちた若かりし日々の不倫の恋と、
扱われている素材としては
もう、手垢が付いていると言ってもいいくらいに古い。
ところがこの監督のミゲル・ゴメスは、そこに
掟破りとも言えるほどの
大胆な手法を取り入れているんだ」

----映画に<掟破り>ってあるの?
どんな手法も自由じゃニャいの?
「確かに。
でもこれを聞いたらどう思う?
第二部『楽園』は
会話の一つありやしない。
それもそのはず、
すべては
ベントゥーラの回想モノローグで語られるんだ。
それぞれの手紙を読み上げるシーン、その例外を除いてはだけどね」

----えっ、それって<画>じゃなくて<言葉>で
心のうちも説明するってことだよね?
それはずるいや。
「普通はそう言いたくなるよね。
安易すぎて映画の面白みに欠けると…。
ところが、
そのモノローグ・オンリーを徹底することで
これまで見たことのない相乗効果が立ち現れるんだ。
ある種の情感とでも言ったらいいかな。
スクリーンが
恋に落ちたふたりの<想い>に満たされ包まれていくんだね。
さっきも言ったように、
これはもとより
映画だけでなく文学などでも繰り返し語られてきた古めかしいお話。
しかし逆に
その古典的な物語を使い、
映画表現のタブーを破ることで
その向こうにあるであろう何かを模索し、掴もうとしたってわけだ。
そういう意味ではとてもチャレンジングな映画だったと思うよ」



「でも一般受けするのかニャ?」小首ニャ



※第一部には主人公を回転移動撮影で捉えた不思議な映像も飛び出す度


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