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歴史学研究会と青木書店の「熟年離婚」(その2)

2017-11-18 | 歴史学研究会と歴史科学協議会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年11月18日(土)10時39分28秒

昨日はちょっと軽い調子で書いてしまいましたが、「会告」の下に載っている編集長・鈴木茂氏の「編集室から」を読むと、事態はけっこう深刻なようですね。

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 会告でお知らせしてある通り,本号より発行元が青木書店から績文堂出版に変更されることになった。会員の皆さんには,先月号の『月報』(No.687)で小沢弘明委員長よりお伝えしてあるので,お読みいただいた方も多いと思う。また,詳しい経緯については,本年5月の総会で報告される予定である。
 歴研編『戦後歴史学と歴研のあゆみ 創立60周年記念』(1993年5月)所収の座談会には,1959年3月号をもって岩波書店からの発行が停止し,青木書店の協力で再刊されるまで2カ月の空白があり,2号が休刊となった経緯が語られている。そこでは30年以上も前の出来事として,ある種懐旧的な雰囲気が漂っているが,当時の休刊を告げる会告には,本会の財政が危機的状況に陥り,再刊の見通しも立たないまま休刊に追い込まれた窮状が吐露され,鬼気迫るものがある。
 今回は前回とは異なり,発行元の変更は十分な準備期間をおき,円滑に実現した。また,青木書店も出版社としての営業を続けることになっている。歴研の課題は,出版不況が深刻化する中で,歴史研究の成果をどのように広く社会に伝えるかについて真剣に考えることであろう。皆様の忌憚のないご意見をお願いする次第である。
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ということで、「青木書店も出版社としての営業を続けることになっている」は穏やかではない表現です。
これを読んで、青木書店の経営はそんなに悪いのか、とチラッと思ったものの、別に私には特定の出版社の経営状態を知る手がかりはないので、ま、とりあえずということで、またまた国会図書館サイトで検索してみました。
青木書店の書籍総数は2,691件で、岩波書店の37,417件あたりと比べると見劣りはしますが、それでも相当な件数です。
しかし、近年は出版点数が激減していて、

2011年 1件
2012年 7件
2013年 1件
2014年 4件
2015年 2件
2016年 0件
2017年 0件

となっていて、ちょっとびっくりですね。
実際、同社サイトを見ても、トップページの「話題」に載っている6点は、

保立道久『黄金国家』、2004年
時津裕子他『認知考古学とは何か』、2003年
西口清勝『現代東アジア経済の展開』、2004年
宮澤誠一『明治維新の再創造』、2005年
藤原彰『餓死した英霊たち』、2001年
江口圭一『十五年戦争小史〔新版〕』、1991年

http://rr2.aokishoten.co.jp/index.php

という具合で、いったい何時の「話題」なのか、と嫌味を言うのも気の毒な「鬼気迫る」状態です。
まあ、これでは定期刊行物の出版元を続けるのも実際上無理で、過去の栄華を偲びつつ、細々と余生を送る以外はないのでしょうね。
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