学問空間

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Confessions of a Namahage Mask(なまはげ仮面の告白)

2012-12-31 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月31日(月)18時40分0秒

「被災地の神社・寺院の状況」というブログを始めたので、あちらのブログだけを見ている人は私のことを特別に信心深い人だと思っているかもしれないですが、まあ、それほどの信仰心はないですね。
東北に来る前、修験道については少しだけ興味があって、出羽三山をはじめとする東北の修験の聖地にはあちこち足を運んだのですが、修験道を語る人たちによく見られる粘っこい表現にはなじめませんでした。
その種の人たちは、結局のところ、実際に大自然の奥深くに入って何か神秘的な体験しない人には修験は理解できないのだ、みたいな結論を出すのですが、私は、体験主義の人たちは基本的にアホだと思っています。
修験の影響力が強かったこともあって、東北の多くの神社には神仏習合の要素が色濃く残っており、神社の境内に鐘楼があり、石仏が置かれているのは当たり前ですね。
また、神社の御神体が仏像で、不動尊神社・観音神社といった名称を持つ神社も多数あります。
多くの神社で墓地との関係が強いのも、東北の神社の特色のひとつです。
まあ、それが参道の横に墓地がある程度ならばよいのですが、墓地に取り囲まれた角田市の大荒山神社を初めて訪問したとき、正直、自分は死の世界と直に接触している神社は好きではないな、と思いました。

さて、最近は神仏習合について肯定的に語る宗教学者が多くて、京都大学教授鎌田東二氏などがその代表ですね。
例えばこんな感じです。

-------
千葉県市川市の日蓮宗遠壽院に付設される総合修法研究所が10日、同院行堂出身者らを対象に第32回修法研修会を開催した。鎌田東二・京都大教授が「現代における神仏習合の実際とその未来」と題して講演。日本の宗教はさまざまな神が習合してきた伝統を持ち、明治期にいったん神仏分離したものの、今後は「神仏諸宗共働時代」になると述べた。
http://www.chugainippoh.co.jp/religion/news/20121213-004.html

私も安丸良夫氏の『神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈』などから神仏分離に興味を抱き始めて、辻善之助博士の『明治維新神仏分離史料』なども少し拾い読みするなどしているうち、自然と神仏分離に批判的な態度をとるようになり、反面、神仏習合については何となく肯定的に捉えていました。
しかし、東日本大震災以降、考え方が相当変化しました。
仮に地震と津波だけだったら特に変化はなかったはずなのですが、原発事故に対する多数の宗教関係者・宗教学者・歴史学者の反応を見ていて、私は非科学的・非合理的な考え方をする人々に大変な嫌悪感を抱きました。
神仏習合について肯定的に語る人々の多くは、原発事故に関して非科学的・非合理的な対応をしていましたね。
また、近世社会において、時代の制約を受けつつ合理的精神を発展させてきた人々にとって、神仏習合は耐え難い非合理な風習だったのだろうな、と想像するようになりました。
で、結局、自分が明治維新の時期に生きていたら、神仏分離・廃仏毀釈の狂騒に抵抗するどころか、率先垂範して神仏習合化した神社を襲撃し、仏教的色彩の強い建造物を打ち壊し、神社内の仏像を放り出して焼き払う方に回ったのだろうな、と気づきました。
これはなかなか衝撃的な経験でしたね。

参考:鎌田東二氏
http://1000ya.isis.ne.jp/0065.html
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2011071704074.html

※追記 「なまはげ仮面の告白(その2)」があります。
http://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/725da3df64782ef57ef8165d4a6142c3
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世界の宗教人口調査

2012-12-31 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月31日(月)13時34分55秒

12月18日のNBCの記事をきっかけに少しツイートしたことを備忘のため纏めておきます。
特に意見はなく、ふーん、と思っただけです。

-----------------
世界の宗教人口調査において、特定の宗教を信仰していない人が第三番目のグループを占めると云々。中国・日本はこのグループが最多の割合。

The unaffiliated rank third among world religion groups, Pew study says

By Becky Bratu, NBC News

Roughly one in six people around the world has no religious affiliation, a new study by the Pew Research Center’s Forum on Religion & Public Life found, making the unaffiliated the third-largest religious group worldwide, behind Christians and Muslims, and about equal in size to the world’s Catholic population.
The religiously unaffiliated population includes atheists, agnostics and people who do not identify with any particular religion in surveys, the study issued Tuesday reads. Many of the religiously unaffiliated, however, hold religious or spiritual beliefs, the study emphasized.

http://worldnews.nbcnews.com/_news/2012/12/18/15993849-the-unaffiliated-rank-third-among-world-religion-groups-pew-study-says?lite?ocid=twitter

これが元ネタか。

http://www.pewforum.org/global-religious-landscape-exec.aspx

キリスト教がトップで22億・32%、ついでイスラム教が16億・23%、三番目がunaffiliated で11億・16%、以下、ヒンズー教10億・15%、仏教5億・7%。

other religionsとして例示されているのが the Baha’i faith(バハイ)、 Jainism(ジャイナ)、 Sikhism(シーク)、 Shintoism、 Taoism、 Tenrikyo,、Wicca(ウィッカ)、Zoroastrianism。

神道と天理教が並置されているのが若干妙な感じ。また、Religiously Unaffiliated については別ページで解説がある。
http://www.pewforum.org/global-religious-landscape-unaffiliated.aspx

単純に無宗教という訳ではなくて、atheists(無神論者)、agnostics(不可知論者)、そして特定の宗教には帰属しない人々となっている。Unaffiliatedであっても、かなりの割合で「神もしくは高次の存在」を信じていたり、宗教的な儀式に参加していると云々。

Religiously Unaffiliated はアジア・太平洋に集中しており、Unaffiliated全体の76%を占めている。そして中国一国で全体の62%。Unaffiliatedが最多の割合を占める国は6か国で、チェコ(76%)北朝鮮(71%)エストニア(60%)日本(57%)香港(57%)中国(52%)。チェコ・エストニアで率が高いのは旧共産圏という以外に何か理由があるのかな。
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刑法各論・補遺

2012-12-28 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月28日(金)21時23分47秒

>筆綾丸さん
除草剤を注入する行為について色々書きましたが、最初から材木として買う目的でやっていることが立証できるのであれば、もちろん詐欺罪で立件できますね。
この場合、除草剤を注入する行為は相手を錯誤に陥らせるための準備行為という位置づけになるんでしょうね。
仮に材木として適正価格で購入したとしても、売りたくもない時期に無理やり売らざるをえないように仕組まれたとすれば、詐欺罪は成立します。
詐欺っぽい雰囲気は濃厚で、警察も最終的には詐欺での立件を狙っているのでしょうが、なかなか苦労しているみたいですね。
それと、今思いついたことですが、除草剤を注入する行為については偽計業務妨害も検討すべきでしょうね。
枯死・伐木をめぐる面倒な処理をさせることによって、神社本来の業務の円滑な運営を妨げることになりますから、偽計業務妨害罪での立件は十分考えられると思います。
これだと嫌がらせ目的で除草剤を注入するような事例にも対応できそうですね。
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ネコサヨさんとの対話

2012-12-28 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月28日(金)09時01分32秒

ネコサヨ@neko_sayoku
特高に検挙された飼い主に鉄格子越しに差し入れをしたのはいい思い出です。

鈴木小太郎@IichiroJingu
@neko_sayoku 横浜事件で特高に検挙された私の祖父は、同房の親友の飼い猫が明り取りの小さな窓を時折訪れるのを楽しみにしていたそうです。
ある日、その窓にネズミの死骸が置かれており、ああ、差し入れをしてくれたのか、と感謝したものの、食べるのは遠慮したとのことでした。

ネコサヨ@neko_sayoku
@IichiroJingu にゃらーf^_^;)

https://twitter.com/neko_sayoku
https://twitter.com/IichiroJingu


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刑法各論

2012-12-27 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月27日(木)23時33分27秒

>筆綾丸さん
宗教感情を害する行為なので、保護法益の面では礼拝所不敬罪(刑法188条、6月以下の懲役若しくは禁固、10万円以下の罰金)が一番ピッタリ来ますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BC%E6%8B%9D%E6%89%80%E5%8F%8A%E3%81%B3%E5%A2%B3%E5%A2%93%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E7%BD%AA

ただ、問題が二つあって、まず「神祠、仏堂、墓所その他の礼拝所」に該当するか、次に「公然」と言えるか、ですね。
前者で参考になるのは、今年の夏、那智の滝でロッククライミングをして軽犯罪法違反(第1条第32号「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者」)で現行犯逮捕され、礼拝所不敬罪で書類送検された後、不起訴処分となった登山家のケースです。

http://wbs.co.jp/news/?p=10626

那智の滝は注連縄などで信仰の対象であることを明確化していますから、警察は書類送検に際し、「礼拝所」に該当すると判断した訳ですね。
検察が不起訴処分としたのは、容疑者が神社に謝罪するなどしたのを見て情状を酌量したからであって、「礼拝所」であることを否定したものではないと思います。
岩でも「礼拝所」になるのだから、注連縄を張るなどしてあれば「神木」もオッケーとなりそうですね。
次に除草剤をこっそり注入する行為が「公然」と言えるかですが、「午前2時頃に墓碑を押し倒す行為にも公然性は認められ本罪は成立する」とする判例があるので、議論の余地はあると思いますが、明るくなれば誰の目にも不敬行為である墓碑倒壊の事例とは事情が異なるので、かなり厳しい感じがします。
構成要件を全て充足しなければ犯罪は成立しないので、結局、礼拝所不敬罪は無理っぽいですね。

宗教感情とは関係のない犯罪としては、状況によっては建造物侵入罪(刑法130条)の成否も問題となると思います。
建物に接続して障壁等で囲まれている囲繞地(いにょうち)であると認められる場合には、建造物の一部として扱われ、そこへの侵入が建造物侵入罪を構成する(判例)のですが、これは「神木」の管理状況次第ですね。
広い境内や裏山の一画に、建物と無関係に木が生えているだけだと、ちょっと無理でしょうね。

とすると、広く「神木」一般に適用できそうなのは、やはり器物損壊罪(刑法第261条)となりますね。
もちろん、ロッククライミング同様、軽犯罪法にも該当する可能性は高いですが、これは法定刑が非常に軽いですね。

>漢詩
「萬兵斃」とか「粉骨碎身」とか、縁起でもない感じがしますねー。

※筆綾丸さんの投稿「神木と漢詩」へのレスです。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6654
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墓地に取り囲まれた神社(その2)

2012-12-24 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月24日(月)09時15分40秒

訪問したのは9月26日で、大荒山神社の南側に広がる水田では稲刈りが行われていました。
神社の横には地区の集会所があります。
鳥居をくぐって境内に入ると、本殿の裏、一番高いところに子安神社という末社がありますが、あまり神社らしい建物ではないですね。
正面の鳥居の左右が墓地になっているのを見ると、正直、いささか落ち着かない気持ちになります。

※写真
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6653


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墓地に取り囲まれた神社(その1)

2012-12-24 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月24日(月)09時05分54秒

こちらは大河原町に隣接する宮城県角田市の大荒山(おおあらやま)神社です。
宮城県神社庁サイトの「県内神社の紹介」には次のように書いてあります。

-------
大荒山(おおあらやま)神社
鎮座地: 宮城県角田市稲置字桝内63
主祭神: 火産霊神、天目一箇命
例祭日: 4月3日 毎 土用中虫送りの祭を行う。
由緒:
本社の創祀年月不詳なるも、古くこの地に鎮座あり稲置村鎮守で荒神社と称したが、明治の初大岩山神社と改称。同5年11月村社に列せられた。

http://www.miyagi-jinjacho.or.jp/

また、「陸奥総社宮」というサイトにも大荒山神社の紹介があります。

http://mutsusousya.web.fc2.com/ooarayama/ooarayama.html
http://mutsusousya.web.fc2.com/mutsu-sousyanomiya/mutsu-sousya-page1.html

※写真
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6652
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この神社で柏手を打つべきか、打たざるべきか。(その2)

2012-12-24 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月24日(月)08時00分7秒

本殿前で、ここで柏手を打ってよいのかどうか迷い、近くにいた人に聞いてみたところ、あまり自信がなさそうな様子で、みんな打ってますねー、という回答だったので、私もその通りにしてみました。
「神棚」の中央には鏡があります。
その上の段には木製の不動像が三つ。
写真だと分かりにくいですが、一番左に金属製の独鈷があります。
最上段にも木製の不動像が三つ。
その内、向かって右の像はかなり個性的で、修験者の像のようにも見えますね。

※写真
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6651

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この神社で柏手を打つべきか、打たざるべきか。(その1)

2012-12-24 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月24日(月)07時48分5秒

宮城県柴田郡大河原町に大谷不動尊神社があります。
昨日、初めて寄ってみたところ、地区の人々が正月迎えの準備で集まっていました。
一枚目の写真、鳥居の背後に二つの大きな金属製の剣が垂直に立てられています。
神社本殿の背後には裏山から水が引かれ、コケに包まれた石造の不動尊が置かれています。
また、本殿の向かって右には「延命地蔵尊」のお堂があり、向かって左には地蔵尊とカエルの石像が置かれています。

※写真
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6650
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国際日本文化研究センター Wikipedia部

2012-12-23 | その他
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月23日(日)22時03分57秒

>筆綾丸さん
日本の歴史学者が日本語で論文を書くことは、ポーランド語で経済学の論文を書くのと同じようなものかもしれないですね。
どんなにレベルが高くても、誰の目にもとまりません。
他方、海外の日本史研究者が英語で書いた論文は、概ねレベルが低いですね。
極東の歴史に興味を持つ優秀な人は基本的に中国研究に集中し、日本の歴史を研究しようと思う人はごく少数である上、欧米の歴史学の主流から離れた maverickタイプが多いように感じます。
そういう人が日本に留学し、ちょこっと勉強して英語で書いた論文は、質的には日本の歴史学者の論文よりかなり劣るのが通例ですね。
しかも、日本が従来通りの経済大国の座を維持できればともかく、日本の国力低下にともなって海外の日本史研究者の大学等におけるポストも減って、研究者の層は薄くなる一方でしょうね。
また、文部科学省は海外の研究者を呼んで行うシンポジウムなどにはお金を出すようで、その種の行事を行えば研究者間の閉鎖的な世界が少しは拡大するでしょうが、情報という観点から見た場合、せいぜいシンポジウムの結果を英文の報告書でまとめる程度しか行っていないのが普通です。
日本の歴史・文化に関する正確な情報の国際的普及を目的とする場合、日本の研究者に英文でウィキペディアに投稿させるのが一番じゃないかな、と私は思います。
例えば国際日本文化研究センターあたりにWikipedia部を設けて、きちんと予算と人員をつけてWikipediaへの英文投稿をひたすら行わせる。
そうすれば、日本語を理解できない人であっても、日本の歴史・文化に関する正確な情報に簡単にアクセスできるようになり、日本への親しみが増し、外交的にも良い影響が広がるんじゃないですかね。
費用対効果を考えると、冗談抜きでこれがベストだと思います。

国際日本文化研究センター、運営組織
http://www.nichibun.ac.jp/info/organization.html

※ポーランド語云々が唐突ですが、これは水村美苗氏の『日本語が亡びるとき』を引用された筆綾丸さんの投稿へのレスです。
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6648

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『東日本大震災津波詳細地図』

2012-12-19 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月19日(水)23時27分24秒

>筆綾丸さん
『東日本大震災津波詳細地図』上下二巻は大阪市立大学准教授の原口強氏が2011年4月13日から6月13日までの2か月をかけて被災地を実地踏査して纏めたもので、非常に価値のある業績ですが、読み物としての要素は全くないですから、復興関係の実務担当者以外にはあまり知られていないと思います。
値段も各々4500円+消費税とそれなりに高価なので、個人で持っている人は少ないでしょうね。

http://www.kokon.co.jp/h7112.htm

私は最初、昭文社の『復興支援地図』というのを使っていたのですが、こちらは衛星画像から被害状況を想像して地図に落としたもので、浸水した地域が分かるだけでした。
非常に早期に発行され、当初は充分役に立ったのですが、現地を歩いてみると地図の記載と実際の被害の食い違いが目立ちました。
詳細地図の奥付には初版発行日が2011年10月17日となってますが、私は発行直後に購入し、以後はもっぱら詳細地図を使っています。

東北電力のウェブサイトを見ると、女川原子力発電所に関して、

-------
原子力発電所は、原子炉を設置している原子炉建屋を中心に、タービン建屋、制御建屋等から構成されております。これらの主要建屋は津波対策として海抜約15mの場所(過去に経験した最大級の津波のおおよそ倍の高さ)に設置するとともに、地震対策として建築基準法の3倍の地震力に耐えるように設計されております。
http://www.tohoku-epco.co.jp/electr/genshi/gaiyo/2_c.html

とあるので、いくら平井弥之助に先見の明があったとはいえ、本当に15m近くにまでなるとは予想していなかったでしょうし、まして原子力発電所近辺の浸水高だけが低くなるなどとは思いもよらなかったでしょうね。
もちろん津波浸水高だけで全てが決まる訳ではなく、津波が防波堤を超えた場合についても相当の対策が取られていたようです。
このあたり、福島第一と比較して、きちんと調べてみたいですね。
たまたま読んだグレゴリー・クラーク氏の見解は東京電力=悪玉、東北電力=善玉と過度に構図を単純化しているように思えるので、もう少し慎重に考えて行きたいと思っています。

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女川原発について

2012-12-17 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月17日(月)20時04分1秒

グレゴリー・クラーク氏(多摩大学名誉学長)の下記記事を読んで、少しツイートしたことをこちらに転記しておきます。
重複が目立ちますが、準備作業のひとつなので、とりあえずそのままにしておきます。

-----------
東北電力女川原発のサバイバルに注目を

 福島第一原子力発電所の災害が起きて、日本は将来の原子力エネルギーの役割について再考を迫られている。ところがなぜか、その近くにある女川(おながわ)原発(宮城県)が深刻な事故を起こさなかったことついては、あまり目が向けられていない。2011年3月11日の地震と津波の際に女川で何が起こらなかったのかは、福島で何が起こったかより以上に、重要だ。
 海に面している女川原発は、東北海岸沖の震源地にかなり近かった。福島の180kmに対し、130kmである。地震と津波による破壊は女川地域の方がはるかにひどかった。女川近辺の町と石巻市では4800人の死者行方不明者が出ている。だが、そこの原発と、その3基の原子炉は、実質的な損傷はなく生き延びることができた。それどころか、付近の村から災害を逃れてきた人々の避難の場所にさえなったのである。
 女川のサバイバルは、基本的な良識の力による。そこでは、予想しうる最悪の津波に備えて、14.7メートルの海岸防壁が建てられていた。建築の基礎部分は頑強で、地震による1メートルの地盤沈下にも耐えた。地震後に訪れたIAEA調査団も、構造的損傷が見られないことに目を見張った。いくつかの電源の中には、全ての原子炉に冷却・停止用水を注入するのに支障のない程度に生き延びたものもあった。どういうわけか、地元仙台に本拠をおく東北電力株式会社が管轄するこの発電所は、エリート的東京電力が管轄する福島第一原発より見事に、災害を生き延びた。
(中略)
 女川の健在ぶりを調査したメディアの報道によると、これは元東北電力副社長の故平井弥之助の功績によるところが大きい。平井は、過去の津波記録を調査し、当初計画より高い海岸防壁を立てることを主張し、それを貫いた。それ以前には、彼は地盤の柔らかい土地の上に建てられた新潟火力発電所を、ケーソン基礎の上に建てることを主張し、1964年の新潟大地震による破壊から救っている。
(後略)
http://www.gepr.org/ja/contents/20121217-03/


平井弥之助氏の先見性は井上リサ氏のツイートで知った。
「予想しうる最悪の津波に備えて、14.7メートルの海岸防壁が建てられていた」おかげで今回は助かったのは確かなのだが、では何メートルまでだったら大丈夫だったのだろう。
15メートルでは何が起きたのか。
20メートルではどうだったのか。

女川原発の近辺で津波浸水高が15mを超えたところは寄磯・前網・鮫浦・飯子浜・野々浜・大石原浜・横浦・高白浜などザラにある。
女川町中心部や谷川浜では20mを越えている。むしろ女川原発で僅か12~13メートルで済んだことが奇跡的だったのではないか。

津波浸水高は原口・岩松『東日本大震災津波詳細地図上巻』に基づいた数字。
この本で女川原発周辺を見ると、原発直近のごく僅かな地域だけが奇跡的に15m未満で済んだように見える。
東日本大震災は平井弥之助の「予想しうる最悪の津波」すら超えた津波を惹き起こしたのではないか。

参考までに『東日本大震災津波詳細地図上巻』で牡鹿半島東岸から女川町・雄勝半島・北上川河口・南三陸町にかけての津波浸水高を南側から見て行くと、

新山浜(原発から直線距離で9㎞ほど南)で14.20、泊浜11.41、谷川浜26.08、鮫浦15.80、前網15.61、寄磯15.24、同じく寄磯の東側26.68、

(原発直近の)小屋取12.72、塚浜12.89、飯子浜15.62、野々浜17.51、大石原浜19.28、横浦15.55、高白浜16.61、小乗浜17.23、

(女川町中心部)19.69、20.07、19.13、女川浜16.79、桐ヶ崎12.58、竹浦24.77、尾浦11.44、前浜15.22、指ヶ浜15.98、水浜16.55、味噌作21.56、伊勢畑15.64、袖浜14.15、大畑18.70、荒浜10.67、船越13.60、清水20.57、名振小浜34.94(ママ)、

(北上川河口を越えて)小室27.10、小泊16.95、相川15.25、小指9.1、大指17.39、神割崎15.72、寺浜11.72、29.37、藤浜30.10、津の宮12.75、水戸辺16.35、(原発から直線距離で27㎞ほど)戸倉18.91、20.22、20.71、西戸18.38。

南三陸町の戸倉で止めたが、更に北に行っても、15m越えは当たり前、20m越えもけっこうある。
以前から漠然と思っていたのだが、こうして数字を列挙してみると、女川原発で「予想しうる最悪の津波に備えて、14.7メートルの海岸防壁が建てられていた」としても、津波がそれを越えなかったのは単なる偶然ではないか。
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山元町高瀬の仮設焼却炉

2012-12-16 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月16日(日)21時46分53秒

白鳥見学のついでに山元町高瀬の仮設焼却炉周辺にも行ってみたので、写真を載せておきます。

※写真
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6644


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白鳥の撮り直し

2012-12-16 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月16日(日)21時38分26秒

山元町の白鳥の写真、夕方だったから今一つパッとしなかったなあと思っていたところ、今朝は天気が良さそうだったので、撮り直しに行ってみました。
やはり、朝の日射しの中だと綺麗ですね。

※写真
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/6643
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うーむ。

2012-12-15 | 東北にて
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2012年12月15日(土)22時14分57秒

>筆綾丸さん
>大丈夫なのかな
何だか知的向上心が薄れてきているような感じは受けますね。
まあ、本郷さんクラスになれば今まで蓄積した知識と経験で充分やっていけるんでしょうが。

ツイッターを見ていると、『平清盛』はドラマ通の一部の人の間では非常に高い評価を得ているようですね。
私は数えるほどしか見なかったので、批評もできません。
震災後、テレビドラマに限らず、あまりフィクションに近づかない生活が続いていたのですが、来年からは少し変化しそうです。
『廃墟の美学』、探してみます。

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