投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2014年 9月29日(月)20時33分7秒
『美しい書物の話』の続きの部分も引用しておきます。
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六五三年にオズワルド王は、宣教師団としてアイオナ島からノーサンブリアに来るように、聖エイダンを招聘した。彼はホーリー・アイランド、即ちリンディスファーン島にやって来て、本拠地とした。そして、そこに彼はアイルランド様式で修道院を建設した。七〇〇年になるほんの少し前に、ここで、ノーサンブリアの彩飾写本の現存する最も見事な例であるリンディスファーン福音書が製作された。約二百五十年後、アルフレッドとティルウィンの息子であるアルドレッドが、英語でそれに注釈をつけ加えている。私たちにとって幸いなことに、彼はその書物の起源についての記録も書きのこしてくれている。それは、あの嵐の吹きすさぶ島での生活をおおい隠しているカーテンを、ほんの少しの間わきに引いてくれるのである。
リンディスファーンの教会の司教であるエド
フリスが、まず最初に神と聖カスバートと、そ
れから遺骨がこの島にあるすべての聖人たちの
ために、この書物を書いた。そして、リンディ
スファーン島の人々たちの司教であるエセルウ
ォールドが出来る限り上手に綴じて、外側にカ
バーをつけた。独居修道士のビルフリスが金属
細工師として外側の飾りを細工し、金や貴石や
金めっきされた銀、つまり合金ではない金属で
装飾をほどこした。それから、尊敬に値いしな
いもっとも哀れなる司祭であるアルドレッドが
神と聖カスバートのご加護のもと、英語で注釈
を付けたのである。
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「あの嵐の吹きすさぶ島での生活をおおい隠しているカーテンを、ほんの少しの間わきに引いてくれる」とありますが、「リンディスファーンの福音書」で最も有名な絵のひとつにマタイが福音書を書いている場面があって、そこでは「カーテンを、ほんの少しの間わきに引いて」いる様子も描かれているので、これを念頭に洒落た表現にしてみたのですかね。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Meister_des_Book_of_Lindisfarne_001.jpg
なお、前回投稿で引用した部分の最後に出てくるボビオ(ボッビオ)はウンベルト・エーコ『薔薇の名前』の舞台ですね。
検索したら種村季弘氏の書評が出てきました。
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とりあえずは僧院連続殺人ミステリーである。北イタリア、ボッビオの町にほど近い山上台地の修道院内で、7日間のうちにつぎつぎに6人の修道僧が殺害される。その謎(なぞ)ときを、さる重要会議のために修道院に立ち寄った、その名もバスカヴィルのウィリアムという、みるからにシャーロック・ホームズに縁のありそうな修道士が依頼される。・・・・
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2011072806864.html
Bobbio Abbey
http://en.wikipedia.org/wiki/Bobbio_Abbey
ショーン・コネリー主演の映画『薔薇の名前』、久しぶりに観たくなってきました。
『美しい書物の話』の続きの部分も引用しておきます。
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六五三年にオズワルド王は、宣教師団としてアイオナ島からノーサンブリアに来るように、聖エイダンを招聘した。彼はホーリー・アイランド、即ちリンディスファーン島にやって来て、本拠地とした。そして、そこに彼はアイルランド様式で修道院を建設した。七〇〇年になるほんの少し前に、ここで、ノーサンブリアの彩飾写本の現存する最も見事な例であるリンディスファーン福音書が製作された。約二百五十年後、アルフレッドとティルウィンの息子であるアルドレッドが、英語でそれに注釈をつけ加えている。私たちにとって幸いなことに、彼はその書物の起源についての記録も書きのこしてくれている。それは、あの嵐の吹きすさぶ島での生活をおおい隠しているカーテンを、ほんの少しの間わきに引いてくれるのである。
リンディスファーンの教会の司教であるエド
フリスが、まず最初に神と聖カスバートと、そ
れから遺骨がこの島にあるすべての聖人たちの
ために、この書物を書いた。そして、リンディ
スファーン島の人々たちの司教であるエセルウ
ォールドが出来る限り上手に綴じて、外側にカ
バーをつけた。独居修道士のビルフリスが金属
細工師として外側の飾りを細工し、金や貴石や
金めっきされた銀、つまり合金ではない金属で
装飾をほどこした。それから、尊敬に値いしな
いもっとも哀れなる司祭であるアルドレッドが
神と聖カスバートのご加護のもと、英語で注釈
を付けたのである。
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「あの嵐の吹きすさぶ島での生活をおおい隠しているカーテンを、ほんの少しの間わきに引いてくれる」とありますが、「リンディスファーンの福音書」で最も有名な絵のひとつにマタイが福音書を書いている場面があって、そこでは「カーテンを、ほんの少しの間わきに引いて」いる様子も描かれているので、これを念頭に洒落た表現にしてみたのですかね。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Meister_des_Book_of_Lindisfarne_001.jpg
なお、前回投稿で引用した部分の最後に出てくるボビオ(ボッビオ)はウンベルト・エーコ『薔薇の名前』の舞台ですね。
検索したら種村季弘氏の書評が出てきました。
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とりあえずは僧院連続殺人ミステリーである。北イタリア、ボッビオの町にほど近い山上台地の修道院内で、7日間のうちにつぎつぎに6人の修道僧が殺害される。その謎(なぞ)ときを、さる重要会議のために修道院に立ち寄った、その名もバスカヴィルのウィリアムという、みるからにシャーロック・ホームズに縁のありそうな修道士が依頼される。・・・・
http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2011072806864.html
Bobbio Abbey
http://en.wikipedia.org/wiki/Bobbio_Abbey
ショーン・コネリー主演の映画『薔薇の名前』、久しぶりに観たくなってきました。