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歴史学研究会と青木書店の「熟年離婚」(その1)

2017-11-17 | 歴史学研究会と歴史科学協議会
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2017年11月17日(金)11時30分19秒

学問的関心からではなく、純度100%の俗物根性に基づき『歴史学研究』956号(2017年4月)を確認してみたら、「会告」として一応の事情説明が出ていました。(p66)

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『歴史学研究』発行元変更について

 本号より『歴史学研究』の発行元を,従来の(株)青木書店から績文堂出版(株)へと変更することになりました。
 青木書店には,本誌の発行元が岩波書店から変更されるにあたって再刊にご協力いただき,同書店から発行された本誌は,230号(1959年6月)から955号(2017年3月)まで,計726号にのぼります。
また,会誌の発行だけでなく,数々の講座をはじめとした企画出版活動にもご尽力いただいており,本会は青木書店と50年以上にわたって,文字通り二人三脚で歩みをともにしてきたといえます。このたび,青木書店の今後の出版活動についての方針もあって,同書店からの本誌の発行を終えることとなりましたが,これまで同書店から出版されていた本会編集の書籍,会員が執筆した書籍等については,継続して版元となっていただきます。青木社長をはじめ,これまで本会にご助力いただいた,歴代の編集,営業の方々に心から謝意を表するとともに,引き続きご協力をお願いいたします。
 新たな発行元となる績文堂出版は,およそ70年にわたる出版活動の実績を有する出版社です。これまで歴史学関連の書籍を多く手がけてきたわけではありませんが,本会との関係では,2011年より毎年,『歴史学研究』増刊号の制作を引き受けていただいており,ここ数年は,本会が編集した単行本の制作もお願いしてきました。会誌発行にかかわる専門的な知識や経験は蓄積されており,引き続き印刷・製本をお引き受けいただく奥村印刷(株)とともに,本会としては,この上ないパートナーと確信しています。
 出版不況が喧伝される厳しい状況ではありますが,新しい態勢のもとで本誌の発行に全力を尽くしてまいる所存です。会員・読者はじめすべての関係者のみなさまのご理解とご協力をお願い申し上げます。

  2017年3月 歴史学研究会委員会
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ということで、金婚式を超え、実に58年に及ぶ歴史学研究会と青木書店の結婚生活は、青木書店側からの「性格の不一致」を理由とする離婚の申し入れを受けて話合いを重ねた結果、両者の間に生まれた子供たちの養育費負担割合についても合意が出来て、この度、無事に協議離婚が成立した訳ですね。
1932年生まれの歴史学研究会は85歳、1945年生まれの青木書店は72歳で、「文字通り二人三脚で歩みをともにしてきた」二人の間にもいつしかスキマ風が吹き、とうとう熟年離婚に至った訳ですが、歴史学研究会は離婚の協議を進める一方で、6年前から交際している績文堂出版(70歳前後)との間で再婚の準備も行なっており、績文堂出版は世間に隠れての愛人の身から、晴れて正式の妻になったということですね。
「これまで歴史学関連の書籍を多く手がけてきたわけではありませんが」に若干引っかかったので、国会図書館サイトで「績文堂」を検索してみたら、書籍は320件あって、一番古いのは山宮允『詩文研究』(大正7)ですね。
ただ、これは「績文堂出版」ではなく「績文堂」で、大正7年(1918)というと99年前ですから「およそ70年にわたる出版活動の実績」と整合性が取れません。
「績文堂」の出版物は、

大山茂昭編『ノイツアイトリツヘル』(Neuzeitlicher Lesestoff fur Mittelklassen)、1933
土方辰三編註『ワンアクトプレイズ』(Sekibundo new English texts)、1934
片岡彦一郎『最新北アルプス登山』、昭和9
吉岡呂峰編書『通俗書道入門. 漢字之部 上巻』、昭和10
本内達蔵『帝国潜水艦』、昭和18

など33冊ありますが、旧制中学や旧制高校の参考書みたいな本が多いですね。
「績文堂出版」になってからの最初の書物は、

櫻井武平『やさしい科学:ラジオ放送 』、1950

で、これを出発点とすると、確かに「およそ70年」となりますね。
以後は受験参考書みたいなものを多く出す傍ら、衛生学・生理学の教科書、『鍼灸経絡治療』『訓注銅人腧穴鍼灸図経』のような東洋医学系(?)、『琉球古武道』上中下三巻など雑多な本を出し、1980年代以降は法律書・文学書もチラホラありますね。
1985年の森滝市郎他『非核未来にむけて : 反核運動40年史』、翌86年の反核1000人委員会編『太平洋を非核の海に』以降、左翼っぽい本も多少はありますが、青木書店のように左翼思想を鮮明にしている訳でもなく、『アクチュアリーの書いた生命保険入門』(2003)『マーケティング・ノート : マーケティングをこえたマーケティングの本』(2005)『保険代理店ITハンドブック』(2005)みたいなビジネス実用書もあって、正直、何をやっているのかよく分からない出版社ですね。
歴史学研究会との蜜月関係は、果たしてどのくらい続くのでしょうか。

>筆綾丸さん
>ショスタコーヴィチの音楽
1920年代までは演劇・絵画などでもそれなりに新鮮な活動が展開されますが、スターリンの支配が強化されるにつれて、全部潰されてしまいますね。
スターリンはミュージカルが大好きで、ハリウッドに対抗すべく、金に糸目をつけずにミュージカル映画を製作させ、今でも一部のソ連ミュージカルファンから高く評価されているそうですが、個人的にはあまり見たいとは思いません。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。

ロシア風刺画 2017/11/17(金) 00:33:22
小太郎さん
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO23503600V11C17A1BC8000/
日経文化欄(11月16日)に、レーニンを対象にした面白い風刺画が掲載されています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81
暗いソ連時代の唯一の救いは、ショスタコーヴィチの音楽ではあるまいか、と思っています。
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