投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2015年 7月29日(水)12時24分23秒
早稲田実業のスーパー一年生・清宮幸太郎君の登場で、「清宮」でググると検索結果は野球ニュースで埋め尽くされてしまう今日この頃ですが、法律を学んだ人間にとって、清宮といえば何といっても憲法学者の清宮四郎(1898-1989)です。
石川健治氏はここ十数年、清宮四郎の追っかけをやっているそうで、それは清宮の公刊された論文を深く研究するという段階を遥かに超え、清宮に関係する日本・韓国等の複数の大学図書館で、清宮が研究のために収集した古今東西のあらゆる文献をひとつひとつ確認し、清宮が線を引いたり書き込みをした箇所にあたって、清宮の思考過程の全てを忠実に再現しようとする試みのようです。
殆ど清宮四郎のストーカーですね。
ま、こういう紹介の仕方をすると、そんなことをやっていて何が面白いのか、と思う人が多いでしょうが、例えばその研究成果のひとつ、「「京城」の清宮四郎―『外地法序説』への道」(『帝国日本と植民地大学』、ゆまに書房、2014)などを実際に読むと、これがまた不思議なくらい面白いんですね。
公法学界という地味な世界に生きた清宮四郎のような地味な学者が、まるで歴史の檜舞台で、歴史を動かす名優として輝いていたかのような感じさえしてきます。
ただ、もしかするとそれは清宮四郎の実像ではなく、人形遣いの名手である石川健治氏に動かされた文楽人形ではなかろうかという若干の疑いもあって、興味は尽きません。
>筆綾丸さん
>宮沢俊義の「八月革命説」を意識
これはおっしゃる通りでしょうね。
革命というと、通俗的には武器を持つ集団の蜂起や民衆暴動、旧支配階級の処刑といった暴力の連鎖を思い浮かべますが、「八月革命説」の場合、ポツダム宣言の受諾それ自体は武力・暴力の行使でも何でもない、至って静かな事務的な行為ですので、石川氏の「7月クーデター」説に通じるところがありますね。
しかし、まあ、一般論として武力行使の有無を問わない「政治レベルでの法秩序の連続性の破壊」を「法学的にはクーデター」と呼ぶのを肯定するとしても、2014年7月1日の閣議決定の場合、国家の最高権力者自身の事務的な行為であって、権力の奪取という派手さ・華やかさが全くありませんから、「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」や2.26事件あたりと比べると、ずいぶんショボいクーデターであることは否めないですね。
>刑法第77条
1995年の刑法典の現代用語化により「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者」という表現になってしまいましたが、私は昔の「政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僣窃シ其他. 朝憲ヲ紊乱スルコトヲ目的トシテ暴動ヲ為シタル者」が味わい深くて好きですね。
内乱罪の場合、「暴動」が不可欠の要件ですので、石川氏の「七月クーデター説」に従っても内乱罪は成立しませんが、石川氏が法律用語ではない「革命」と明確な法律用語の「教唆」(刑法61条)を意図的にミックスして何か物凄く重大な事態が発生しているように装うのは、なかなか「狡猾」と評価できそうですね。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
「Brutparasitismus(托卵)」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7903
「Sprachspiel と Puppenspiel」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7904
早稲田実業のスーパー一年生・清宮幸太郎君の登場で、「清宮」でググると検索結果は野球ニュースで埋め尽くされてしまう今日この頃ですが、法律を学んだ人間にとって、清宮といえば何といっても憲法学者の清宮四郎(1898-1989)です。
石川健治氏はここ十数年、清宮四郎の追っかけをやっているそうで、それは清宮の公刊された論文を深く研究するという段階を遥かに超え、清宮に関係する日本・韓国等の複数の大学図書館で、清宮が研究のために収集した古今東西のあらゆる文献をひとつひとつ確認し、清宮が線を引いたり書き込みをした箇所にあたって、清宮の思考過程の全てを忠実に再現しようとする試みのようです。
殆ど清宮四郎のストーカーですね。
ま、こういう紹介の仕方をすると、そんなことをやっていて何が面白いのか、と思う人が多いでしょうが、例えばその研究成果のひとつ、「「京城」の清宮四郎―『外地法序説』への道」(『帝国日本と植民地大学』、ゆまに書房、2014)などを実際に読むと、これがまた不思議なくらい面白いんですね。
公法学界という地味な世界に生きた清宮四郎のような地味な学者が、まるで歴史の檜舞台で、歴史を動かす名優として輝いていたかのような感じさえしてきます。
ただ、もしかするとそれは清宮四郎の実像ではなく、人形遣いの名手である石川健治氏に動かされた文楽人形ではなかろうかという若干の疑いもあって、興味は尽きません。
>筆綾丸さん
>宮沢俊義の「八月革命説」を意識
これはおっしゃる通りでしょうね。
革命というと、通俗的には武器を持つ集団の蜂起や民衆暴動、旧支配階級の処刑といった暴力の連鎖を思い浮かべますが、「八月革命説」の場合、ポツダム宣言の受諾それ自体は武力・暴力の行使でも何でもない、至って静かな事務的な行為ですので、石川氏の「7月クーデター」説に通じるところがありますね。
しかし、まあ、一般論として武力行使の有無を問わない「政治レベルでの法秩序の連続性の破壊」を「法学的にはクーデター」と呼ぶのを肯定するとしても、2014年7月1日の閣議決定の場合、国家の最高権力者自身の事務的な行為であって、権力の奪取という派手さ・華やかさが全くありませんから、「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」や2.26事件あたりと比べると、ずいぶんショボいクーデターであることは否めないですね。
>刑法第77条
1995年の刑法典の現代用語化により「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者」という表現になってしまいましたが、私は昔の「政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僣窃シ其他. 朝憲ヲ紊乱スルコトヲ目的トシテ暴動ヲ為シタル者」が味わい深くて好きですね。
内乱罪の場合、「暴動」が不可欠の要件ですので、石川氏の「七月クーデター説」に従っても内乱罪は成立しませんが、石川氏が法律用語ではない「革命」と明確な法律用語の「教唆」(刑法61条)を意図的にミックスして何か物凄く重大な事態が発生しているように装うのは、なかなか「狡猾」と評価できそうですね。
※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
「Brutparasitismus(托卵)」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7903
「Sprachspiel と Puppenspiel」
http://6925.teacup.com/kabura/bbs/7904