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0146 亀田俊和氏「佐藤進一の将軍権力二元論再論」を読む。(その1)

2024-08-19 | 鈴木小太郎チャンネル「学問空間」
第146回配信です。


一、前回配信の補足

東島誠「「幕府」論のための基礎概念序説」(『立命館文学』660、2019)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/lt/rb/660/660PDF/higashijima.pdf

亀田俊和「佐藤進一の将軍権力二元論再論─東島誠からの批判への応答を中心として─」(立教大学史学会『史苑』84巻1号、2024)
https://rikkyo.repo.nii.ac.jp/records/2000372

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はじめに
第一章 東島誠「「幕府」論のための基礎概念序説」の概要
第二章 足利直義の軍事指揮は、単なる「例外」にすぎないのか
第三章 所務沙汰権や所領安堵権を行使できるのは「第三者」のみなのか
第四章 「分析のツール」とは、具体的にいかなる研究手法なのか
おわりに
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二、「はじめに」

p31
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 しかし、以上の私見には批判も存在する。その批判は、大別して二種類に分けられるように見受けられる。一つは佐藤の研究の実証面を高く評価する立場からと、もう一つは理論面を重視する立場からである。
 前者の実証的立場からの批判は、古澤直人・近藤成一・水野智之から寄せられた。この批判は、前述の名古屋大学のシンポジウムの討論においてなされた。彼らは、佐藤の将軍権力二元論がマックス・ヴェーバーの支配原理の三元論の影響を受けていると筆者が推定したことを否定し、佐藤は古文書の実証研究から二元論を生み出したのであり、ヴェーバーの理論の影響はまったく受けていないとする。この批判に対してはすでに回答している。
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中世史研究会2019年度大会「佐藤進一の軌跡―いま、「中世国家」を問う―」
報告1「佐藤進一氏の鎌倉時代政治史研究について」近藤成一氏(50分)
報告2「中世法と中世国家」渡邉正男氏(50分)
報告3「佐藤進一氏と「王朝国家」論」遠藤珠紀氏(50分)
報告4「室町幕府と中世国家」水野智之氏(50分)

https://blog.goo.ne.jp/chuseishi/e/3b57e99cd8161a59c97d439fba6f074d

「南北朝期室町幕府研究とその法制史的意義」(『南北朝期室町幕府をめぐる諸問題』所収、国立台湾大学出版センター、2022)p67
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80 古澤直人・近藤成一・水野智之が筆者のこの見解を批判し、二元論は実証のみから生み出されたと主張する(「2019年度中世史研究会大会シンポジウム「佐藤進一の軌跡」討論記録」(『年報中世史研究』45、2020年)71‐72頁。しかし、彼らも佐藤説とヴェーバー説が完全に無関係であるとする明確な論拠は持っていないように見受けられるし、佐藤がヴェーバーの学説を知っていた可能性も否定していない。また、筆者もヴェーバーの影響については「何らかのヒント」程度のものであり、二元論の基盤は実証にあったと考えている。それより筆者は、1960年当時に類型論を行うと社会学的であると厳しく批判されたという古澤の指摘に興味を覚える。佐藤がヴェーバーに一切言及しなかったのも、この風潮と関係があるのかもしれない。
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(13)東島は、安冨や與那覇が 「歴史学で網野善彦を誤読していないのは、東島誠と桜井英治だけだ」と評価していると述べる (注 (8)所掲同氏論文二八頁) 。確かに多くの論者が網野の論じた無縁と有縁の表裏一体の関係を無視している中で、東島 ・桜井がそれに気づいた点を安富は評価している。しかし、同時に安富は東島 ・桜井がこれを無縁論の欠陥と考えた点は批判している (以上、安富 「無縁 ・マツコ ・オタク」 ( 『現代思想』 四二―一九、 二〇一五年) 一一五頁) 。また、與那覇は 「安冨によれば、東島の (筆者註 :網野学説の)解釈は狭すぎ、桜井の解釈は広すぎる」と述べている (與那覇「無縁論の空転」 ( 『東洋文化』八九、 二〇〇九年)二五〇~二五一頁) 。筆者は、安富と與那覇の見解は 「従来の中世史研究者と比較すれば東島と桜井の網野解釈は核心にせまっている (が、まだ不十分である) 」という意図だと考える。注 (7)でも指摘したが、東島の先行研究理解には誤読や速断が多いように見受けられる。なお本注の私見は、鈴木小太郎が運営するブログで述べた見解( https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/26d8495214eeb63a56d47cde4d89a744)に着想を得ている。
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安冨歩・東島誠・桜井英治のトライアングル〔2019-07-10〕
https://blog.goo.ne.jp/daikanjin/e/26d8495214eeb63a56d47cde4d89a744
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