書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「最果ての街」西村健

2017年07月28日 22時42分22秒 | 読書
「最果ての街」西村健




肉体労働者の街、「山谷」
ここ、山谷では、高齢化のため、肉体労働の口が少なくなり、ホームレスへと転落する者も多い。

その山谷の職業安定所の所長さんがこの小説の主人公。

荒くれ男たちの我儘に振り回される毎日だが、行き場を失ってここにたどり着いた労働者の苦悩がわかるだけに、彼らのために懸命に仕事をしている。

そんなある日、ホームレスの一人が殺される。
ホームレス狩りにあったようだ。
警察は、身元もわからないホームレスが殺されたとしても、悲しむ人もなく、真剣に捜査しようとはしない。
ただ、彼らの悲惨な過去の多くを見てきた所長さんにとって、単なる都会の一事件とは思えない。

結局、警察に代わって、あれこれ聞き込み捜査のまねごとをやってしまうことになる。

気が付くと、仕事もそこそこに、家庭はほとんどほったらかしにして、捜査にのめり込んでいってしまうのだった。

ホームレスの末路の哀れな物語だと思ったが、実は東日本大震災や原発事故など、骨太で社会性の強い本格ミステリーだった。大変面白い作品だと思った。
部分的には松本清張氏の小説も連想されるが、こちらの方がエンタテーメント性は強く、娯楽作品としては楽しめる要素が多い。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿