奥田さんの本は,これで5冊目.
これも面白かった.
元過激派のハチャメチャな父親に翻弄される一家.
長男で小学6年生の二郎君の視点から見た小説.
学校や警察には徹底的に反抗する父親.
学校には,修学旅行の費用が高過ぎるといって,積立金の支払いを拒否し,公安警察からはテロ事件に関して常に監視されている.
息子は息子で,不良少年といざこざを起こし,警察のやっかいになることもある.
「常識的」に見て,かなり問題を抱えた一家なのだが...
東京で大きな事件を起こした挙句,ついに一家は沖縄の石垣島のさらに南,西表島に移住することになる.
そして最南端の地でも,地域の善良な人々を巻き込んで,とんでもない事件を起こしてしまうのだ...
読者は,「どうしようもない親父だなあ!」とため息をつきつつも,なぜか目を離せなくなる.
それは,父親の裏表のない一途さ,ある意味の潔さを感じているからであり,その隠れた美点を,文句を言いながらも,長男二郎が,子供心にも理解を示していることに読者が共感するからなのだ.
西表島での事件は,金儲けをねらうリゾート開発会社に現地の推進派を加えた悪役と,それを阻止して自然を守ろうとする環境保護派との戦いを軸に進むかに思わせて,実はそれぞれどちらも,開発事業も環境保護も二の次で,本音は別にあることが判明し,話がややこしくなる.
結局,純粋な気持ちを持っているのは,二郎の親父だけということが,言わずもがなに炙り出されるという図式になっている.
この本を読むと,環境保護とか,地域振興とか,国家とか,法律とか,我々が日常頼りにしているもの,信じているものが,実はひょっとしたら単なる幻想ではないのか?という疑念が湧き上がってきて仕方ない.
この父親みたいな人間になりたいとは決して思わないが,彼みたいな人ばかりが住む国が,世界に一つくらいあってもいいのじゃないかなあ,と思ってしまう.
それにしても面白い小説だった.
他のとは別のテイストなので,奥田さんをますます好きになった.
さて,次の奥田さん本,何を読もうか?
この本を読んでからでした!
奥田さん、最高ですよね♪
それも,沖縄本島じゃなくて,離島に行きたいですね.
今夜も青い空と,珊瑚の海を想像しつつ,乾杯!