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「錨を上げよ」百田尚樹

2011年08月27日 23時05分13秒 | 読書
「錨を上げよ」百田尚樹




主人公は昭和30年大阪下町生まれの「作田又三」

考え方は純粋なんだけど,それは自分勝手な純粋さであって,他人への思いやりなど微塵もない独善的俗物なのだ.
しかもちょっと自分の意に沿わないことがあるとすぐにカッとなり,相手をやり込めるか,口で敵わないとなると暴力でねじ伏せようとする.

絶対に友達にはなりたくないタイプだ.

でも,なぜか,こいつから目が離せない.
そんな,又三の小学生時代から30歳過ぎまで疾風怒涛の青春ストーリー.

というと,きれいに聞こえるが,窃盗,密漁,人身売買,etc...ありとあらゆる悪事に手を染めつつ成長していく.成長といっても人間的な成長ではなく,うまく世の中を渡っていく能力面での成長なんだけど.

繰り返すけど,こんなやつとは絶対に知り合いになりたくない.
でも,目が離せない.

う~ん,なぜだろう.

ありていに言えば,百田さんの文章がうまいからだね.

どんな悪事だろうが,どんな目を背けたくなる場面だろうが,読者をぐいぐい引っ張っていく筆力はすさまじい.

永遠のゼロとはまったく違ったジャンルの小説だが,共通しているのは,綿密な取材と鬼気迫る臨場感

まるで,読者がやくざの抗争の矢面に立たされているかのような錯覚を覚える.

どうやってこの場面を切り抜けられるだろうかと必死に考えさせられてしまう.

そのように読者の意識を錯覚させてしまうのは著者の筆力以外の何ものでもない.
上下巻,一気読み.

本当にすごい作家ですよ.

次に読むのも百田さんと決めてます.


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