書く仕事

ご訪問ありがとう!!ミステリー小説の感想を中心に,読書,日々の雑感,映画の感想等を書き散らかしています.

「金閣寺」三島由紀夫

2014年03月09日 15時34分36秒 | 読書
「金閣寺」三島由紀夫




昭和25年に起きた金閣寺(鹿苑寺金閣)放火事件を題材に,鹿苑寺に起居する若き禅の修行僧を主人公とする物語.

彼は将来鹿苑寺の住職になってほしいという母の願いで鹿苑寺に預けられた.

今の住職も,彼の能力を買い,順調に成長すれば跡取りにしてもいいと思っている節があった.

しかし,彼の心情の内面は,大人しい(彼には吃音のコンプレックスがあった)外面とは裏腹に,常軌を逸するものがあった.

善悪を超えた,彼独自の精緻な論理が交錯し,並みの人間が感じる喜怒哀楽とは次元の違う世界を彷徨していた.

その独自の論理の行き着く果てが金閣への放火となる.

文章のもつエネルギーは凄いです.
さすがノーベル文学賞の候補に挙がるだけはある.

しかし...ですよ.

僕が「純文学」系の作品に対していつも感じる不満を,やはりこの小説にも感じる.
川端康成とか,村上春樹の小説にも似た印象を持った.つまらない.

ただし,三島の文章力には圧倒される.
ある結論を導くのにそのプロセスとなる論理展開には目を見張るものがある.
しかし,その結論は何?って思うのです.

たとえプロセスが完璧でも,そんな結論が出てくること自体がおかしいだろ?

と,思うわけです.

香り立つ文章の格調はたしかに高い.

高いけど,その結論?

という印象.

圧倒されるけど,違和感も大きい.
変な例えで恐縮ですが,誰も気が付かない,すばらしいトリックなんだけど,その動機じゃ殺人までしないだろう?という探偵小説を読んだ時の違和感に近いものも感じる.

価値観の違いですかね.

あ,でも純文学でも,芥川龍之介や武者小路実篤は好き.
価値観に共感できる.