今日はここまで。
考えてみたら、受難の絵を描くのは初めてだった。今月3日にキリストの顔だけ、「ミゼレーレ」として描いたが、あれはまだ外傷がなく、なめらかな若く美しい、しかも無垢な男の顔ともいえる。
これは確か1500年初頭の古典絵画が原資料で、全体としてはルネサンスに移行しつつあるが、キリストを覆う衣の鋭角的な襞やポーズに、中世のゴシック様式が随所に見られる。そして原典では流血の描写が細かく、私などはやや怖気付くほど丹念に描かれていた。
修道院に賛美される磔刑像は非常にリアルに残酷な受難図が再現されているそうだから、たぶんこの原典もそれに近いものだろう。だが、私はキリスト像であっても、それほどにリアルな絵を描きたくない。
そのため、視覚に鋭い刺激をくれる襞の表現などは忠実に模しているが、他はいろいろやわらげている。
今日はこれを描きながら、また一冊、母の読書をなぞった。
まだ若い研究者の著書で、この上梓の時の年齢が僅か30歳と数えて恐れ入った。
私はあと数年で還暦になるが、こうした読みやすい本で、手軽に新しい知識や教養を増やせる現代は、そういう点で良い時代と思う。
まずは、母に感謝。
全てに愛と感謝。