市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

未来3(758)月号

2015-03-16 16:30:29 | Weblog

 暗き夜の星のやうなる我なれどいのちの尽きるまで光るなれ

 介護する苦をさまざまに言ひ書けりさるることなきおめでたきひと           星河安友子





 睡蓮の葉に裂(きれ)あるを冬のわがほころびとして見て過ぎゆけり

 傘さしてかちわたりけり極月のそのうらがはにともる水無月

 ほのしろく枇杷は咲きたり僧院の出入りわづかにふゆるこの頃

 うすずみの葉陰をさして枇杷の木に入りゆくものの鳥かわかたず            岩岡詩帆


 

  
 樹の音を聞きつつなでるぱさぱさの犬の毛なみのしをれゆくまで

 穴うさぎもふかく眠らむ みづの無き月のやうなるうすみどりの目

 クレゾールで腐臭を拭ふ 炊飯の湯気がよぢれる朝がきてゐる

 夢のなかわたしは空へ投げながらひとつの石を名づけてゐたりき            木下こう




 政治への思ひはそれぞれ異なりて日本の国の行く末憂ふ

 再三の県民の意志踏みにじる豊けき辺野古の類なき海を

 万物の命育む大浦湾サンゴ群落に舞ふ熱帯魚          

 命にも換へてサンゴを守りたく海に潜りゆく海洋学者あり              新城裕子




 ものがたり皆ひめをりて人は掌の見えなき瑕にそつと触れゐつ

 つる籠の中に寂しき空ありてわれもたゆたふ冬陽の中に

 一生とふ一つうねりの中にして牡蠣のアヒージョ白ワイン今宵           後藤雪乃



 

 日本とは海に浮きたる小さき島五十四基の原発かかえ

 怪しいを変だとおもわず過ぎてゆくかまわないのかあなたはと楓

 強い支持あると思うは錯覚かとなりもとなりも無関心なり

 落ちゆかば浮上することむつかしくなれば底辺散策しよう             町田良子 




 すこしづつトランス脂肪摂りて日本の平和を暮してゐます

 たましひのほおと抜けゆく口に似る靴を買ふため脱ぎたる靴は

 冬の雨まっすぐに落ち底面のアスファルトまたは傘にて曲がる           谷とも子



 
 聚落の暮らしの破片積まれゐし校庭に声なき饒舌ありき

 身のうちに風吹きやまぬ校舎ありて解体さるるを告げられてをり

 方形に切られし窓の洞とふも 無韻なる空(クウ)にまぎれゆかなむ

 怠惰なる現実主義のおほふ国風化の灰は降りやまずあり              佐々木喜代子





 昏き実をくすの大木が降らせいる新月の刃わが首にあたりつつ

 朱の空にひとりひとりの砂時計ながるる様をましらと見あぐ

 あめつちの交わるところ坂上にあわれ人影のせり出づる見ゆ

 うら荒(さ)びてしし狩るわなを見にゆけど凍て星ひとつ空にかかれり       佐々木漕



 
 いいがたくひとが羨ましき夕暮れは内なる白き蛾を愛でている

 この扉開ければ溶けるものがある  私か君かいずれも淋し            津田雅子





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夜に踏む苺の果肉ひたひたと濃くまた静けき身のうら波も

2015-03-15 20:48:53 | Weblog


 和歌風に





 




 だいたい丁寧だったと思う。よい一日。





 感謝。























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朝の手の汀たはむれ触るるとも帆のごと隔たりかろき春かな

2015-03-15 07:04:03 | Weblog


 朝に、ふと









 今日も丁寧に、過ごそう。




 よい日でありますよう。














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星の降るきざはし登る少女ゆゑ貝殻骨も甘く羽ばたく

2015-03-14 14:09:42 | Weblog


 「ジルベルト・ブリッジ」







「カノン・エアリウム」





「さゆらもゆらに水晶虹彩」にアップしました。

「チェリー・トート・ロード」の14、15話になります。


 


 週末、お暇がおありでしたら読んでくださいませ。







 


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やはらかに腕(かひな)そよがすそれもこれも花模様して記憶にしまふ

2015-03-13 21:03:25 | Weblog


 夜にふと。









 感謝して眠る。






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思い出づくり

2015-03-13 18:25:03 | Weblog

 母からまた字が届いた。


 『海の器』を上梓する出版社の名前を書いてもらった。



 先日、娘馬鹿、と書いたけれど、この人との間にもさまざまなことがあった。理想的な母とは、たぶん言えない彼女だけれど、わたしも理想的な娘ではなかった。

 母にとっては娘馬鹿ならぬ、長年のばかむすめ、であったろう(今はどうなのさあね


 でも、今はわたしを頼って、彼女なりに思いやってくれる。このひとの後半生を覆った長い病歴と起伏を経て、このかかわりはありがたいことと思う。


 書家のような芸術性はない平凡な楷書だが、何度もお稽古して、丁寧にわたしのために書いてくれた。


 今の彼女のよい姿が現れていると見えるので、ネットにあげておきたい。


 

 知命に近づく娘としては、何かの成果を見せて病身の彼女をよろこばせてあげたいものなんだけれど、どうもね、まだまだ(う~ん



 みなさまどうぞあしからず。



 葛藤というものは、手をこまねいているだけでは時間が解決するということは、あまりないのだけれど、何かの転換があって、母とは幸せなかかわりをいただいている。


 感謝。


 高齢社会、多くの人が家族問題について悩みを抱いている世相だろうと思う。


 共感のキャパをひろげてくれるいろいろなことに、改めて感謝する。





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こちらから海への距離はただ告げぬ出会ひの言葉と同じはるけさ

2015-03-12 20:47:19 | Weblog


 海へ




 ふと。



 昨日、昔お世話になった和泉昇さんのお店に遊びに行った。七年ぶりだろうか、八年になろうか。

 いえ、昨年「絵のない絵本」に来て下さったから、そう久しぶりでもないか。


 不思議なことだ。ある時期、いっきに人生のステージが変わる。


 それはほかならぬ自分で選び取った道に違いなく、振り返っても後悔の余地などまったくない。

 長年のパートナーシップを離れ、社会に出、様々な事件に揉まれた。

 挫けそうになるたび、詩歌で心をなぐさめてきた。歌を詠むことはわたしにとって架空の物語に心を浮かべることだからいつも楽しい。


 わたしの歌はリアルではない、と再々書いたと思う。






 和泉さんは以前にまして洒脱になられ、いろいろ面白いお話をしてくださった。こまやかな気遣いをいただき、また新しい友人ができてうれしい。




 京橋のスクエアガーデン近くで写真を撮っていただき、なかなかきれいに映っているので、こちらにも乗せておこうと思う。

 「昔よりまるくなったし、よくしゃべるね」

 と和泉さんは笑った。

 そうに違いない、介護福祉は弱者をいたわるしごとだから、いつも優しい笑顔と誠実な労働で利用者さんを楽しませるよう心掛けている。

 と言っても、自分が強者だと奢っているわけではない。そんな上目線はない。


 アートオンリーだったころよりも、ほんのりとまるくなったわたしの表情が出ている画像だと思う。化粧はあんまりしてないし(うふ



 もうちょっと、もうちょっと強くなりたいなあ、と日々願って過ごしてきたこの数年だった。





 

 


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風の髪をうらがへすごと荒き日よ海の眺めはいつも素のまま

2015-03-12 16:52:13 | Weblog


 海に。



 実景ではなく、心象風景で。




 



  
 風の音が強い。
 



 

 
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どこまでもライラルスウィンはなびらと飛沫つらねて大洋を渡る

2015-03-11 11:47:20 | Weblog
   
 未来三月号に掲載の歌八首。


 ライラルスウィンという少女は、昔、まだ12,3歳のころ読んだファンタジー小説の登場人物。


 作者はパトリシア・A・マキリップで、「イルスの竪琴」三部作中の第二巻「海と炎の娘」の主要ヒロインのひとり。


 幼かったわたしはこれを夢中になって読んだ記憶がある。


 ネットで調べたら、この作家と、彼女の代表作のいくつかのシリーズは今もたくさんのファンを集め、版を重ねている。


 竪琴シリーズのヒーローはこの作品世界ではモルゴンという素朴な青年なのだが、第二巻では、初巻で行方不明になったモルゴンを探し、第一巻で彼の婚約者となったアンの王女レーデルル、妹トリスタン、そしてヘルン公国の跡継ぎ姫、ライラルスウィンが、親たちの反対を押し切って、こっそり船で捜索冒険旅行に出る。

 みんな十代そこそこの美少女だ。
 アンの王女レーデルルは世界で二番目に美しい少女と称えられ(一番は誰?)、モルゴンのやんちゃな妹トリスタンと、それから赤毛のライラは男装の勇敢な少女で、彼女はある一定の年齢に達すると、両目が金色に変わり透視の超能力者になって、現在の大公である母のあとをついでヘルン公国の主となる運命を持っている。
 ヘルン大公にとって必要な透視能力は、外敵の侵攻をいちはやく察知し、防御を計るためで、たしかこの国は小さいけれども豊かな、戦いを厭うもっとも平和な公国という設定ではなかったろうか。


 うろおぼえなので間違いがあったらごめんなさい。


 わたしは響きのいい名前が好きで、小さいころから目にしてきたいくつもの素敵な固有名詞を脳味噌にメモしている。


 ライラルスウィン、というのは、いかにも溌剌とした元気な少女をそのまま連想させる。

 少女たちの中で、わたしは勇敢でさっぱりとした気性の彼女が一番好きだった。


 読書の記憶の遠い水脈と文脈をたどれば、今書いているいくつもの物語の源にいたる。


 詩や歌も。




 掲載歌のうち画像にアップできなかった残りの二首は以下。



  海の道は空に近づく柔らかき鳩の胸して誰にも負けぬ

  雀斑を散らして潮さんざめく笑ひたきまで海は君なり


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人魚のお酒シュワリン、横浜ビールと、母の字

2015-03-10 16:07:59 | Weblog


 発見、人魚のお酒。

 仕事帰り立ち寄ったスーパーの売り場を通りすがりに、わたし好みの形、色使いのガラス瓶に目がとまる、わあ、きれい。


 福島県会津若松市末廣酒造のお酒だそうです。低アルコールで飲みやすそう。

 



 横浜ビールといっしょに早速のんでみよう。


 明日は3、11。


 被災地のみなさん、測り知れないほどの困難のなかで、頑張っている。どうかくじけないで。




 家に着いたら、母から「海の器」用のわたしの字が届いていた。


 手も目も悪くなったのに、規矩のきちんとそろった端正は壮年期そのまま。ただまろやかに可愛い字になった。




 自慢お披露目です。娘馬鹿と呼んでくださって結構よ。だって、あとどれだけ、何年どんなふうに彼女に親孝行できる?

 


 お母さん、こんなに素敵な面があったのよ、と書き残したいもん。



 家族だいじに思うひとならわかるよね!





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アルファポリス