市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

沈丁花手にたぐるごと人に近き他界もありて香りすがしき

2015-03-18 14:16:23 | Weblog
 沈丁花に。



 

 夏にまた一人芝居をすることにした。



 シェリダン・レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」


 これは映画化もされている名作だが、たぶん女優一人で演じられたことはないだろう。


 長編原作の流麗な抒情、叙景をできるだけ生かしたいので、わたしが書き下ろした芝居も長くなる。



 夏の夜の夢物語。ただおどろおどろしいのではなく、ファニュの作品にはどれも古典的なリリシズムが濃い。
 

 他界からしのびよる幽霊や妖精たちに、人間である作者がplusの感情移入をしているので、恐怖の描写も柔らかい。


 柔らかい、とはわたしがよく使う表現だが、そうとしか言いようがない。





 ファニュは、勧善懲悪の定石通りに、吸血鬼カーミラを最後に葬り去ってしまうのだが、そのあたりの彼の筆致には彼女を惜しむような耽美が滲む。



 正体のない、夕暮れのように繊細な、そして恐ろしくうるわしい、魅力的なカーミラを演じる。



 貌も体もぴかぴかだった若いころ、こんな大胆な言葉は言えなかった。

 きっと、青春という地平から遠く離れた年齢にもなり、ささやかながら痛い経験を重ねたので、開き直って言えるのだろう。

 


 冴え冴えとした眼で「永遠の少女」なるものを見つめ、表現するつもりです。








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