市の星月夜日記

織江市の短歌、エッセイ

放射能も静けき雨よ春なれどあだおろそかの抒情みにくし

2015-03-16 17:01:07 | Weblog


 未来を読んでいて、いくたりかの方の原発、基地をテーマにした歌に心動かされる。


 私も少しは社会に目を向けて、原発反対、という意志表示をしているけれど、短歌にそれをうたうことはなかなかできない。


 かるがるしく歌ってよいものだろうか、ほんとうに痛みや苦しみを共感できるのだろうか、と迷うからだ。



 やすっぽい表現で、正義に加担するふりなんかできない。



 勇気を表現するのは勇気がいる。




 そうだ、先日とてもすてきな言葉を聞いた。若い画家の女の子だった。


「愛より強いものってなんだと思いますか?」と、彼女。

「何かなあ」と、私。

「それはね、勇気なんです。愛より強いものは勇気」



 その場にいた数人は、みな大きく納得したようだった。






 愛より強いものは勇気。愛と勇気がともだちさ、とアンパンマン。




 だけど、意志表示しないひとを、わたしは非難しない。


 自分が快適に生きるために守らなければならない世界がある、それも当然だから。

 自分をだいじにできないひとに他者を庇うことはできない。



 自分のだいじな世界を破壊されたひとたちの嘆きに、わたしは、たぶん、おそるおそる勇気を絞って、応援している。


 それだけ。




 傘を持たなかった仕事帰り、しとしと降る春雨に濡れながら、この雨にも何ミリベクレルのナントカが混じっているのかな、などと考えながら自転車を漕いだ。


 免疫能力を高めるのが、これからの長生きの秘訣だそうだから、おいしい、栄養バランスのよい夕ご飯を作ろう。




 感謝。



 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

未来3(758)月号

2015-03-16 16:30:29 | Weblog

 暗き夜の星のやうなる我なれどいのちの尽きるまで光るなれ

 介護する苦をさまざまに言ひ書けりさるることなきおめでたきひと           星河安友子





 睡蓮の葉に裂(きれ)あるを冬のわがほころびとして見て過ぎゆけり

 傘さしてかちわたりけり極月のそのうらがはにともる水無月

 ほのしろく枇杷は咲きたり僧院の出入りわづかにふゆるこの頃

 うすずみの葉陰をさして枇杷の木に入りゆくものの鳥かわかたず            岩岡詩帆


 

  
 樹の音を聞きつつなでるぱさぱさの犬の毛なみのしをれゆくまで

 穴うさぎもふかく眠らむ みづの無き月のやうなるうすみどりの目

 クレゾールで腐臭を拭ふ 炊飯の湯気がよぢれる朝がきてゐる

 夢のなかわたしは空へ投げながらひとつの石を名づけてゐたりき            木下こう




 政治への思ひはそれぞれ異なりて日本の国の行く末憂ふ

 再三の県民の意志踏みにじる豊けき辺野古の類なき海を

 万物の命育む大浦湾サンゴ群落に舞ふ熱帯魚          

 命にも換へてサンゴを守りたく海に潜りゆく海洋学者あり              新城裕子




 ものがたり皆ひめをりて人は掌の見えなき瑕にそつと触れゐつ

 つる籠の中に寂しき空ありてわれもたゆたふ冬陽の中に

 一生とふ一つうねりの中にして牡蠣のアヒージョ白ワイン今宵           後藤雪乃



 

 日本とは海に浮きたる小さき島五十四基の原発かかえ

 怪しいを変だとおもわず過ぎてゆくかまわないのかあなたはと楓

 強い支持あると思うは錯覚かとなりもとなりも無関心なり

 落ちゆかば浮上することむつかしくなれば底辺散策しよう             町田良子 




 すこしづつトランス脂肪摂りて日本の平和を暮してゐます

 たましひのほおと抜けゆく口に似る靴を買ふため脱ぎたる靴は

 冬の雨まっすぐに落ち底面のアスファルトまたは傘にて曲がる           谷とも子



 
 聚落の暮らしの破片積まれゐし校庭に声なき饒舌ありき

 身のうちに風吹きやまぬ校舎ありて解体さるるを告げられてをり

 方形に切られし窓の洞とふも 無韻なる空(クウ)にまぎれゆかなむ

 怠惰なる現実主義のおほふ国風化の灰は降りやまずあり              佐々木喜代子





 昏き実をくすの大木が降らせいる新月の刃わが首にあたりつつ

 朱の空にひとりひとりの砂時計ながるる様をましらと見あぐ

 あめつちの交わるところ坂上にあわれ人影のせり出づる見ゆ

 うら荒(さ)びてしし狩るわなを見にゆけど凍て星ひとつ空にかかれり       佐々木漕



 
 いいがたくひとが羨ましき夕暮れは内なる白き蛾を愛でている

 この扉開ければ溶けるものがある  私か君かいずれも淋し            津田雅子





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルファポリス