雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

こころより逸れゆくうたも背すじ伸ばし夜のうらおもてひたと見詰める

2008-10-27 19:47:13 | Weblog


 夜に。


 うたいえないものもある。



 もどかしさ。



 上橋さんの「守り人」シリーズ、いろいろこころに残る言葉がある。

 『闇の守り人』の冒頭の光景はうつくしい。


 みはるかす山の高み、カンバルへ通じる洞窟の入り口の脇、滝の上に立ったバルサがつぶやく。


 からだの傷は時がたてば癒える。だが、心の底についた傷は、忘れようとすればするほど、深くなってゆくものだ。それを癒す方法はただひとつ……きちんと、その傷を見つめるしかない。


 ……。


 これは、相当にこわい台詞だとおもう。児童だけを読者対象にして書ける言葉ではない。

 見つめきることができるなら、過去のいたみを現在の自分を生かすエネルギーに変えることができるということだろうか。

 バルサはそのように生きている。

 こんな魅力的なキャラクターを造型した上橋さんも、きっと素敵な女性にちがいない。

 
 あこがれる。






 







 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

うごきやまぬ沼あるごとし水仙の新芽抜くふゆの眸(まみ)よかげるな

2008-10-27 16:50:37 | Weblog



 野水仙の群落を見て。


 まだつぼみの気配は見えない。




 季節がうごいてゆく。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

彼(か)の掌(て)よりBachは獣皮の匂ひして秋冬の朝くろきカザルス

2008-10-27 07:55:52 | Weblog


 カザルスのBach無伴奏チェロ組曲から。


 モノラル録音なのに(だから)、これを聴くたび、その重厚な音質に圧倒される。

 機関車みたいだ。


 音の裏表充実している。


 すごいなあ。どこからどこまでがっしりと弾きぬいて、ぜんぜん息切れしない。


 マエストロって、こういうことなんだろう。


 


 

 今日も一日、安定したおつとめができますように。










 
 



 

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

笛の音(ね)のはなたれて空は遠きこと未完なるゆゑうたひ続ける

2008-10-26 14:40:11 | Weblog


 今日、オープンチャーチ。


 
 ちょっとした御奉仕のあと、大聖堂で演奏を聴いた。やっぱり実音はいいな。


 堂宇に音が反響してひびきがひびきをうむ。それに、どれも好きな曲だった。




 たかい天井へ音と声とが昇っていった。


 空は、建築のさらに向こうにある。



 はるか遠くに。はてしなく高い。


 Pie Jesus……初冬。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

胸に置くもろ手ゆびより晩秋のつめたさ君のこころはどこか

2008-10-25 21:50:56 | Weblog

 夜、さむい。


 思ったまま。


 不特定のきみ。


 わたしであるかもしれない、きみ。


 つめたい手に添うてくる、もうひとりの手のうれしい季節になる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

石蕗(つわぶき)のひた黄かげらぬあかるさよ無縁霜月ほとけに捧げむ

2008-10-25 16:50:33 | Weblog


 山辺で、つわぶきを見て。

 
 晩秋はもう、初冬に向かう。



 この花のあかるさはさびしい。アワダチソウよりさらに。

 澄んだ黄色なのに。



 その檸檬いろが、周囲の落葉を、際立たせるよう。






 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

からだひとつ隙間のこせり朝に立つたまごの殻を音なく踏みて

2008-10-25 08:15:00 | Weblog
 朝に











コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なかば浮かぶ小夜の夢の巣うつそみよ今は人妻ふっと微笑(わら)ひぬ

2008-10-24 20:36:38 | Weblog


 宇宙の宇は、空間。

 宙は時間、という意味だそうだ。


 時間と空間。夜のうつそみ。



 うたのことを考えていると、自分がどこに、どの時間にいるのか忘れてしまう。


 一日の密度が濃くてながい。いいことだと思う。


 せわしない日々の中、息抜きのように詠う時間だけが、ぽっかりと現実に浮かぶ別な宇宙のように、違う軌道をゆく。



 明日もいそがしい。着陸しなくては、とどこかで自分の手綱をしぼる。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

おのづから呼吸(いき)あたたかし手の記憶触れざれど残るまなざしのため

2008-10-24 16:28:24 | Weblog


 雨。


 大気のつめたさに、体温のぬくもりが際立ってくる秋冬。



 ふとすれちがってゆくひとびと。言葉もかわさずに。





コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋は雨にうしおとなりて満ちぬらむ思慕やまずさびしさもうつくしきまま

2008-10-24 08:05:56 | Weblog
 朝に。



 しばらく海を見ていない。こんな朝の雨に、海はどんな表情をしているだろう。




 雨の日、水平線は空に溶けて見えないことがあった。


 視界はるか、波の音だけがはてしなくつらなってゆくような景色を、何度か見た。


 晩秋。雨霧がしぶく。



 今日自転車は使えないな……。






 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルファポリス