炎夏の狂都(続々々)

 
 リンツ近郊には、ナチスのマウトハウゼン強制収容所がある。世界負の遺産めぐりを志す相棒は、強制収容所にはすべからく訪れることをおのれの義務と心得ている。
 花崗岩採掘の強制労働に従事させられる囚人たちが、丘上の石切り場へと続く“死の階段”で、石とともに転げ落とされて殺された、という解説を読んで、相棒は昨夜まで、何が何でも見に行かなくては、とはりきっていた。

 が、マウトハウゼンはアクセスが悪い上に、相棒の体調不良も手伝って、結局、「また今度、機会があったらでいいか」と日和ってしまった。
 万難を排してマウトハウゼンを選択すべきだった。このことが、リンツに対する私たちの評価を決定づけた。

 まずは、昨日入れなかった新大聖堂へ。ここにもブルックナーのプレートがあるのを、相棒が見つける。
 それから炎天下のなか、小高い丘上に建つリンツ城へ。遠足に来た子供たちの集団に遭遇。横を通り過ぎながら、子供たちは次々と、私たちに向かって合掌してお辞儀をする。ヨーロッパでは、この「合掌してお辞儀」が、日本人に対する挨拶だと勘違いされている。

 城の丘から、一気にドナウ河畔へと降り、レントス美術館へ。ガイドブックの案内には、クリムトやシーレ、ココシュカらを初めとするオーストリアの現代美術を所蔵、とあったので、多くはなくてもそれなりのものがある、とごく普通に考えたのだが、失敗だった。

 To be continued...

 画像は、リンツ、リンツ城門。

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