炎夏の狂都(続々々々)

 
 まず、企画展が自動車の展示だった。これが、斬新だとか奇抜だとかいう形容を付したアートとして、美術館で客から金を取って展示している、という点で、センスとプライドを疑う。
 それから常設展だが、クリムトやシーレなど、それほどの秀作でも意欲作でもない作品が、それぞれ1、2点あるだけで、あとはクラシック・モダンとして鑑賞に耐え得る油彩画が一室分ほど。他は、モダン・アートという名のガラクタばかりだった。

 ならば、クリムトやシーレを目玉のように言ってくれないのが、良心的というものだ。もちろん、オーストリア第三の都市の美術館なのだから、それなりの絵はある。が、主要には無節操なコンテンポラリー作品と特別展だ。
 それならそれで、肩身狭くやっていればいいものを、アートとしての自負をもってやるのだから始末が悪い。そこを、合間合間にクリムトやシーレで誤魔化して取り繕っているので、むかついてくる。

 リンツはヒトラーにとって故郷も同然の、芸術三昧の青春を謳歌した街だった。ヒトラーは愛するリンツを、オーストリアの「総統都市」として、ドナウ川沿いに美術館や博物館を連ねる理想の芸術都市にすべく、計画していたという。そこに飾られるのはもちろん、占領地から押収した美術品だ。
 私たちがレントス美術館から出てきた頃には、ドナウ川岸に立ち並ぶガラスの文化施設群が、ヒトラーが最期の日まで執着し続けたその理想を、体現したもののように映った。

 To be continued...

 画像は、リンツ、旧市街。

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