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「不妊」治療

2013年05月17日 | 詠む

「不妊」治療「再生」医療...どこへいく 「生殖技術」柘植あずみ本

生殖技術  不妊治療と再生医療は社会に何をもたらすか」 柘植あずみ みすず書房

わが母校埼玉大学の後輩。優秀な科学者だと思っていたが、本書は飛び切りの出来

>日本で生殖補助医療により生まれる子どもは約2万人、1年間に生まれる子どものおよそ2パーセントをしめる。

この国と海外の生殖技術の進展と背景を、社会構造や文化をも含めて俯瞰する。

80年代に「試験管の中の女」という優れた報告書があったが、いまを鋭く抉っているのが本書。

----- 目 次 -----

はじめに
体外に存在する卵子/人体実験、情報と自己決定/ささやかな欲望を開拓する市場/
自己身体からの疎外/マイノリティであることの困難

第1章
卵子・胚・胎児の資源化――何が起きようとしているのか

個人的体験/体外受精が拓いた材料化・資源化/卵子・受精卵の使い途/
死亡胎児は廃棄物か資源か/インフォームド・コンセントの重要性と限界/
材料化・資源化がもたらす不安

第2章
生殖技術と商品化――精子・卵子の売買、代理出産をめぐって

第三者が関わる生殖技術の現状/何を規制するのか、なぜ規制するのか/
「身体の商品化」再考/グローバル市場で取引される精子と卵子/
精子や卵子の授受についての考え方の違い/労働に対する報酬という言説/
トラブル防止の仕掛け/利他的行為への評価と自尊心

第3章
先端技術が「受容」されるとき――再生医療研究の事例から

再生医学という「希望」/人のES細胞研究の開始まで/ES細胞研究に対する賛否/
研究材料としての受精卵の歴史/「ヒト胚」という存在/胚への想い

第4章
再生医療の「倫理」問題

ES細胞の「倫理」/iPS細胞は倫理的か/「希望」の再考

第5章
生殖技術と女性の身体のあいだ

不妊であることの社会的意味/スティグマとしての不妊/
「家」という圧力/「母性」という内圧/「女」という身体/
「自然な身体」モデルと不妊/自己身体からの疎外/「不妊」の再解釈の試み

第6章
生殖補助医療から見る日本の家族観――AIDをめぐる政治・倫理・社会

日本における提供精子による人工授精をめぐる論争/規制を必要とした契機/
AIDによって子どもをもつ理由/「出自を知る権利」の主張/
ドナーのことを知りたい理由/「出自を知る権利」に関する議論/
伝統的家族の強化か、新しい家族の創造か/「血のつながり」というイデオロギー/
不妊への視線とその解消

第7章
卵子を提供する行為を考える――利他と利己

卵子提供をめぐる日本の状況/提供卵子によって子どもをもちたいと思う理由/
提供の動機――利他か利己か/卵子とは何か/女性の連帯か分断か

第8章
生殖における女性の自己決定権――半世紀の議論の成熟と課題

自己決定権とは何か/人工妊娠中絶の自己決定権/「自己決定権」概念の拡散と疑義/
「自己」と「自己身体」の関係/自己決定権のこれから

第9章
医師の論理と患者の論理――医療化した生殖と価値

痛みや不快感、リスクについての認識の差/不妊治療の限界についての認識/
情報とコミュニケーション/選択しないことが得な文化/
医師が作り出す欲望と欲望が作り出す医療

おわりに
「子どもが欲しい」と「不妊でありたくない」を見極める/
「あきらめる」選択が困難な時代/未来の家族の設計図/
「利他的行為」を要請する医療技術/どんな社会を築いていくのか

--------- 備忘メモ ------------------------

92 韓国で千人の女たちが卵子提供し「聖なる女性」と称賛された。男は国家のために兵役、女は...。

94 国家間の熾烈な科学技術論争、知的所有権の先取争いを背景に、人体の資源化を推し進めている新自由主義と先端医療技術研究についても議論される必要がある。しかり。 そうだ、新自由主義だ。

112 手術の必要がないのに、偽りの病名を付されて子宮を摘出された事件。富士見産婦人科病院。医師たちは不起訴。

194 抵抗の概念であった自己決定権には決定の方向に自由度があった。現在は、医療における「選択」、人生における「選択」

201 排卵誘発剤。副作用の苦しみを医師に訴えても「それくらいしないと妊娠できないから仕方がない」

261 みすず編集部の鈴木英果。あれ、「ライファーズ 罪に向きあう坂上香・本の担当者と同じひとだ。

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