「重信房子がいた時代」
力作なる 由井りょう子
重信房子ねえさまが二十年の刑期を終えて、五月に出所。癌を乗り越え、よくぞ生還。拍手。
それに合わせて上梓された「戦士たちの記録 パレスチナに生きる」幻冬舎、とても興味ひかれるのが二冊目の歌集「暁の星」皓星社。
どちらも人気本ゆえ、図書館リクエストしても全然こないまま半年が過ぎてしまった。しくしく。
そこで「重信房子がいた時代」という本を読んだ。明治大学の後輩というか友人の由井りょう子のルポルタージュ。
「時代」というので、××××とか××××とか特殊用語がでてきたらどうしよう。生き様!?とか苦手。左翼アレルギーがある私にはどうかなと思ったが、読みやすかった。若いひとにも是非すすめたい。
戦後民主主義って、こうだったんだ。お父さんが素敵。家族みんな仲良し。貧乏だけど愛情に包まれて育った房子さん。
さて当時の明大生に聞くと「救対だよ」という答えがいちばん多いんだって。「赤チンねえちゃんだよ」という上級生もいる。
六八年「十八」羽田では、スーツケースに応急処置用の包帯やマーキュロを入れて運んだ。新婚旅行としか見えないスーツ姿で、ごく自然に検問を突破した(微笑)。
怪我をした多数を見て、道路公団のマイクロバスを止め「怪我人を運んで」と頼み込み、なんと治療費カンパまで貰った。病院で治療を受けた学生の中に知り合いはひとりもいないし、明治の学生もいなかった。セクトも違う。しかし、こうした連帯行動は当然のことだった。
他の場面では病院から救急車が駆けつけても某党派しか治療しないという露骨な展開もあった。そんなとき「選別して治療するなんて、許せない」と、まなじりを決して負傷者の間を飛び回った房子さん。
リッダ闘争に寄せて、父は「テルアビブ空港三烈士を憶う」という漢詩を作る。難しくて良くわからないけど、民族主義者の本懐なのかなあ。
本書には、ひとつ歌が載っている。「車窓より流れる黄金色の稲架(はさ)見つめ行き直そうと誓いし霜月」逮捕された大阪から東京へ連行される新幹線の車窓から見た光景の心情だと。
また巻末には「嘘」という題の小説。高校三年生のときの作品。
素の彼女が、いろんなとこにあふれている。
★「重信房子がいた時代・増補版」由井りょう子 世界書院
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