カナリアな日々

百姓になって15年目。補習塾カナリア舎はフェードアウト中。小麦、蕎麦、大豆などを作っています。

今日一日生き抜いたことへ、拍手

2007-11-02 23:47:19 | つれづれなる想い

「アプローズ」    覚和歌子



毎日の晩ごはんのごちそうに 拍手
食うや食わずの暮らしは ごはんとおしんこだけでもおいしくて 拍手


道端の犬のうんこに よくまあこんなに出たもんだと 拍手
それをデートのときしかも 新しい革靴で踏んづけて
めったにできない経験だから 拍手


生まれてくる あかんぼうに 拍手
生まれてすぐ死んだ弟に
わざわざ苦労しなくってすんでよかったと 拍手
九十で死んだおじいちゃんに
こんな世の中に九十年もよく生きたと 拍手


大天才の芸術作品に おおブラボーと 拍手
迷いの尽きない芸術家には 長い旅の楽しみに 拍手


できたお方だと 拍手
みえっぱりの 見栄を切る勇気に 拍手
ぐちのこぼしやには 見栄をはらない素直さに 拍手


結婚の決まった娘に 拍手
行かず後家の娘は その気高い誇りに 拍手


ぴちぴちと健康な身体に 拍手
抱え込んだ病気には 乗り越えられる力を試されていて 拍手
不治の病には たった今生きているという そのことの眩しさに 拍手


善人は そのまんまで救われて 拍手
悪人は その罪深さのせいで なおのこと救われる余地があって 拍手


垣根に咲いた赤い寒椿の その赤さに 拍手
枯れ落ちた赤い寒椿から 地面にその種がこぼれて 拍手                             

                       



   ~一編の詩があなたを強く抱きしめる時がある(水内喜久雄・編 PHP)より~

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