団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

漏水率

2021年10月01日 | Weblog

私は物心ついてからこのかた、日本に住むかぎり、水で不自由を感じたことがない。これまでにカナダ、アメリカ、ネパール、セネガル、旧ユーゴスラビア、クロアチア、チュニジア、ロシアで暮らした。ネパールとセネガルでは飲料水、生活用水を確保するのに苦労した。ネパールではモンスーン季ほぼ毎日雨の日が、それも土砂降りで続いた。千年に一度という大雨に遭い、住んでいたカトマンズが一時孤立したことがあった。それほど雨量があっても、水道の配水は、一日にほんの数時間しかなかった。雨が降っても水不足という理解しがたい現象だった。

 

 この謎は、カトマンズに派遣されてきていたJICAの水道関係の専門家の説明してもらって解けた。カトマンズの水道の配水設備、特に水道管が老朽化していて、漏水率が高く水道の蛇口に届くまでに、相当量の水が地中に漏れ出してしまうのだという。水道水は、送水元である程度圧力を加えて押し出す。そうすることによって水道管の中をスムーズに通り抜けて蛇口に届く。水道管の隙間などから地中の汚水などが水道管に入り込むのも防げる。水道管にわずかな隙間を設けて、圧力のかかった水を漏水させているので100%漏れない水道配管は存在しない。

 

 カトマンズでは日本のODAで水道を整備する事業を進めた。最新の水道の送水設備を完成させて、いざ送水を開始すると、市内のいたるところで、水道管が破裂してしまった。圧力がかかった水が、老朽化した水道管を壊した。送水設備は運転中止となった。課題は水道管の取り替えに移った。

 

 漏水は、ネパールだけでなくどこの国でも問題になっている。統計によるとミャンマーのヤンゴン66%、インドのデリー40~50%、マレーシアのクアラルンプール34%、ベトナムの30%、タイのバンコック23%、台湾の台北18%、中国の北京17%、英国のロンドン26.5%、アメリカのニューヨーク8.5%とある。一方東京は3%で、世界トップクラスの水道技術を持つドイツのベルリン4%より低い数字をだしている。広島・札幌・名古屋・さいたま市はなんと2%台というから驚きである。さらに福岡市は、1.8%という驚異的な漏水率。

 

 私は海外生活で電気が停電しても、ガスが止まっても、ガソリンが買えなくても、絶対に必要なのは水と食料だと経験した。日本は水に関して恵まれている。その上漏水率が世界で最も低い。これほど水に恵まれた日本だが、私たちは果たして水を大切にしているだろうか。私は水道の蛇口から綺麗な美味しい水が勢いよくとびだしてくるのを見るたびに、ネパールの汚れた水(写真:水不足で浴槽に貯めた汚れた水道水)や水道が長期間止まり、業者から水を購入したことを思い出す。(写真:狭い道に大型のタンク車が来て水をタンクに入れている)

 

 水が豊富なこと、水が清潔であること、水が美味しいことは、幸福なことである。

 


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