団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

夫婦 二人だけの世界

2014年11月27日 | Weblog

  相良直美が歌った『世界は二人のために』(作詞 山上路夫 作曲 いずみたく)をこの歳になって想い出した。2番の歌詞に年齢のせいか惹かれる。「♪空 あなたとあおぐ 道 あなたと歩く 海 あなたと見つめ 丘 あなたと登る♪」とある。近ごろの私と妻の日常に聞こえる。付き添いが要る。一日24時間のうち自分以外の人間と共に過ごす時間は妻が98%を占める気がする。

 私は最初の結婚を9年で終わらせた。その後長男長女の子育てで13年間やもめ暮らし。44歳で縁あって再婚できた。『世界は二人のために』の歌詞1番の毎日だった。再婚してすぐ妻の海外勤務に配偶者という立場で赴き12年間日本から離れた。途中チュニジアで狭心症になり、私だけ帰国して心臓バイパス手術を受けた。2002年のことだった。死を意識したが、最新医学のお蔭で助かった。そして2005年日本に帰国して10年が過ぎた。再婚して23年たった。心臓バイパス手術以後、オマケの人生と感謝して手術前とは違った価値観を持って生きている。

  老化は進む。車の運転も自信がなくなってきた。特にバックがうまくいかない。物忘れも激しい。眼が疲れやすくテレビを観るのが苦痛である。座って静かにしているとすぐ寝入ってしまう。体の開口部のすべての筋肉がゆるんできていて勝手にチョロリンコと液体や空気が漏れ出る傾向が強い。食欲も細くなった。肉類や脂っこい食べ物に箸がむかない。ご飯も茶碗に半分で十分である。行きたいところも買いたいものもない。二人の子どもにも孫たちにも会えない。彼らは仕事と子育てと学校生活と学校外活動に追われている。友人知人とも以前ほど頻繁に行き来できない。たまに会えれば大きな喜びではしゃいでしまう。

  私の日課はシンプルである。朝5時に起きて朝食を食べ出勤する妻を駅に車で送る。7時から夕方6時30分までは一人で留守番をする。大時計のネジを巻く。本を読み、書き物をして机に座って時間を過ごす。昼食はいたって簡単。好きなシリアルに牛乳と蜂蜜をかけて食べる。トマトを必ず一個食べる。午後は昼寝をする。長さはまちまち。4時まで読んだり書いたりする。4時からラジオを5時30分まで聴く。その後夕飯の支度をする。6時18分に家を出て車で妻を迎えに駅へ行く。夕食から寝るまでは一日のうちで一番好きな時間である。妻が話し私が聞く。私が話して妻が聞く。9時からは猛烈な睡魔に襲われる。

 ゲーテ曰く「人生で一番楽しいのは誰にも解らない二人だけの言葉で、誰にも分からないことを語り合っている時だ」 私たち二人の世間は知れたものだ。誰にも注目されていない。二人だけの時間がたっぷりあることに感謝する。私は過去にいろいろな人に迷惑をかけ、酷いことを言い、騙し、悪いことをしてきた。過去は変えられない。前を向いて、残りの時間は妻と今の調子で“二人だけのゲーテが言う世界”を保ち最後を迎えられればと願っている。“終わり良ければすべて良し”と自分に勝手に言い聞かせる。

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