団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

鯉のぼり

2020年04月13日 | Weblog

  週末がくると一息つける。なぜなら月曜から金曜まで妻は、出勤を続けているからである。4月7日に政府は緊急事態宣言を発令した。外出を控えて人との接触を8割減らし1カ月で感染者数を減らすのが目標だという。医療関係者と警察は含まれていない。イタリアでは4月11日時点で医師が105人新型コロナウイルスに感染して死亡したという。尊い犠牲だ。日本国内でも病院の中での感染が増加している。妻が勤務している病院は、感染症関係ではない。けれど新型コロナウイルスの感染は、どこでも起こり得る。病院に緊急事態宣言による外出自粛要請や在宅勤務は適用されない。私が年齢と持病のため、自宅にこもっている。一方妻は東京へ出入りして新型コロナウイルスを持ち込んできているかも知れない。ウイルスを目で見ることはできない。

 土曜日、朝から家のドアの取っ手やスイッチ類など私たちの手が触れるものを妻と二人でアルコール消毒した。部屋の換気もした。

  テレビは映画以外なるべく観ないようにしている。ネットのニュースも新型コロナウイルス関連は見ない。妄想を掻き立てるだけだ。テレビもネットも私を鬱にさせるだけ。7日の安倍首相の緊急事態宣言も失望した。記者会見した後、国民に詳しく説明するとのことだったので続けて観た。何のことはない。同じことの繰り返し。それに長過ぎ。どうしてこんなに気持ちが伝わらないのだろう。時間の無駄だった。

  高齢者で持病を持つ私は、免疫力を高めなくてはならない。毎日5千歩、20分の体操を続けている。天気が良ければ、外に出て歩く。悪ければ家の中でウォーキングマシンを使う。散歩とウォーキングマシンでは、必ずロングブレスをする。3秒吸って7秒で強く吐き出す。11日土曜日妻と散歩に出た。私はロングブレスをしながら歩くが妻は、私に話しかけてばかり。妻の会話に質問が多い。妻の質問は、数字に関するものが多い。私は数字に弱く、またいい加減なので、多い少ないだけで済ませてしまえる。そんなちぐはぐな会話をしていると青い空に吹き流し、お父さん鯉、お母さん鯉、子供の鯉が強い風にたなびいているのを見つけた。

  私が子供の頃、家に鯉のぼりはなかった。父親が私に話してくれたことを今でも忘れない。「鯉のぼりは武士階級だった金持ちしか上げられない。鯉のぼりを上げて、うちには跡取りがいるぞとまわりに知らせるのだ」 私は自分の家が鯉のぼりを上げられない家庭だと知った。私の家の周りで鯉のぼりを上がっていた家はなかった。皆貧しく鯉のぼりどころではなかったのだろう。今は違う。多くの家庭で鯉のぼりを掲げる。それだけ世の中が豊かになったのだ。鯉のぼりの鯉もずいぶん派手な色の物が多い。その分、観る者にとっては、見ごたえがある。私は鯉のぼりをただの日本の風物だと素直に思える。まだ4月の初めだと言うのに、なぜこの家ではこんない早く鯉のぼりをあげたのだろうか。私は想像した。おそらくこの新型コロナウイルスの恐怖が日本を被っている。だから鯉のぼりに終息の祈りを込めたのかもしれないと。カメラで写真を撮っていると妻はすでにずいぶん前方を歩いていた。

  鯉のぼりでも何でもいい。東京に通勤しなければならない妻を新型コロナウイルス感染から守ってください。

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