団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

カワカンシ

2024年05月31日 | Weblog

  ネットのニュースに「米カリフォルニア州のビーチで昨年、ある親子が潮干狩りを楽しんでいた。母親は子どもたちが貝殻を拾っていただけと思い込んでいたが、実際には生きているハマグリを集めていたことが分かった。5人の子どもが合計72個のハマグリを許可なく採ったことで8万8000ドル、日本円にして1千万円以上の罰金を請求されてしまった。母親は「事前に子どもたちに教えておくべきだった」と後悔しているという。米ニュースメディア『New York Post』などが伝えた。」と出ていた。

 今から40年くらい前に、アメリカのワシントン州のPuget Sound(ピュージェット湾)でDungeness Crab(ダンジネスクラブ捕りに友人一家と出かけたことがある。引き潮の遠浅で海草が繁茂する海にこのカニがいる。捕獲する前に、注意を受けた。サイズは6.25インチ(約15.9センチ)以上でなければいけない。捕ることができるのはオスのみ。胸まであるゴムの長靴(waders=胴付き長靴)をはいて海に入った。海草の茂みの中を、足先でカニを探しながら進む。カニらしきモノを感じたら、足でカニを押さえる。手でカニを捕まえる。オスかメスを判別。オスなら、持っている物差しでサイズを計る。当時で一人一日5匹までだったが、捕獲数は、多くても持ち帰られる条件を満たすカニは3匹だけだった。シアトルへの帰路、ワシントン州魚類野生生物局のパトロール車に停止させられた。監視員は、カニの性別を調べ、精密な物差しでサイズを計った。違法なカニが車の中に隠されていないか、車の中を調べた。私は、カニを捕りながら、メスだろうがサイズが少しぐらい小さくても見つかりっこないと高をくくっていた。そんな思いを監視員に見透かされていて逮捕されるのではと脅えた。違法なカニは没収され、罰金は一匹に対して1000ドルだと聞いた。無事帰宅して夕食にカニを食べた。あまりの規則の厳しさと取り締まりに驚いて、食欲が落ちた。

  ロシアのサハリンに住んでいた時、リンさんに釣り狩り山菜採りに連れて行ってもらえた。鮭、ヤマメ、イトウ、ウグイ、鱒、イワナなどを釣った。海で胴付き長靴をはいて、ワシントン州でカニを捕った同じ方法で花咲ガニを捕った。川へ釣りに行くと、リンさんは「カワカンシに見つかると金をとられます」と言った。“カワカンシ”という言葉が私には理解できなかった。私は、カワカンシは、危険な熊のような動物かと思った。リンさんは、サハリンの南半分がまだ日本領だった時に日本語を覚えたので、当時のままの言葉が会話の中に多く出てくる。後でカワカンシとは、漢字で川監視と表記する川の資源管理をする役人だとわかった。リンさんによるとカワカンシは、資源の管理より釣り人から賄賂を取るのだという。2年近くサハリンに住んだが、一度もカワカンシに出会ったことはなかった。海には海監視もいるそうだ。

  家の前の川でも6月2日から鮎の友釣りが解禁になる。漁業組合のカワカンシがオートバイで巡回する。無断で鮎を釣ると罰金1万円とのこと。カワカンシ、国によってずいぶん厳しさに違いがある。アメリカのハマグリで1000万円以上の罰金には驚いた。でもそれくらい厳しく管理しなくては、資源を守ることができない。

 5月に鮎の稚魚が放流された。その恩恵を一番受けているのは、釣り人でも漁業組合でもない。狂ったように遡上する鮎を食べるアオサギたちである。アオサギを取り締まるカワカンシはいない。

 


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