団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

クレクレ症候群

2024年05月29日 | Weblog

 ラジオのニッポン放送など一日中コマーシャルは、『過払い金』か『B型肝炎』のものだ。とてもラジオを聴いていられない。最近、私は、ラジオで好きな番組を、録音している。聴いていて、コマーシャルになると早送りして、耳障りなコマーシャルを聴かないようにしている。過払い金もB型肝炎も司法書士か弁護士がスポンサーである。過払い金にしろ、B型肝炎であろうと本当に必要な人々に返済金や補償金が支払われるのに私は反対しない。だいたいこの手のコマーシャルが、これだけ流されること自体に、違和感を持つ。最近は、ラジオばかりでなくテレビでの、過払い金やB型肝炎のコマーシャルが増えている。

 過払い金やB型肝炎のコマーシャルを聴いていると、どうしても「クレクレ」という人間心理が背後に潜んでいるように思ってしまう。ローマ時代、施政者は、人民に“パンとサーカス”を与えておけば、人民は、政治に文句を言わなくなると策をこうじた。現代日本の政府もローマ時代と変わらぬようだ。ナンバーカードを作れば、いくら上げましょう。コロナで飲食業の休業補償をしましょう。一方私たち無職になった高齢者の年金は、やれ介護保険料の引き上げだなんだと年々支給額が減っている。“パンとサーカス”を目くらましにして、陰で増税や年金支給額の減額をする。今度6月から定額減税とかを実施するというが、いったい何がどうなるのかさっぱり分からない。

 まだ祖母が生きていた頃、それは私がまだ小学生だったが、祖母が年金というお金が国からもらえたとお小遣いをくれた。調べてみると当時国民年金制度が始まったが、年金をかけてこなかった一定年齢の高齢者にも年金が支給された。祖母は、とても喜んで日本は良い国だと言っていたのを覚えている。当時、日本はまだ貧しくどの家庭でも国から子供手当などの援助もなく、自力で子どもを育て、教育費も負担していた。世間にクレクレという考えはあまりなかった。自分たちの生活費を切り詰めて、子供の教育の仕送りをした。あの困難を乗り切れた原動力は、何だったのだろうか。

 今の日本は、クレクレという施策が充満している気がしてならない。そういう私もクレクレ症候群に陥っている。私の場合金銭問題ではない。例えば大好きな大谷選手の出場する試合の観戦している時、当たり前のように「ホームラン打ってくれ」「満塁になったらヒット打ってくれ」「ここで盗塁してくれ」と勝手に思う。本人にしてみれば、打率3割を超えているのだから10打席なら3本はヒットを打っていることになる。それだけでも凄いことだ。にもかかわらず、ただの観戦者の私は、ホームラン打ってくれ、ヒット打ってくれ、盗塁してくれとクレクレ応援団になっている。大相撲もそうだ。贔屓の力士の応援に熱が入る。勝ってくれ、押し出してくれ、うちゃってくれ、とクレクレ要求が止まらない。部外者は身勝手なものだ。

 自分のクレクレ症候群を何とか静めたい。同時に政権が目くらまししてきたら、それを見抜いて引っかからないようにしていたい。納税・愛妻・墓参りを忠実に守っている庶民が報われる時がくるのだろうか。心配はつきない。だから今日もそこから逃げて、午前8時10分から始まるドジャース対メッツの試合を冷静にテレビ観戦しようと思う。


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