団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

ヨット

2024年05月17日 | Weblog

同じ集合住宅に住む友人Tとの会話の中で、ヨットの話が出た。友人は、会社を退職して東京を離れた。私たちは、海の近くに住んでいる。友人宅に友人の勤めていた会社仲間が集まったそうだ。友人は、会社仲間に「せっかく海の近くに住んでいるんだからヨットを始めたら」と言われた。

 私は20代の時、ヨットを持っている友人に、ヨットで江の島の近くを回ろうと誘われた。朝早く出るのでヨットの中で泊まることになった。ヨットは港に係留されていた。酒を飲んだせいもあるかもしれないが、私は船酔いになって一睡もできなかった。朝、友人は、「港も出ていないのに、酔うならとても海に出られない」と言われた。恥ずかしながら、結局ヨットを降りた。この経験から金輪際ヨットとは縁がないと思っていた。

 長い海外生活に終止符を打って、今住む海の近くの集合住宅を終の棲家に決めて購入した。高校の同窓会で旧友と再会した。意気投合した同窓生たちと、毎年夫婦同伴のワイン会を我が家で開くことになった。コロナの惨禍に見舞われる前年まで、毎年10年以上続いた。おかげで離ればなれで交流もなかった旧友たちと良好な関係を持つことができた。

 同窓生の中に、私たちが住む町から近い所にリゾートマンションを持って、ヨットを趣味にしているA夫婦がいた。ある時、この夫婦が、私たち夫婦をヨットに招待してくれた。私は、以前停泊しているヨットの中で酔って、結局降りたことを話した。Aさんは「波が穏やかなら、ほとんど揺れません。海風に当たっていれば気持ちいいですよ。もし酔ったら引き返せばいいことですから、ぜひ行って見ましょう」と言ってくれた。実際、酔うことなく島に上陸して、そこのイタリアンレストランで昼食を楽しむことができた。妻も初めてのヨットを楽しんだ。

 同じ集合住宅に住むTさんがヨットの話をした時、私はAさん夫婦に尋ねてみることにした。快諾の返事をもらった。コロナによる分断の3年間が一気に取り戻せた気がした。Tさんに話すとぜひAさんに会って、いろいろ教えていただきたいと希望された。日時を決めた。Tさんの妻も私の妻もまだ働いている。約束の日、Tさんと二人でAさんのヨットが係留されているヨットハーバーへ向かった。最初は、係留されているヨットの中で話をしてお茶を飲む予定だった。しかし天気が良く波も風もヨットに最高な条件なので、海に出ることになった。

 Aさん夫妻は、私と同年配である。私は、脚が悪い。心臓が悪い。ヨロヨロメタメタ。一方A夫婦は、ヨットでまるで若者のようにロープを巻き、いかりを上げ、帆を張り、帆を巻く。とても私と同じ年代とは思えない。でも私はひがまない。それどころか、今の健康状態でこうしてA夫婦と再びヨットで航海に出られる喜びに浸った。Tさんは、私より一回り若い。熱心にA夫婦とヨットの操作に加わっていた。

 後日、Tさんは、奥さんと一緒に小型船舶免許習得のための受講を申請したという。今は、日本のあちこちのヨットハーバーで会員になるとレンタルの小型船を借りることができる。Tさんは、A夫婦と私たち夫婦と一緒に7月には海に出られるよう計画している。友達の輪が広がる。人と人のつながりに、この歳なってまだ貢献できる幸せを感じている。


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