団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

運動靴

2020年06月24日 | Weblog

  今回も“痛風”という言葉を思い出すのに時間がかかった。物忘れはひどくなるばかり。出てこない言葉を探るのは楽しいなんて自分に言い聞かせる。本来“つ”から発想しなければいけないのに、でてくるのはなぜか“へ”で始まる“偏痛”とか“閉塞”。“へ”と“つ”を行ったり来たり。あきらめようとした瞬間、“つ”が“つう”となり“つうふう”となった。そうだ“痛風”なんだ。何日も考えても、考えても解けなかった漢字パズルの最後のマスを埋められたように気分が良くなった。まるでハッカを鼻先で嗅いだスッキリ度合いだ。

  以前足の先が痛くなってうまく歩けなくなった。靴がいけないと思い、さっそく子供の頃“運動靴”とか“ズック”と呼んだような簡単な靴を買った。全く効果なし。さらに足の先の痛みは増してしまった。ちょうど私の誕生日で子供達の家族と東京のデパートのレストランで集まった。私はよく歩くこともできず、デパートの車椅子を借りて移動する始末。病院へ行くことを決めた。結果は“痛風”だった。尿酸値を下げる薬のおかげで痛みはすっかり消えた。

  今年の3月ごろから、新型コロナウイルス騒ぎが始まった。あれよあれよという間に感染が拡がった。得体のしれないウイルスは、私たちの生活を変えた。私のような高齢者で免疫力がない糖尿病もちは、コロナウイルスにとっては、最も攻めやすい獲物である。大阪大学免疫学フロンティア研究センターの宮坂昌之名誉教授が勧める、歩いて免疫力を高めることを実践することにした。目標を一日最低5千歩と決めた。雨が降ったら家の中でウォーキングマシンを使って5千歩を目指した。3,4,5、6月と毎日目標を達してきている。

  歩く歩数が増えるにしたがって、靴の劣化が気になりだした。糖尿病の合併症で足裏の感覚異常を持つ。常に足の裏に何かおかしなモノを貼り付けている感覚が取れない。底の薄い靴は、履いていると気になって歩けなくなる。ドイツの『BÄR』社製の運動靴は、私の要望を満たす運動靴だった。しかし日本から撤退してしまい、現在はもう手に入らない。靴のためにドイツまでいくことなどできない。

  仕方なくデパートや靴専門店で日本製の運動靴を買った。どれも歩くとなにかしっくりこない。あきらめてよれよれになった『BÄR』社製の運動靴を履き続けていた。やっと緊急事態宣言が解除された。先週、運動靴専門店に行ってみた。ガラガラの店内でフェースシールドとマスクで完全防備した女性店員が応対してくれた。ゆっくり私の話を聞いてくれた。色々な器具で筋肉や姿勢まで検査してくれた。勧められたのがフィンランドの『KARHU』の運動靴だった。高いと思ったが今お金をかけられるのは、健康維持しかない、と買うことを決めた。そういえば、この半年、服も靴も外食にも金を使わなかった。

  妻に「靴ばかり買って」言われるのではと恐れた。帰宅した妻は、「カッコいい靴ね。どう歩いた感じ」と聞いてくれた。「歩きやすいよ」と答えた。

  日本にいてドイツ製やフィンランド製の靴を履ける。暮らしたネパール、セネガル、チュニジアには裸足の子供や大人がたくさんいた。作家の佐藤優さんが「現代人は貴族のような生活にも不満足」と本に書いている。私は自分が置かれている状況に感謝して、しばらく免疫力向上を目指したい。


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