団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

アフリカ

2013年06月03日 | Weblog

 私はアフリカ大陸につごう4年半暮らした。小学生の頃からエジプトのピラミッドを見に行きたい、ジャングルにいるターザンに会いに行きたい、カバ、象、ライオンをはじめとするアフリカの野生動物を見たいという夢を持っていた。アフリカへその夢を抱いたまま移り住んだが、3つの夢のどれも実現しなかった。

 現地で仲良くしていた日本の商社マンからこんな自虐的な話を聞いた。「商社には1位中近東2位アフリカ3位インドと言われているのですが何を意味しているかわかりますか?」「給料の高さ」「あなたは良い人ですね。違います。赴任したくないワースト3なのですよ。私は1位2位3位をタライ回しされているだけで、定年までこれは変わりません」 ひどい話だと思った。このような話は商社だけではない。外務省だって同じことだろう。外交官試験に合格して外国の大学で語学研修を済ませ、アフリカ赴任が決まったらさっさと辞めてしまった外交官の卵がいたそうだ。日本には偏差値症候群と呼べる病気がある。何事にも数値的ランキングをつけ人間の品定めを試みる。学校、就職、結婚、戒名,赴任国

 6月1日から横浜で日本とアフリカ各国の首脳が一堂に会する第五回アフリカ開発会議(TICAD V)が始まった。日本はこれから失われた何十年もの偏差値至上主義によるしっぺ返しに見舞われるに違いない。今更巨額の支援(3.2兆円:1兆数千億のODA+民間投資と6500億円の円借款)と過去の借款の帳消しでアフリカ諸国の気を引こうと躍起である。巨額な援助が効率よく正しく使われ、発展に貢献してほしい。国家には常に将来を見据えた展望と分析と監査がなければならない。日本が失ったものは大きい。

 しかし私が期待する現実がある。日本海外青年協力隊の若者たちの地道な功績である。アメリカ、韓国などでも同じ様な活動を展開しているが、日本の規模と実績は世界で突出している。以前から中国はアフリカ諸国で目立つ援助事業を展開してきた。私が暮らした西アフリカのセネガルの首都ダカールには中国が建設寄贈した7万人収容のスタジアムがある。中国の援助は大勢の中国人労働者を派遣してさっと来てあっと言う間に目立つ箱物を完成させてしまう。一方日本の海外青年協力隊はほとんど一人ひとりバラバラに派遣し現地の人々と同じ暮らしをしながら地道に活動している。官民も偏差値症候群で勘違いした軌跡を残してきたが、海外青年協力隊の着実な活動に偏差値はまったく関係がない。商社や外交官の給料と比べたら信じられないくらい安い報酬で任期の数年間を務める。危険も多い。ピストルを持った強盗に金品を奪われ重傷を負った隊員を知っている。交通事故、自然災害。日本には“若い時の苦労は買ってでもしろ”という官にとって都合のよい言葉がある。国会議員や上級国家公務員の破格の待遇と派遣社員との構図に似ている。これも劇的に効果があった偏差値による価値基準の後遺症であろう。

  アフリカで自虐的だった商社マンに伝えたい。「あなたの苦労が報われそうですよ」 身を削るようにアフリカの名もない貧しい人々に混じって自分の技術経験知識を直接手渡してきた海外青年協力隊の隊員に伝えたい。「ご苦労されましたが、これからアフリカで日本という国名を聞いた人々がまず一番に思い出すのはあなた方のことですよ」


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