備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

やきもん屋の変態性

2011-12-02 22:22:23 | 陶芸


通常、テストピースには工業的安定性が求められる。

陶芸の粘土の場合、原土を精製して出来たそれをよく混ぜて、均質に大量に使えるモノである事を前提にする。ある程度、常に同じ結果として安定して使えることが条件。釉薬も同じく。

このテストピースは、それを真っ向からする気が無いものである。安定には程遠く、原土の中から何となく取り出した欠片を焼いてみたもの。この抽斗だけで10種類以上ある。
練らない為に、粒度・砂などの夾雑物・金属の含有量の違いなどがひとつのテストピースの中でバラバラ。たまたま偶然取り出した部分なので隣りは全く違うかも知れない。

ただ、練らない事でしか判らない事もある。
そこから、その土の素性や可能性を読み取る努力をするのである。しかし、読み取ったところで大量に使った時には違うかも知れないのだけど。


この土は、可塑性が無いなぁ。
この土は、還元しかアカンな。
この土は、高温ですぐにへたるな。
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冷静なうちは他人とも共通に話せる表現である。



ただし、やきもん屋の変態性の発露というものがある。
この土を見ながら呑めるのである。つまりテストピースが晩酌のツマミ。食べないけど。

この土は、優しく扱って可愛がってやろう。
この土は、裏が表になるな。
この土は、火前でいぢめるか?
この土は、なかなかにセクシーやな。
この土は、磨いたらエエ子やで。

ホホゥ~、イヒヒ、エヘヘ、フフン……。

無機物が有機的に思えるのは、病気である。
もっともこれらの話し声が聞こえてきたりすると、完全にホンマもんになるけど、まだ、そこまでは行っていない。可逆的な範囲。


しかし、わりとね、見ながら呑んでると飽きないのよ。これが。
若干、変態感は否めないけれど、そ~~~っとしといて下さい。本人はご機嫌なんです。

ほらっ、ヒゲのおっちゃんが土くれを手先で転がしながら呑んでる姿ってさ……まぁ、想像しなさんな。美しくないから。


美しさは、その手先の粘土の中にあると思うよ。
その美しさと話をしているつもりなんだけど、傍から見るとそうは見えないのが残念である。

「変態とは誤解からも生じるのである」という事に気付くひと時。




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