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70年代のトーマス・スタンコ・カルテット

2014-11-30 | JAZZ
ポーランドのトランペッターであるトーマス・スタンコ(Tomasz Stanko 1942年生まれ)の、ピアノレス・カルテットの3枚を取り上げてみました。
彼のベストといわれる演奏は、1965年のクシシュトフ・コメダ・クインテットの中でも聴くことができますが、ここに挙げたのは、いずれも70年代の録音です。
この3枚、ベース奏者以外が不動のメンバーで、しかも夫々異なったレーベルのため、その違いも楽しむことができます。
トーマス・スタンコは、70年代にフィンランドのジャズ・ドラマー、エドワード・ヴェサラと双頭コンボを組んで欧州をツアーしており、その成果もこの3枚に表れています。
なお、1970年録音のコメダに捧げた初リーダー作「MUSIC FOR K」(MUZA SX 0607)は3管編成で、ドラマーもJanusz Stefanskiであるからして、ここでは取り上げませんでした。

ヨーロッパでは、60年代後半からフリー・ジャズの波が起っていますが、当時の社会主義体制の中でこのようなインプロバイズト・ミュージックが演奏されていたことは驚きです。
その一因として、ポーランドのワルシャワでは60年代から大きなジャズ・フェスティバルが開催され、米国を始めとして西側からのミュージシャンが多数参加していたことにもあると思います。

最初のアルバムは、3枚の中で最もフリー・フォームの強い内容です。
ここでのベーシスト、ピーター・ウォーレンは、米国出身(1935年11月21日生)で、70年代はヨーロッパを中心に活動しています。

「POLISH JAZZ」 MUZA SX 1138
   
1. DARK AWAKENING
2. TWET
3. MINTUU MARIA
4. MAN FROM NORTH
5. NIGHT PEACE
TOMASZ STANKO(tp) TOMASZ SZUKALSKI(ts, ss, bcl)
PETER WARREN(b) EDVARD VESALA(ds)
1974年4月 ポーランド ワルシャワ録音

1曲目の「DARK AWAKEING」は、地を這うような不気味なベースのボーイングで始まり、ゆったりとしたテンポの中で、フリーな演奏が展開されます。
シュカルスキは最初バスクラで、後半テナー・サックスに持ち替えて熱演、スタンコは中盤以降に登場して早いパッセージを低音から高音までまき散らします。
2曲目のタイトル曲「TWET」もヴォイスを含むフリーな演奏で、途中からはランニング・ベースに導かれて、シュカルスキがまるでコルトレーンのように吹きまくり、後半はヴェサラのソロを経て合奏となり、テーマらしき部分がでてきます。
3曲目の「MINTUU MARIA」はバラードで、先発はシュカルスキ、後半はスタンコが担当、ヴェサラは小道具も駆使しています。
4曲目の「MAN FROM NORTH」では、導入部でベースが重心の低いソロを示した後、リズム楽器は一旦休止し、管楽器とボイスで勝手な音出しがあり、その後一転8分音符の早いテンポに切り替わり、その上をシュカルスキがムジャ・ムジャとハードな演奏を展開し、後半は前曲同様スタンコにバトン・タッチしています。
最後の「NIGHT PEACE」は、スローなテンポの曲ですが、ここでやっとスタンコが最初からソロを取っています。

全曲を通して言えるのは、4人のインター・プレイが随所で展開されますが、スタンコの出番が意外と少ないです。
一方で、ベースは出ずっぱりで、音取りも素晴らしく、このアルバムの全体を支配しています。


「BALLADYNA」 ECM 1071
   
1. FIRST SONG
2. TALE
3. NUM
4. DUET
5. BALLADYNA
6. LAST SONG
7. NENALINA
TOMASZ STANKO(tp) TOMASZ SZUKALSKI(ts, ss)
PETER WAR5EN(b) EDVARD VESALA(ds)
1974年12月 ドイツ ルードヴィッツヒスブルク 録音

こちらは、2管によるテーマの合奏があり、しっかりアレンジされています。
スタンコは時にダーティな音もまき散らす一方で、シュカルスキはこのレーベル特有の、澄んだ音に変っています。
後半の2曲では、ドラマーのヴェサラのソロ・スペースも拡大しています。
またリズミックな曲も多く、これは英国出身のディブ・ホランド(1945年10月1日生)のベースによるところ大だと思います。


「ALMOST GREEN」 LEO 008
   
1. NEW SONG
2. FROM GREENHILLS
3. SLOWLY BY
4. WHEN ON EARTH
5. ALMOST GREEN
6. MEGAIRA
TOMASZ STANKO(tp) TOMASZ SZUKALSKI(ts)
PALLE DANIELSSON(b) EDVARD VESALA(ds)
1978年12月 フィンランド ヘルシンキ録音

こちらは如何にも北欧という感じの音となっていますが、前述のECMと同様の雰囲気を持っています。
アレンジされた曲においても、一層自由な展開となり、スタンコもシュカルスキも、「ベース+ドラムス」とのトリオ部分が多くなっています。
タイトル曲でのスタンコは、伸びのある音を放出し、ヴェサラの出番も多いです。
このアルバムでのシュカルスキは、随所でコルトレーンが顔をだしています。
「重厚な音」を出しているベーシストは、スウェーデン出身のパレ・ダニエルソン(1946年10月15日生)で、キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットでの演奏も有名です。

この3枚、いずれも好演盤ですが、とりわけベースとドラムスが果たす役割が大きいアルバムです。

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