皆様はパリの普通の人々に対してどんな、予測を持っておられますか。私はユトリロや、サティなどの、芸術家の生涯を紹介する映像を見るたびに、『古都だから、京都と同じく、後から入ってきたものにとっては、暮らしにくい面はあるだろうなあ』と事前には予測しました。そして、実際に行って滞在してみて、具体的に付き合ったインテリの中には、そういうムードを示す人もいたのです。特に先に住んでいた日本人が。これは、どこの国へ行っても同じで、古くは堀文子さんが、ご著書『ホルトの木の下で』の中で簡潔に述べておられますので、私はここでは繰り返しません。
でもね、そんなパリの人が知的障害者には、とても優しいのです。私が住んでいたサン・ポールの駅そばに、ふらふら、うろうろしている青年がいるのですが、彼は驚くほど、映画『ポン・ヌフの恋人』の主人公アレックスに似ておりました。頭はスキン・ヘッド。ある日、夜・コインランドリーに行くと、床に彼が寝ている。ホームレスなのです。パリの10月とか11月にはとても寒い夜があります。だから、暖を取るために、そこに寝ていたとしても、利用する人が、持ち主にチクれば、追い出されてしまうでしょう。で、すぐ、そのポイントだけで、パリの人がホームレスに優しいのを、まず、知りました。
(しかし、本当はここに、差別用語かもしれないが、こじきと言う言葉を当てたいですね。パリのホームレスはちょっと、日本のホームレスより、違う点があります。よく缶を前において座っておもらいをしているし、あのブルーのテントを見かけませんし、より元気に見えます)
その次に彼が、相当に人気があるのを知りました。カフェに入れば、黙って、コーフィーを振舞われているし、パン屋に入れば、「はい」と、いとも簡単にパンを渡してもらえます。別にお金を払っている様子も無い。
それで、私は映画『ポン・ヌフの恋人』の主役、アレックスを演じた、ドニ・ラヴァン本人なのかしらと、何度も考えました。『落ちぶれた映画俳優だから、こういうほどこしを親切に受けるのかしら』とも。
またはそのアレックスのモデルだと考えられている、レオン・カラックス監督本人? もちろん、芸術の道は、きびしい。レオン・カラックス監督は、Wikipediaに拠れば、この映画『ポン・ヌフの恋人』の撮影中に、多額の費用と時間がかかりすぎたために、事実上の恋人であった、ジュリエット・ビノシュと別れてしまいます。
そして、それが、痛手だったのか、その後、八年間沈黙をするのだそうです。私が、その不思議なホームレスの青年をを見かけた時期は、1998年ですから、まさに監督の沈黙の時代の最中ですね。
なんどもそうは、思いましたが、でも、俳優・ドニ・ラヴァンである可能性は捨てました。どうも彼には知的障害があるらしいのです。あの映画の主人公は、『口がうまく利けない』と言う設定になっております。しかし、「それを、本当の知的障害者が、演じきる事ができるだろうか?」と問われれば、私は「できない」と、答えます。『こちらの人物の外見やら行動を観察し、それを模写して、あの映画の中の主役の人物造型は出来たのだ』と、私は、当時は、考えました。
目の前でうろうろしている青年の方は、一種のふてぶてしささえ見せるときがあるのですが、人々は彼を絶対に嫌がりません。差別は生まれません。意地悪をされないのです。で、私は考え込み、・・・・・この乱暴に見える姿、そして、ふてぶてしい悪人にさえ見える姿は、本人が『他人にどう、自分が思われているか』を気にしないほど、単純な思考の持ち主であり、だから、人々から愛されるのだ・・・・・と結論をつけました。
そして、パリの人の優しさに驚いたのです。
ただ、この項は続きます。考察をもっともっと深めます。
尚、右上に添えたのは、私の版画で、12x13センチと言う小さいものです。
2008年10月14日 川崎 千恵子
でもね、そんなパリの人が知的障害者には、とても優しいのです。私が住んでいたサン・ポールの駅そばに、ふらふら、うろうろしている青年がいるのですが、彼は驚くほど、映画『ポン・ヌフの恋人』の主人公アレックスに似ておりました。頭はスキン・ヘッド。ある日、夜・コインランドリーに行くと、床に彼が寝ている。ホームレスなのです。パリの10月とか11月にはとても寒い夜があります。だから、暖を取るために、そこに寝ていたとしても、利用する人が、持ち主にチクれば、追い出されてしまうでしょう。で、すぐ、そのポイントだけで、パリの人がホームレスに優しいのを、まず、知りました。
(しかし、本当はここに、差別用語かもしれないが、こじきと言う言葉を当てたいですね。パリのホームレスはちょっと、日本のホームレスより、違う点があります。よく缶を前において座っておもらいをしているし、あのブルーのテントを見かけませんし、より元気に見えます)
その次に彼が、相当に人気があるのを知りました。カフェに入れば、黙って、コーフィーを振舞われているし、パン屋に入れば、「はい」と、いとも簡単にパンを渡してもらえます。別にお金を払っている様子も無い。
それで、私は映画『ポン・ヌフの恋人』の主役、アレックスを演じた、ドニ・ラヴァン本人なのかしらと、何度も考えました。『落ちぶれた映画俳優だから、こういうほどこしを親切に受けるのかしら』とも。
またはそのアレックスのモデルだと考えられている、レオン・カラックス監督本人? もちろん、芸術の道は、きびしい。レオン・カラックス監督は、Wikipediaに拠れば、この映画『ポン・ヌフの恋人』の撮影中に、多額の費用と時間がかかりすぎたために、事実上の恋人であった、ジュリエット・ビノシュと別れてしまいます。
そして、それが、痛手だったのか、その後、八年間沈黙をするのだそうです。私が、その不思議なホームレスの青年をを見かけた時期は、1998年ですから、まさに監督の沈黙の時代の最中ですね。
なんどもそうは、思いましたが、でも、俳優・ドニ・ラヴァンである可能性は捨てました。どうも彼には知的障害があるらしいのです。あの映画の主人公は、『口がうまく利けない』と言う設定になっております。しかし、「それを、本当の知的障害者が、演じきる事ができるだろうか?」と問われれば、私は「できない」と、答えます。『こちらの人物の外見やら行動を観察し、それを模写して、あの映画の中の主役の人物造型は出来たのだ』と、私は、当時は、考えました。
目の前でうろうろしている青年の方は、一種のふてぶてしささえ見せるときがあるのですが、人々は彼を絶対に嫌がりません。差別は生まれません。意地悪をされないのです。で、私は考え込み、・・・・・この乱暴に見える姿、そして、ふてぶてしい悪人にさえ見える姿は、本人が『他人にどう、自分が思われているか』を気にしないほど、単純な思考の持ち主であり、だから、人々から愛されるのだ・・・・・と結論をつけました。
そして、パリの人の優しさに驚いたのです。
ただ、この項は続きます。考察をもっともっと深めます。
尚、右上に添えたのは、私の版画で、12x13センチと言う小さいものです。
2008年10月14日 川崎 千恵子