井沢元彦さんの「逆説の日本史」第四巻を読み返している。というのも、扱っているのが平安時代で、NHKの大河ドラマ「光る君へ」の舞台となった頃のことが書いてあるからだ。なんたって「逆説の日本史」はすでに20巻を超え、時代はすでに現代になっている。平安時代の頃のことなんかすっかり忘れてしまっているのだ。
で、久しぶりに読み返してみると、平安時代というのは日本人に最も人気がないとある。「日本人に歴史を教える『教科書』の役割を果たしているNHKの大河ドラマも、平安政治史を正面から取り上げたことは、ほとんど無いはずだ」と書いているくらいだから、僕が全然覚えていなくても不思議はない。
で、読んでいると、大河ドラマに登場する人物たちが、当たり前だけど登場する。歴史上実在する人物たちだから当然のことながら、ドラマで見た後に読むと、少しは頭に入ってくるのである。
すっかり忘れていたが、蒙古が襲来した元寇以前、平安時代中頃に、日本は16日間だけ異民族の侵略を受けている。「刀伊の入寇」という。中国女真族が金という国を作ったが、その後日本にもやって来たのだ。で、そのとき戦って追い返したのが太宰府管下の勇士の健闘によるものだったのだが、その最高責任者にいたのが藤原隆家である。「光る君へ」を観ている人なら、花山院に矢を放ったあの人物かとなるはずだ。
さて、異民族から日本を守ったというので、当然のことながら恩賞を与えられたかと思いきや、都で開かれた陣の定め(ドラマではちょくちょく開かれる)では、大納言藤原公任、中納言藤原行成のふたりは賞を授ける必要はないとした。なぜこんなことになるのかというと、その頃の政治とは上手に歌が詠めることだったからであり、隆家のやったことは余計なことだったからである。
日本は古くから言霊の国であり、言葉にしたことは実現してしまうと信じられている。だからむやみに口に出してはいけないことがある、口にすると本当に起こってしまうからだ。だから結婚式ではいまだに「分かれる」「切れる」は禁句だし、受験生の前で「落ちる」とも言えない。社長が飛行機に乗るときに、冗談でも「飛行機が落ちなければいいね」などと言おうものなら、不謹慎だと上司に怒られる。
そういう国だったから、政(まつりごと)とは言挙げすることだったのである。だから、都で異民族を追い返そうとお偉いさんたちは必死に言挙げした。だから、藤原隆家のやったことは必要なかったこととされたのである。
そこで「逆説の日本史」の作者伊沢さんは、今の日本の状況を解説する。それは、日本という国は、平和憲法という言挙げをすることによって異民族からの侵略を防げているのだから、自衛権を持つことは必要ないと考えるのは、平安時代の陣の定めと同じ判断をしていることになる、と。
で、久しぶりに読み返してみると、平安時代というのは日本人に最も人気がないとある。「日本人に歴史を教える『教科書』の役割を果たしているNHKの大河ドラマも、平安政治史を正面から取り上げたことは、ほとんど無いはずだ」と書いているくらいだから、僕が全然覚えていなくても不思議はない。
で、読んでいると、大河ドラマに登場する人物たちが、当たり前だけど登場する。歴史上実在する人物たちだから当然のことながら、ドラマで見た後に読むと、少しは頭に入ってくるのである。
すっかり忘れていたが、蒙古が襲来した元寇以前、平安時代中頃に、日本は16日間だけ異民族の侵略を受けている。「刀伊の入寇」という。中国女真族が金という国を作ったが、その後日本にもやって来たのだ。で、そのとき戦って追い返したのが太宰府管下の勇士の健闘によるものだったのだが、その最高責任者にいたのが藤原隆家である。「光る君へ」を観ている人なら、花山院に矢を放ったあの人物かとなるはずだ。
さて、異民族から日本を守ったというので、当然のことながら恩賞を与えられたかと思いきや、都で開かれた陣の定め(ドラマではちょくちょく開かれる)では、大納言藤原公任、中納言藤原行成のふたりは賞を授ける必要はないとした。なぜこんなことになるのかというと、その頃の政治とは上手に歌が詠めることだったからであり、隆家のやったことは余計なことだったからである。
日本は古くから言霊の国であり、言葉にしたことは実現してしまうと信じられている。だからむやみに口に出してはいけないことがある、口にすると本当に起こってしまうからだ。だから結婚式ではいまだに「分かれる」「切れる」は禁句だし、受験生の前で「落ちる」とも言えない。社長が飛行機に乗るときに、冗談でも「飛行機が落ちなければいいね」などと言おうものなら、不謹慎だと上司に怒られる。
そういう国だったから、政(まつりごと)とは言挙げすることだったのである。だから、都で異民族を追い返そうとお偉いさんたちは必死に言挙げした。だから、藤原隆家のやったことは必要なかったこととされたのである。
そこで「逆説の日本史」の作者伊沢さんは、今の日本の状況を解説する。それは、日本という国は、平和憲法という言挙げをすることによって異民族からの侵略を防げているのだから、自衛権を持つことは必要ないと考えるのは、平安時代の陣の定めと同じ判断をしていることになる、と。