おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

熱狂の発明

2019-05-19 12:49:40 | 日記

 図書館から借りてきた「チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦」をボチボチと読み進めている。どちらもチョビヒゲを生やしているチャップリンとヒトラーは、外見も似ているが誕生日もわずか4日違いにすぎない。同時代に育ったふたりは、その頃発明された映画という分野によって世界的な有名人となった最初の人である。

 ただし、その利用の仕方はまったく異なり、チャップリンはその頃まで一番人気だった舞台から、新たに発明された映画という技術を使って、芝居をフィルムに焼き付け、世界中で上映することによって一躍人気者になった。

 それに反してヒトラーは、演説をフィルムに焼き付けることによって、ドイツ中で演説会を開くことを思いついた。人々は真実を知りたいわけではなく、熱狂できるものを求めていると考えたヒトラーは、繰り返し行う宣伝こそが現実になるという信念を抱いていた。

 映画が生まれる前は、ヒトラーは自分と同じように聴衆を熱狂させることができる政治家を数多く作ろうとするが、ヒトラーのようなカリスマ性を持つ者はほとんどおらず、映画の誕生がヒトラーやナチスを押し上げたのである。

 ヒトラーの部下には、ゲッペルスという宣伝を専門とする大臣までいた。若者が憧れる制服や統制のとれた団体行動、夕暮れ時の松明の明かりの中での演説会など、人々を酔わせるためのあらゆる手段が考案された。ナチスドイツ下で開催されたオリンピックでさえ、ナチスの権威付けを行うために開かれたようなものだった。

 僕らはよく過去の戦争から、何かを学ばなければならないとは教えられるが、政治家は熱狂こそ国民を利するに役立つ最大のアイテムだとナチスドイツから学んだらしい。人々の目を真実から眩ませるには、熱狂できるものを与えるのが手っ取り早いのである。

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