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書評 少子化問題が騒がれているが・・・  文科系

2024年05月02日 15時48分00秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 少子化問題がやっと、やっとのことでマスコミの話題になり始めた。というのは、この問題を20世紀から国の重大事として追いかけてきた家族社会学の専門学者らの著作などがマスコミなどから、疎外されてきたからである。その疎外を、政府がはっきりと方針として作り出してきた。これは、思えば統一教会改名問題と同じ構造である。政府が「問題なし」との政治工作をしてきたのである。もっと言えば、「話題にするな」と、強力に動いてきた。その次第を、この問題を古くからここでも追いかけてきた者として、学者の書評としてあげてみたい。
 ちなみにこの問題は今まさに、「自治体の消滅」などという形で、話題になっているが、そんなことも知る人ぞ知る社会問題だったのである。今日の羽島慎一モーニング番組でこんなことも言われていた。「通える小中学校、日用品販売店がなくなる」。これは「買い物弱者」として、話題になり始めた。「自治体のゴミ収集作業など、公共サービスが消滅する。」
 以下は、2020年8月15日の当ブログ・エントリーである。なお、上記モーニング番組からは、人口も若者も増えている地方自治体もあると学べたものだ。島根県の海士(アマ)町、富山県の舟橋村などだが、起業誘致、学校重視などの特徴があると言われていた。


『 山田昌弘・中央大学文学部教授(家族社会学専門)の光文社新書2020年5月に発行されたこの本( 「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」 )の問題意識は、こういうものだ。合計特殊出生率1・6以下の状況が30年続き、1・5以下でさえ25年続いているその原因を考えようというもの。そして、少子化の初期10年の段階において政府が採った欧米風対策が全くのピント外れだったから、少なくなった女性が産む子はまた少ないということが重なって、今はもうなかなか取り返しが付かなくなっていると証明した著作である。ちなみに、合計特殊出生率とは、女性1人当たりが一生に産む平均子ども数とされ、これが2・07人を上回れば人口が増加し、下回れば減少するとされてきた数字とあった。それが1・5とか1・6とかが長く続いては・・・というわけだ。
 71~74年の第2次ベビーブームでちょっと持ち直したかという以外は戦後一貫して下がり続けてきたのがこの数字と示されている。90年代に入って「1・57ショック」とか「少子化社会の到来」とかの標語で国家の重大問題としてきた議論が何の役にも立たなかったという現状なのである。政府対策がどうピントが狂っていたのか。
 この少子化の最大原因として、何よりも若者の大変な貧困化から来た「未婚化」等の経済問題があるという正しい見方を、国家が少子化対策の審議会などでタブー視してきたと、この本は語っている。政府が代わりに鳴り物入りで対策を出した若者の西欧風現状分析が、①若者は1人で暮らし、②愛情があれば結婚するはずで、③相手を見つけるのは簡単であるというもの。この三つが全く現状に合っていなかったという説明が、以下である。
①日本の若者は西欧と違って、親元で暮らすパラサイトシングルが多い。地方などは特にそうだ。
②③については、何よりもこんなことを言う。男女とも、育った家庭並みの生活を望むのだが、1人の収入で子どもを大学にやれるような男性は非常に少なくなった。次いで、仕事による自己実現を求める西欧女性と違って「日本女性は仕事よりも(育った親の家庭並みの)消費生活を求めている」という現実があるなどなどと、この本は現状分析するのである。

 僕、文科系は、このブログでこう述べてきたが、それを肯定してくれるのがこの本であった。日本では今、50歳まで一度も結婚したことがない男性が4人に1人に近づいている。それは、結婚相手に選んでもらえない低収入男性が増えたからだ。
 こうなった原因はこの30年近くの日本の貧困化にあって、国民1人当たりの購買力平価GDPがわずか25年ほどで世界5位あたりから31位にまで落ちたことによってもたらされた。そして、このことを原因と見ないような少子化対策ばかりを政府がやって来たとこの本も述べているのである。該当箇所に、こんな文章があった。長い引用になるが・・・・。
『私は1996年に出版した「結婚の社会学」(丸善ライブラリー)の中で「収入の低い男性は結婚相手として選ばれにくい」という現実を指摘している。・・・・・
 当時、これほど評判の悪かった指摘はなかった・・・1990年代後半のマスメディアや政府は、この事実への言及を避けていた。
 政府関係の研究会で、私がこの指摘をしたところ、政府のある高官から、「私の立場で、山田君が言ったことを言ったら、首が飛んでしまう」と言われたことがある。
 当時、大手の新聞では、私の発言の該当部分は記事にならなかった。
 ある地方公共団体に依頼され執筆したエッセーに関しては、担当課長が、削除を依頼しにわざわざ大学までやって来て、頭を下げられたこともある。
 その理由は、「収入の低い男性は結婚相手として選ばれにくい」という指摘は事実であっても差別的発言だから(たとえ報告書であっても)公で発表することはできない、それだけではなく、それを前提とした政策をとることはできない、というものである』(48~49ページ)
 少子化対策がこのようにピントがずれていては、どれだけ年月をかけても何の効果もなかったということなのである。』
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1 コメント

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島根知事が知事が (文科系)
2024-05-03 09:12:36
 増田知事が、こんなことを言い始めました。
「消滅自治体!とかは、国が、少子化原因は自治体にありとするもの。完全な責任転嫁の世論誘導である。」
 本当にそうで、真の原因は国民一人あたりGDP減少や賃金の少なさなのです。上記エントリーにもあるように。つまり、新自由主義の株価主義経済運営、そういう経営陣援助・放任主義。その結末。
 選挙のための目先の政治だけで、大きな社会課題への無責任政治体制が生み出したもの。無能な二世議員らの政治結末ともいうべきことでしょう。
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